1.再会
2065年12月。
予言された世界滅亡まで、あと10ヶ月と迫った頃。
その頃、到極たちチームLのメンバーは。
とある理由から異能の力を失っていた。
再び力を使えるようになるまで、あと2週間。
到極たちは、争いに巻き込まれたりしないように、細心の注意を払いながら生活していた。
◇ ◇ ◇
シェアハウス。
到極はソファでくつろいでいた。
近くの椅子には礼夏が座って本を読んでいる。
ゆったりとした時間が流れていた。
12月という事で、礼夏の服装も冬仕様だった。
少し大きめのセーターを着て。
膝にはブランケットをかけていた。
夏の露出度の高い礼夏も魅力的だが、冬のもこもこしたシルエットの礼夏もまた魅力的だった。
「到極くん、ちょっといい?」
キッチンの方から光の声が聞こえた。
「この段ボールを運ぶの手伝って欲しくて」
光が足元にある段ボールを指差して言った。
中には食器などが大量に入っているらしい。
「おっけー」
そう返事をしてキッチンに向かう到極。
そして段ボールを掴み、持ち上げようとする。
だが。
「ふんっ、んぐぐぐぐっ!」
段ボールは持ち上がらなかった。
光が何かに気付いた様に言う。
「あ、そうだったね……」
光が気付いた、というより思い出したのは、到極の異能の事だ。
2週間前、到極は異能の力を失った。
到極だけではない。
チームLの全員が、全ての異能の力を失っていた。
「ふ、二人で持とうか」
光が到極を気遣って言った。
二人で持つと段ボールは持ち上がった。
だが何だか光の方が余裕な表情だった。
(僕の素の力って、こんなに弱かったっけ?)
到極はそんな疑問をいだいた。
段ボールを無事に運び終えた後、その疑問に礼夏が答えた。
「あんた今、自分の筋力のこと考えてたでしょ。それ多分あれよ。宇宙飛行士の体力が大幅に落ちるっていう、あれ」
宇宙で長期間過ごした人間は体力が低下する。
それは宇宙では重力による負荷がかからず、身体が衰退するため。
それと似た現象が到極の体でも起こっていた。
異能の力が常に到極の身体を支えていた事で、到極の筋肉や骨にかかる負荷が少なくなっていた。
今の到極は同世代の女子よりも華奢で脆かった。
現在の素の体力は。
隼人>礼夏>光>ティア>桜>到極
の順だった。
「いつもみたいな戦い方は出来ないんだから、出来るだけ厄介事に巻き込まれない様に過ごしなさいよね」
礼夏が到極に言った。
礼夏なりの気遣いだった。
「そうだね、気をつけるよ。ありがとう礼夏」
到極がお礼を言った。
到極に無邪気に見つめられ、頬が赤くなる礼夏。
「べ、別に、分かれば良いのよ!」
礼夏はそう言って、本で自分の顔を隠した。
そんな時、リビングの扉が開いた。
「お待たせしました、到極さん」
桜だった。
到極は今日、桜と一緒に出かける事になっていた。
桜からのお誘いだった。
なんでも今年の流行スイーツ「水パフェ」なる物を食べてみたいらしい。
到極も、もちろん食べた事などない。
到極は流行りに疎かった。
到極と桜は街へと出かけた。
◇ ◇ ◇
流行りの店とあって、入口には行列が出来ていた。
桜が行列に並ぶ。
「到極さんは休憩しててください♪」
桜が到極を気遣って言った。
いつもなら桜に付き合う所だが、今日はそうもいかない。
今の到極には、いつもの体力もスタミナもないからだ。
桜の言葉に甘え、到極は近くのベンチに座って桜を待つ事にした。
10分後。
桜が紙のカップを持って到極の元に駆けつけた。
無事に買えたようだった。
「嬉しそうだね」
到極が言った。
「はい、一度食べてみたかったんです!」
そう言って桜は"大量のトッピングが乗ったパフェ"を到極に見せた。
水パフェ。
このスイーツが2065年のトレンドらしい。
上にパフェが乗り、下にドリンクが入った代物。
さらにその上からトッピングも出来る。
これを混ぜながら食べるらしい。
(今どきの女子にはこんなのが人気なのか……)
大量のクリーム。
山盛りのトッピング。
カラフルで派手な色味。
到極がその見た目に圧倒されていると。
「じゃーん、もちろん到極さんの分もありますよ!」
桜が反対の手に持っていたカップを到極に見せる。
「チョコ味のホットです! 到極さん、チョコレート好きでしたよね?」
「う、うん。ありがとう……」
到極が若干その量に引きながら言った。
到極はそのカップをありがたく受け取った。
「いえいえ、一緒に来ていただいたお礼です!」
桜が笑顔で言った。
二人はシェアハウスに向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
その道中。
到極と桜がゲームセンターの前を通った時だった。
ゲームセンターから出てきた不良達とすれ違った。
不良は全部で四人。
三人が男子で一人が女子だった。
「チッ、つまんねーな……」
女子の機嫌の悪そうな声が聞こえた。
その女子の顔を見た時だった。
「え?」
到極が持っていたカップを落とした。
そしてそのままピタっと動きを止めた。
「きゃっ!? って、……到極さん?」
桜が到極を心配した。
だがその声は到極には届かなかった。
スカートを短く折り。
髪を茶髪に染め。
足元はルーズソックス。
メイクもばっちりしていた。
身長も伸びていた。
雰囲気は真逆になっていた。
だが到極はすぐに分かった。
「莉奈……ちゃん?」
4年前、救う事の出来なかった少女。
少女がゆっくりと振り返る。
少女な動きはスローモーションに見えた。
到極の鼓動がどんどん速くなっていく。
スローに見えていた回転も、遂に終わる。
到極が少女の姿を正面から捉えた。
――番莉奈が、そこにいた。
その日、到極は再会した。
もう二度と会う事のないと思っていた少女に。
【第21章 不良少女編】




