4.異能者研究開発機構
2065年。
世界には異能の力が存在していた。
異能は《アーク》と呼ばれ、研究は世界中で行われ各国がその成果を競っていた。
異能者研究開発機構。
通称E.D.Oとも呼ばれるこの組織は、日本で最大の国家公認の研究所だった。
研究対象となる異能者の他に、研究員、組織の職員が所属している。
研究は数人ずつチームに分けて行われていた。
AからLの12の階級に、50のチームが存在していた。
到極たちもこの組織に所属していた。
到極、ティア、桜、隼人、礼夏は同じチームだ。
チームL、全50チームの中で"最下位"だった。
◇ ◇ ◇
2065年、秋。
到極、桜、隼人はE.D.O本部に来ていた。
月に数回ほど、異能の検査のために本部を訪れることになっていた。
白を基調とした建物の中に、青や緑に発光する検査のための設備が何種類も設置されていた。
各々の検査を終え、三人は本部内の休憩スペースで集まっていた。
「到極さんは、今日はどんな検査でしたか?」
桜が言った。
桜波姫。13歳。
セミロングヘアーの美少女(♂)は、明るい性格で女子力も高かった。
クラスメートからも男女を問わず人気だった。
周りからの評価は"女の子より可愛い男の娘"といった感じだろう。
到極に片想いをしていて、到極のために料理を勉強したり、到極の好きな音楽を聴いたり、到極を待って一緒に登下校したりしている。
今日は到極と一緒に行動できるとあって、上機嫌だった。
「体力測定みたいな検査が多かったかな、だから少し疲れたよ」
到極が言った。
「私は身体にシールみたいなのをぺたぺた貼られて、数値を調べられただけでした。やっぱり異能の種類によって、検査の仕方も違うんですかね?」
異能者は原則一人につき一つの異能を持っている。
炎を操る力や空を飛ぶ力、時間を止める力まで。
その力はさまざまだが、発現する力はランダムだといわれていて二つ以上の力を持っている者はごくわずかだった。
「だろうな。お前の能力じゃ特に戦闘系の訓練や検査は意味ないだろうしな」
桜の質問に隼人が答えた。
松島隼人。14歳。
イケメンでスタイルも良い少年だった。
見た目や行動力でいえば、到極を上回っていた。
それでも周囲の女子から人気がないのは、すぐ調子に乗る性格やデリカシーのない言動が原因だろう。
悪い人ではないのだが好きになれない、というのが周囲の女子たちの評価だった。
「ティアと礼夏は来てないのか?」
「二人の検査は別日みたいだね」
隼人の質問に到極が答えた。
「これからどうしようか?」
「ここの食堂で昼メシ、とか」
「いいですね、それ」
E.D.O本部は研究のためだけの建物ではない。
100階の高層ビルの中には、戦闘訓練のための部屋研究員や職員が生活する部屋、食堂、ジム、会議室、コンビニなど、色々な施設がそろっていた。
三人で楽しく話していた時だった。
「よぉ、チームLの諸君!」
一人の青年が、到極たちに声をかけてきた。
◇ ◇ ◇
「桜、こいつ誰だ?」
「山田駿流さん。チームはJ相当。最近よく到極さんにからんでいるみたいなんです」
隼人の質問に桜が答えた。
「テメェ、縁に何の用だ?」
「君には関係ない」
隼人の質問を山田が一蹴した。
「到極、俺と対戦しろ」
山田が続ける。
「お前、この間対抗戦でチームKに下剋上を果たしたらしいな。でもな、階級ってのは本来軽々と超えていいものじゃないんだよ!」
山田が到極に吠える。
「俺がお前に、格の違いを見せてやる!」
山田はそう言い切った。
つまり山田は、以前到極が格上の異能者を倒したことに納得できず、自ら勝負を挑んできたのだった。
「すいません、お断りします。僕は元々、自分がK以上の実力だと自慢するつもり、ありませんから」
到極は山田の申し出を断った。
そしてこの場を立ち去ろうとした時だった。
「逃げんのかよ」
山田が言った。
「何だったら、今ここで証明してやってもいいんだぜ?」
そう言って山田が右手を構えた。
アークは念じることで発動する。
専用の道具などは必要としない。
山田を牽制するように、隼人が異能発動の素振りを見せた。
桜は不安そうにその様子を見ていた。
一触即発。
このままでは大ごとになる、と到極は思った。
「……わかった。僕と勝負しよう」
到極が言った。
「到極さん!?」
「お前、本気か!?」
桜と隼人が驚いた。
驚くのも無理はなかった。
山田の階級はJ相当。
到極たちより階級が二つも上だった。
だがそれが。
この騒動をしずめる唯一の方法といえた。
「そう来なくちゃな!」
山田が返した。
到極と山田は模擬戦闘室へと向かった。
それを聞きつけ、他チームも面々も集まってきた。
模擬戦闘室の周りが少し騒がしくなった。
◇ ◇ ◇
「なぁ、縁。俺が代わってやってもいいんだぜ」
模擬戦闘室へ向かう廊下で、隼人が言った。
口では強がっているが、唇が少し震えていた。
「ありがとう、隼人。でも大丈夫だよ」
到極が返した。
「私も心配です。確かに到極さんは強いですけど、相手は階級が二つも違うんですよ?」
桜も言った。
「心配しないで、桜。僕だってこの半年間、色んな敵と必死に戦ってきたんだから」
到極が続けた。
「だから安心して見てて、勝ってくるからさ!」




