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異能と青春  作者: 成海由華
不良少女編
36/100

1.再会

 2065年12月。

 予言された世界滅亡まで、あと10ヶ月と迫った頃。


 その頃、到極たちチームLのメンバーは。


 とある理由から()()()()()()()()()()


 再び力を使えるようになるまで、あと2週間。

 到極たちは、争いに巻き込まれたりしないように、細心の注意を払いながら生活していた。




 ◇ ◇ ◇




 シェアハウス。


 到極はソファでくつろいでいた。

 近くの椅子には礼夏が座って本を読んでいる。


 ゆったりとした時間が流れていた。


 12月という事で、礼夏の服装も冬仕様だった。

 少し大きめのセーターを着て。

 膝にはブランケットをかけていた。

 夏の露出度の高い礼夏も魅力的だが、冬のもこもこしたシルエットの礼夏もまた魅力的だった。


「到極くん、ちょっといい?」


 キッチンの方から光の声が聞こえた。


「この段ボールを運ぶの手伝って欲しくて」


 光が足元にある段ボールを指差して言った。

 中には食器などが大量に入っているらしい。


「おっけー」


 そう返事をしてキッチンに向かう到極。

 そして段ボールを掴み、持ち上げようとする。

 だが。


「ふんっ、んぐぐぐぐっ!」


 段ボールは持ち上がらなかった。

 光が何かに気付いた様に言う。


「あ、そうだったね……」


 光が気付いた、というより思い出したのは、到極の異能の事だ。


 2週間前、到極は異能の力を失った。


 到極だけではない。

 チームLの全員が、全ての異能の力を失っていた。


「ふ、二人で持とうか」


 光が到極を気遣って言った。


 二人で持つと段ボールは持ち上がった。

 だが何だか光の方が余裕な表情だった。


(僕の素の力って、こんなに弱かったっけ?)


 到極はそんな疑問をいだいた。

 段ボールを無事に運び終えた後、その疑問に礼夏が答えた。


「あんた今、自分の筋力のこと考えてたでしょ。それ多分あれよ。宇宙飛行士の体力が大幅に落ちるっていう、あれ」


 宇宙で長期間過ごした人間は体力が低下する。

 それは宇宙では重力による負荷がかからず、身体が衰退するため。


 それと似た現象が到極の体でも起こっていた。

 異能の力が常に到極の身体を支えていた事で、到極の筋肉や骨にかかる負荷が少なくなっていた。

 今の到極は同世代の女子よりも華奢で脆かった。


 現在の素の体力は。


 隼人>礼夏>光>ティア>桜>到極


 の順だった。


「いつもみたいな戦い方は出来ないんだから、出来るだけ厄介事に巻き込まれない様に過ごしなさいよね」


 礼夏が到極に言った。

 礼夏なりの気遣いだった。


「そうだね、気をつけるよ。ありがとう礼夏」


 到極がお礼を言った。

 到極に無邪気に見つめられ、頬が赤くなる礼夏。


「べ、別に、分かれば良いのよ!」


 礼夏はそう言って、本で自分の顔を隠した。


 そんな時、リビングの扉が開いた。


「お待たせしました、到極さん」


 桜だった。

 到極は今日、桜と一緒に出かける事になっていた。


 桜からのお誘いだった。

 なんでも今年の流行スイーツ「水パフェ」なる物を食べてみたいらしい。

 到極も、もちろん食べた事などない。

 到極は流行りに疎かった。


 到極と桜は街へと出かけた。




 ◇ ◇ ◇




 流行りの店とあって、入口には行列が出来ていた。

 桜が行列に並ぶ。


「到極さんは休憩しててください♪」


 桜が到極を気遣って言った。

 いつもなら桜に付き合う所だが、今日はそうもいかない。

 今の到極には、いつもの体力もスタミナもないからだ。

 桜の言葉に甘え、到極は近くのベンチに座って桜を待つ事にした。


 10分後。

 桜が紙のカップを持って到極の元に駆けつけた。

 無事に買えたようだった。


「嬉しそうだね」


 到極が言った。


「はい、一度食べてみたかったんです!」


 そう言って桜は"大量のトッピングが乗ったパフェ"を到極に見せた。


 水パフェ。

 このスイーツが2065年のトレンドらしい。

 上にパフェが乗り、下にドリンクが入った代物。

 さらにその上からトッピングも出来る。

 これを混ぜながら食べるらしい。


(今どきの女子にはこんなのが人気なのか……)


 大量のクリーム。

 山盛りのトッピング。

 カラフルで派手な色味。

 到極がその見た目に圧倒されていると。


「じゃーん、もちろん到極さんの分もありますよ!」


 桜が反対の手に持っていたカップを到極に見せる。


「チョコ味のホットです! 到極さん、チョコレート好きでしたよね?」


「う、うん。ありがとう……」


 到極が若干その量に引きながら言った。

 到極はそのカップをありがたく受け取った。


「いえいえ、一緒に来ていただいたお礼です!」


 桜が笑顔で言った。

 二人はシェアハウスに向かって歩き出した。




 ◇ ◇ ◇




 その道中。

 到極と桜がゲームセンターの前を通った時だった。


 ゲームセンターから出てきた不良達とすれ違った。

 不良は全部で四人。

 三人が男子で一人が女子だった。


「チッ、つまんねーな……」


 女子の機嫌の悪そうな声が聞こえた。

 その女子の顔を見た時だった。


「え?」


 到極が持っていたカップを落とした。

 そしてそのままピタっと動きを止めた。


「きゃっ!? って、……到極さん?」


 桜が到極を心配した。

 だがその声は到極には届かなかった。


 スカートを短く折り。

 髪を茶髪に染め。

 足元はルーズソックス。


 メイクもばっちりしていた。

 身長も伸びていた。

 雰囲気は真逆になっていた。


 だが到極はすぐに分かった。


「莉奈……ちゃん?」


 4年前、救う事の出来なかった少女。


 少女がゆっくりと振り返る。


 少女な動きはスローモーションに見えた。

 到極の鼓動がどんどん速くなっていく。

 スローに見えていた回転も、遂に終わる。


 到極が少女の姿を正面から捉えた。




――番莉奈つがいりなが、そこにいた。




 その日、到極は再会した。

 もう二度と会う事のないと思っていた少女に。




【第21章 不良少女編】

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