3.番莉奈(つがいりな)
深夜のファミレス。
番は一人の女子と話していた。
「――って事があってさ」
番は今日あった事をその女子に説明していた。
「良かったじゃん、ずっと会いたかった人に会えて」
相手の女子が言った。
彼女の名は大江ココ。
髪は金髪に染めたロングヘアー。
長身でスタイルも良かった。
身体は小麦色に日焼けしていた。
番の転校後に出来た、数少ない友人の一人だった。
結論からいうと。
番は到極の事を嫌ってなどいなかった。
クラスメートにいじめられていた時。
たった一人最後まで味方でいてくれた到極。
彼にはむしろ感謝さえしていた。
だが、だからこそ心配でもあった。
転校する際、番は到極に報告することなく転校した。
それから番は到極にいじめを押し付けた感覚になってしまっていた。
(私一人だけ逃げて、きっと到極くんは嫌な気持ちになったよね……)
(あの後、到極くんがいじめのターゲットになってたらどうしよう)
それだけではない。
先日一緒にいた犬山たちは、番がいじめられていた事を知らない。
その事実を知っているのは、大江を含めて数人しかいなかった。
不良の様に振る舞うことで、いじめられなくなる。
番はそんな方法で転校後の生活を乗り切っていた。
番にとって不良の格好は、自分を守る鎧のようなものだった。
だから。
いじめの件を知る到極との再会を、番は恐れてもいた。
そんな番に大江が言う。
「莉奈はいじめられた事で、自分ではフラットだと思ってる感覚がマイナスに偏ってるんだよ」
「そう、なのかな」
番が言った。
「もっと自分に自信を持って良いんだよ。そしてシンプルに感謝の気持ちを伝える。それで良いと思うんだけどな、私は」
大江が番を勇気づけるように言った。
二人の時間はもう少し続いた。
◇ ◇ ◇
「色々ありがとう、そろそろ行くわ」
そう言って席を立とうとする番。
気がつくと来店してから結構な時間が経っていた。
立ち上がった番に大江が話しかける。
「そうそう、確認しておきたい事があるんだ。莉奈が最近つるんでる奴らのトップって……」
「あぁ、暗木さんの事? それが?」
番が言った。
番が到極と出会った際に、一緒にいた不良たち。
犬山をリーダーとする不良三人組。
番は最近、彼らとよくつるんでいた。
そんな彼らの上には暗木という人物がいた。
いわば犬山たちのトップ、あるいはボスか。
といっても。
番はまだ暗木と会った事は無かった。
「あの人にはあんまり近付き過ぎない方が良い」
大江が真面目な口調で言った。
「な、なんでだよ」
番が聞いた。
「あの人、色々な悪い噂があるんだよ。だから頼む、暗木先輩にはあんまり近付かないでくれ」
大江が番を心配して言った。
暗木には色々と良からぬ噂が立っている様だった。
「わかったよ。ありがとな、心配してくれて」
番が言った。
それから番は大江と別れ、自宅へと向かった。
その道中。
番は以前犬山から言われた事を思い出していた。
『お前もそろそろ暗木さんに会わないか?』
『お前、言ってたよな。前の学校で辛い事があったって。今でも時々思い出して、苦しくなるんだろ?』
『だったら暗木さんに相談してみろよ。暗木さんならお前の悩みをきっと解決してくれるぜ』
一方で、番は先ほど大江から言われた事も思い出していた。
『暗木先輩にはあんまり近付かないでくれ』
番の頭の中で二つの相反する意見がぶつかり合っていた。
(私は、どっちを信じたらいいんだろう……?)
そんな事を考えながら。
番は自宅へと帰って行った。
◇ ◇ ◇
番莉奈の家。
その浴室で番は入浴していた。
番は到極との再会を思い出していた。
「どうしてあんな事言っちゃったんだろう」
番が独り言を言った。
『もう私に関わらないで』
到極に言い放った言葉。
その言葉が頭の中でリフレインしていた。
「はぁ……」
番が溜め息をついた。
◇ ◇ ◇
番の部屋。
入浴後、番は自分の部屋にいた。
ベッドの上に寝転がる番。
「よし、やっぱり謝ろ!」
番は到極に謝る事を決意した。




