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異能と青春  作者: 成海由華
不良少女編
39/100

4.贖罪

 南十字星学園。

 贈ヶ丘にある中学校の一つ。

 特にスポーツに力を入れている高校だった。


 再会の翌日の放課後。

 到極はその学園の校門の前にいた。


 前回、番と会った際。

 番が着ていたのはこの学園の制服だった。

 到極はその事を思い出し、番に再び会うため、この学園を訪れていた。


(もう会わないつもりだったのに……)

(来てしまった……)


 到極は葛藤していた。

 ゆえに昨日の自分の決断とは真逆の行動をとってしまっていた。


 そして、葛藤の末。


(やっぱり良くないよな……)

(よし、今からでも帰ろう!)


 だが、そう思った時だった。


 番が姿を現した。


「莉奈ちゃん!」


 思わず声をかける到極。


「……何?」


 番が素っ気なく返した。


「あ、あ、あ、あの……!」


 4年分の感情が溢れ出す到極。


 一方、学園の教室の窓からは。


「誰だろ、あの子?」

「あの制服、贈ヶ丘中学校の生徒だよな」

「もしかして告白とか? 番さん美人だし」


 南十字星学園の生徒たちが二人の様子を見ていた。


「場所、変えようか……」


 番が言った。

 番としても、このまま注目を浴び続けるのは恥ずかしかった。


「う、うん!」


 到極が言った。

 二人は近くの公園に移動した。




 ◇ ◇ ◇




 近くの公園。


「ごめん、莉奈ちゃん」


 到極が言った。


「もういいの」


 番が言った。

 そんな言い方しか出来なかった。


(なんで、なんでなのよ……)

(到極くんに伝えるんでしょ、本当の気持ちを!)


 番が自分に言い聞かせていた。

 だが出来なかった。


 いじめられていた事によるトラウマ。


 番は誰かに本心を伝える事に、臆病になっていた。


 結局、番も昨日の自身の決断とは真逆の行動をとってしまっていた。


 そんな時だった。


 三人組の不良が通りかかった。

 この間、番と一緒にいたのと同じ人達だった。


「お前、この間の!」


 不良の一人、犬山が言った。


「莉奈に何の用だ」


 犬山が続けて言った。

 犬山が到極に詰め寄る。


「ぼ、僕は何も――」


 到極がそう話し始めた時だった。


「おらっ!」


 犬山が到極を殴った。

 腹を軽く殴っただけだった。

 だが。


「うぐっ、かはっ……」


 到極は地面に両膝をついてうずくまった。


 いつもと違い、異能という鎧を着ていない。

 さらに筋力が衰え、肉体が弱体化している状態。

 まさに最弱の状態だった。


「なんだこいつ、めちゃくちゃ弱ぇじゃん!」


 不良たちが到極を笑う。


(異能さえあれば、こんなパンチ効かないのに!)


 そう思いながら。

 到極はただ屈辱に耐える事しか出来なかった。


「莉奈、行くぞ」


 犬山が言った。


「お、おう……」


 番が犬山に返事した。


 不良たちに連れられて、番が去って行く。

 その去り際。


「本当、もういいから」


 番が到極に言った。


 番と到極。

 この日、二人の本心はすれ違ったままだった。

 互いの本当の気持ちが伝わるのがいつになるのか。

 それはまだ分からなかった。


 到極はそのまましばらく公園でうずくまっていた。




 ◇ ◇ ◇




 数日後。

 シェアハウス、到極の部屋。


 到極の携帯が突然鳴った。

 到極が慌てて電話に出る。


「もしもし到極くん?」


 電話の相手は蔦谷つたやだった。


 蔦谷つたや星子あかりこ

 到極と同じ2年2組のクラスメート。

 校内外に広い交友関係を持っている生徒だった。

 そしてクラスの中心的な立ち位置の女子でもあった。


(蔦谷さんから電話? 珍しいな)


 到極は思った。

 蔦谷が用件を告げる。


「到極くん。"番莉奈さん"って人、知ってる?」


 蔦谷が言った。


「――! う、うん!」


 到極が思わず頷いた。


「よかったぁ」


 蔦谷は安堵したようだった。

 蔦谷が続けて言う。


「その番さんって子が"怪しいって噂の集まり"に呼ばれて、行っちゃったみたいなの!」


「――!?」


 到極は驚いた。


 番と蔦谷。

 この二人に直接の接点はかった。


 大江ココ。

 この少女を通じて二人は知り合いだった。

 今回も、大江からの連絡を受けた蔦谷が到極に連絡をくれた、という流れだった。


 冷静を装い、到極が聞く。


「で、でも、それをどうして僕に?」


「到極くんって"異能者"でしょ? 異能の力があればもし何かあっても番さんを助けられるかなって」


 蔦谷が言った。


 到極は異能の力を失った事を周りに公言していなかった。

 それはチームL以外は数名しか知らない事実だった。


 出来るだけ混乱を招かないため。

 そんな理由からだった。


 しかし今。


 その秘密をばらす必要に迫られていた。

 到極が考える。


(どうする、言うか? 今は異能を使えない事を)


 だが。


「わかった、何とかするよ」


 到極が言った。


「よかったぁ!」


 蔦谷が言った。


「だから安心して待ってて」


 到極が言った。

 それから番の向かった場所を聞き、電話を切った。


(喧嘩なんて、生まれて初めてだ。嫌だなぁ……)


 蔦谷の話によると。

 怪しいと噂される集まりは、暗木という男が主催する集会らしい。


 もしもその集会から番を取り戻すとなると、犬山やその手下、更には暗木と戦わなければいけなかった。


 到極は考える。


(いつもなら相手の弱点を対策したり、相手の異能を逆に利用して戦っているけど……)


 だが今回は違った。


(相手は異能者じゃないし、僕も異能を使えない)


 蔦谷の話によると。

 犬山もその手下も暗木も、異能者ではないらしい。

 と、なると。


(素手と素手の戦いで、僕に勝ち目があるのか?)


 シンプルな体力勝負。

 さらに今回の相手には付け入る隙がない。


(どうすれば勝てる? どんな方法がある?)

(相手より自分が優っている点はどこだ!?)


 ぱっと思いつくのは。

 到極は不良たちよりも真面目に生きてきた。

 犯罪など犯すことなく慎ましく生きてきた。

 それくらいだった。


 だが今回の対決において。

 その真面目さが、何になるというのか。


 真面目さでは、喧嘩には勝てない。


(どうすれば、どうすれば良いんだ!?)


 結局この段階では。

 到極はその答えを見つけられなかった。


(とにかく、何とかしないと!)


 頭の中だけで考えていても仕方がない。

 そう思い、到極はとある場所へと向かった。

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