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異能と青春  作者: 成海由華
不良少女編
42/100

7.史上最弱のタイマン

 廃工場の中。

 到極と暗木が向き合っていた。


 ここからは拳と拳の勝負になる。


 到極が拳を握る。

 突然、暗木が突進を仕掛けて来た。


「ぐ、な、何っ!?」


 動揺する到極。

 暗木に押されるまま到極は隣の部屋に突っ込んだ。


「ぐはっ!?」


 到極と暗木が部屋の床に転がる。

 到極が一足先に体勢を整える。

 すると。


 先ほど入って来た分厚い扉が、閉まり始めていた。


 慌てて扉に向かって走る到極。

 だが。

 扉は到極よりも少し早く、完全に閉じてしまった。


 部屋にあった窓から外の様子を見る。


「到極くん、到極くんっ!」


 部屋の外では番が必死に呼びかけていた。


「莉奈ちゃん!」


 到極もそれに応える。

 窓を挟んで二人が見つめ合う。


 だが窓は硬く、開ける事も壊す事も出来なかった。


 番たちのいる広場の、隣の小さな部屋。

 到極と暗木は完全にそこに閉じ込められた。


「ひっひっひ」


 焦る到極の様子を見て、暗木は笑っていた。


「何笑ってるんだよ、閉じ込められたんだぞ、僕ら」


 到極は他の扉や窓も全て確認した。

 だが全て鍵がかかっていたり錆びついていて、開くことは出来なかった。


 到極に向かって、暗木が迫る。

 周りに武器になりそうな物もない。


 覚悟を決め、到極が暗木を迎え撃つ。

 暗木の大振りな拳をかわし、腹部を攻撃した。


「ぐふっ」


 一瞬怯んだものの、暗木もすぐに攻撃を再開した。

 暗木の攻撃は不規則でかわすのが難しかった。


「ぐへっ」「ごはっ」


 避け切れなかった拳や蹴りが到極を襲った。


 到極もすぐに反撃する。


 到極と暗木。

 二人の力は完全に互角だった。

 攻撃力も、耐久力も、スタミナも。


 このままいけば。

 二人は相打ちになるはずだった。

 だが。


 次第に、到極の方が劣勢になっていった。


 なぜなら。

 到極はいつもと違う感覚で戦っていた。


 いつもと違い、異能の力を使えない到極。

 いつもの感じで攻撃しても、普段の感覚と今の身体とのズレが生じ、思ったような攻撃が出来ない。

 思うように力が伝わらない。


 到極にとって、もどかしい時間が続いていた。

 段々と、到極は体力を消耗していった。


 そして、遂に。


 暗木の拳が到極のみぞおちに直撃した。

 後ずさり、うずくまる到極。


 そんな到極に暗木がゆっくり近づいていく。

 そして到極に追撃を仕掛ける暗木。

 遂に到極は防戦一方になっていった。




 ◇ ◇ ◇




 廃工場の中

 窓を隔てた反対側、工場の広い部分。


「到極くんっ、到極くんっ!」


 番が必死に呼びかけていた。

 だが到極にもう余裕は無く、一方的に攻撃を受けていた。


(私のせいで、到極くんが……!)


 番は絶望しかけていた。

 だが、そんな時。


 廃工場の入口から沢山の足音が聞こえてきた。


「到極ー、いるのかー?」

「到極、大丈夫なの!?」

「到極さん!」


 駆けつけたのはチームLのメンバーだった。

 ティア、桜、隼人、光、礼夏。


 桂木博士たちの協力により、5人はこの場所を突き止め、そしてやって来た。


 5人が窓の向こう側にいる到極を認識した。


「待ってろよ、すぐに開けてやるからな!」


 そう言って扉に肩からぶつかる隼人。

 だが扉は固く、何度ぶつかっても開かなかった。

 隼人だけではない。


「到極、こんな所で死んだら承知しないから!」


 礼夏も。


「みんな到極君が帰ってくるのを待ってる、私だってそうだよ!」


 光も。


「到極さん、私に異能の力が戻ったら、真っ先に到極さんの怪我を治してあげますからね!」


 桜も。


「すでに警察は呼んである。もう少しだけ耐えて」


 ティアも。


 チームの全員が、到極を応援していた。

 そんな様子を見て。


(そうだ。いま私に出来る事があるとしたら、それは到極くんを応援する事だ!)


 番はそう思った。

 そして。


「到極くん、負けないで!!」


 番は叫んだ。

 ありったけの力を込めて。




 ◇ ◇ ◇




 チームの全員と番の声が、到極に届く。


(そうだ! 僕はまだ、諦めない!!)


 みんなの声を力に、到極がもう一度拳を握る。


「おりゃー!」


 思い切り拳を振りかぶり、暗木にぶつける。

 不意の反撃に、暗木がたじろぐ。

 先程まで劣勢だった戦況が、再び五分に戻る。


「たとえ――」


 到極は思う、そして言う。


「――異能の力が無かったとしても!」


 到極が言いながら、拳で暗木を打つ。


「僕は、番さんを守る! 守ってみせる!!」


 到極が言葉を続けながら、連続で暗木を打つ。


「おりゃあー!!!」


 到極の拳が暗木の顔面を捉える。

 だが同時に、暗木の拳も到極を捉えていた。

 両者が同時に後ずさり、膝を着く。


 もう互いに満身創痍だった。


 だが。

 何とか。

 立ち上がろうとする到極。


 床を踏みしめ、膝に手を着きながら。

 到極は立ち上がった。


 暗木に向かってファイティングポーズをとる到極。

 だがその拳には、もう何の力も入っていなかった。


 身体は限界を迎えていた。

 気力だけで立っている状態だった。

 もうあと一発でも受けたら、起き上がれない程に。


 だがそんな時だった。


 暗木が突然、取り乱し始めたのは。

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