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異能と青春  作者: 成海由華
出会い編3'
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3.暴走

 使われていない倉庫。

 高塚はしびれを切らしていた。


「そろそろ反抗するのもキツくなって来たんじゃないの? ほら、いい加減オレの物になりなよ」


「今までの私ならすぐに諦めていたかも知れません。でも今は違います。到極さんと会って、私は変わったんです! 今の私は、到極さんたちを裏切ったりしません」


「へぇ、そうかい」


 カッターナイフが桜の服を縦に切る。

 服の中から桜の白い肌とブラが露わになった。


(嫌だ、到極さん以外に裸を見られたくない!)

(助けて、到極さん!)




 その時だった。


 ガシャーン! と。


 閉め切られていたシャッターが破壊された。




「助けに来てくれたんですね、到極さ……ん?」


 桜が入口の方を見る。


 だが。

 そこにいたのはいつもの到極縁ではなかった。


 どす黒いオーラを纏い、瞳はあかかった。

 普段の穏やかさは消え、野生的で獰猛な姿。


「へぇ、久しぶりだな。随分、雰囲気変わったじゃないの」


 高塚が言った。

 高塚と到極は4月に一度戦っていた。


 到極が真顔で走り出す。

 高塚に向かって一直線に。


「おいおい忘れちまったのかよ? 俺の異能アークを!」


 そう言って高塚が異能を発動した。


 アーク名 混沌高度バベル・コード

 触れた物体の高さを操作する異能だった。


 到極は4月に対戦した時も、この異能アークに苦戦させられた。

 その時は何とか勝利できたが。

 今回も同じとはいえなかった。


「何にも対策してないはずねぇだろーが!」


 高塚が言った。

 倉庫の天井には、すでに大量のコンテナが浮かべられていた。


「到極さん、逃げて!」


 高塚が浮かべていたコンテナを一気に落とす。

 コンテナが土埃を巻き上げる。

 到極の姿が一瞬消えた。




 ――。


 ――――。


 ――――――。




 だが。


 到極は無事だった。


 そして。


 到極の周りにはグシャグシャになったコンテナの残骸が散乱していた。


(こいつ、前の時と全然違う!?)


 前回の対戦の時、二人の力はほぼ互角。

 到極がなんとか勝利した、という感じだった。


 だが今回は違った。


 高塚を思わず怯えさせる迫力。

 そして、圧倒的な実力。


(本当にあの時のあいつと同一人物か!?)


 そんな事を思っていると。


 ――シュン! と。


 到極が一瞬で高塚の目の前まで移動した。

 そして。


 ドゴッ! と。


 到極の拳が高塚の鳩尾を打ち抜いた。

 倉庫の壁に激突する高塚。


 その様子を見て、桜の元に向かう到極。

 だが。


 その後ろで高塚が何とか立ち上がろうとしていた。

 あと数歩で桜に届くという所で、高塚が言う。


「わりぃけど、こっちも負けらんねぇのよ」


 岩田を裏切った高塚にも、もう後がなかった。

 高塚がアークを発動した。


 すると今度は複数のコンテナが一斉に動き出した。

 それだけではなかった。

 コンテナが上下だけでなく、横方向や斜め方向にも自在に動き回っていた。


 本来のアークで出来るはずの行為を超えていた。


「まさか、アークの暴走!?」


 桜が驚いた。

 だが到極は動じていなかった。


 到極がコンテナの一つに飛び乗る。

 そこを狙い高塚が別のコンテナをぶつける。

 だがぶつかるより早く、到極が別のコンテナに飛び移る。


 この攻防が高速で、何度も行われた。

 あまりの速さに、桜は途中から到極の姿を見失っていた。


 そんな時だった。

 桜が鍵が落ちている事に気付いたのは。

 その鍵は自身を拘束する南京錠の鍵だった。


「ん〜っ、あと少しなのに」


 桜は足を伸ばし鍵を取ろうとしたが、中々届かなかった。


 一方、二人の対決は次第にコンテナが砕け、高塚の攻撃手段が少なくなっていった。


「チッ、どうする!?」


 高塚は焦り始めていた。

 高塚が辺りを見回す。

 そして一か八か、両手で倉庫の床に触れた。


 賭けは成功した。


 高塚の周りの床がめくれ、浮かび上がっていく。

 それがいくつものつぶてとなって、到極を襲う。


「おらおらおらおらーっ!」


 高塚が叫ぶ。

 だが高塚の方も限界が近いようで、攻撃の命中率が次第に下がって来ていた。

 到極は自身に当たる軌道の礫のみを拳と蹴りで撃ち落とし、高塚に近づいていく。


 そして遂に、到極が高塚を射程に捉えた。

 今日はいつものように技名を叫びはしなかった。


 無言の拳が、高塚を打つ。


 高塚は吹き飛び、再び倉庫の壁に激突した。

 そして今度こそ、高塚は戦闘不能になった。


 だが、到極は止まらなかった。


 そのまま倒れている高塚に向かって歩き始めた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 一方桜は、やっと鍵に手が届いていた。


「やっと取れた〜」


 急いで解錠し、到極の元へ向かう桜。

 高塚に向かって進み続ける到極。

 そして。


 桜が到極に背中から抱きついた。


 到極の歩みが止まった。

 高塚との距離、あと数メートルの所だった。

 桜が言う。


「ありがとうございます、到極さん。また私を助けてくれて」


 その瞬間、到極の纏っていた邪悪でどす黒いオーラは消えた。

 そして到極はその時()()()()()()()()


「あれ、桜? 僕は一体……って、うわっ!」


 到極は目の前で倒れている高塚を見て驚いた。




 この時の力が『昇華』の片鱗である事を、まだ誰も知らない。

 蒼焔と初めて対戦した時に見せた力もこれだった。

 蒼焔が求めていた『究極の力』の片鱗をすでに手にしていた事など、今の到極には知る由もなかった。

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