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異能と青春  作者: 成海由華
出会い編3'
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2.捜索

(桜がいない!?)


 その事実に到極は激しく動揺していた。

 はぐれてしまったのか?

 とにかく、早く桜を探さなければ。

 そう思い走り出そうとする、が。


(いや、待て)


 到極は止まった。


 罠の可能性はないか?

 到極はそう思った。


 勿論、ただはぐれてしまっただけかも知れない。

 だが仮に、桜が何者かに連れ去られていたとして。


 この件に『ティアを狙う組織』が関係していたら?

 敵の真の目的がティアだったら?


 桜を探している隙に、ティアを捕らえようと目論んでいる可能性もあった。


 狙われているティアと、普通に生活していた桜。

 どちらが標的の可能性が高いか。


 ただの迷子か、誘拐か、敵の策略か。

 到極は考える。


 そして。


「ここは……ひとまず帰ろう」


 到極が言った。

 苦渋の決断だった。


 ティアも到極の意図を理解したように従った。


 ティアを家まで送り届け、光に事情を説明した。

 光にティアの護衛を頼み、到極は再び町に出た。


 到極は携帯の位置情報を手がかりに桜を探し始めた。




 ◇ ◇ ◇




 今は使われていない倉庫。

 中にはコンテナ等が放置されていた。

 その中央で桜波姫は気を失っていた。


 手首を鎖で縛られ、その鎖を柱に繋がれて。


「あ、れ……」


 桜がゆっくりと目を覚ました。


「ここは?」


 立ち上がり逃げようとする桜。


 だが、ガシャン! と。

 鎖が邪魔で桜は逃げ出すことが出来なかった。


「無駄だよ」


 桜が声のする方を見る。

 するとコンテナの上に一人の少年がいた。


「あ、貴方は」


「久しぶりだな、桜」


「高塚くん……」


 高塚隣太郎たかつかりんたろう

 西中学校の生徒。

 髪を染めた長身のイケメン。

 岩田の結成した不良グループのナンバー2。

 桜とも面識があった。


「高塚くんの仕業なの?」


「あぁ」


「なんで、こんな事」


「ぶっ潰すためさ、岩田をな」


「!? 岩田くんを!?」


 桜は驚いた。

 岩田と高塚は仲間だったはずだ。

 それもナンバー2を任されるほどに信頼された。


「まさか、岩田くんを裏切るんですか?」


「あぁ」


「でも、どうして?」


「あいつに失望したからさ、あのままチームを引っ張ってくれりゃ、俺たちはこの町で最強になれたのに」


 高塚が続ける。


「それなのに、あいつは"お前"を手放しやがった!」


 高塚の話はまだ続いた。


「それからチームは負けが続いてる、あいつのせいでな。あいつは腰抜けになった、落ちぶれたんだよ!」


「それは違います。岩田くんは私の意思を尊重して、私を解放してくれたんです」


 桜が否定した。

 だが高塚は止まらなかった。


「なぁ桜、俺と一緒に来ないか。俺とお前が組めば最強になれる。岩田を倒せるんだよ!」


 高塚の言葉は桜には響かなかった。


「せっかくのお誘いですけど、お断りします。私は今の生活が好きなんです」


 桜が続ける。


「学校に通って、お友だちが出来て、そして……好きな人が出来て。やっと()()()()()()()()()生きていけそうなんです」


 桜が高塚の目を見て言う。


「だからお願い、高塚くん。鎖を外して」


「ふっ、ふはははははっ!」


「高塚、くん?」


「まさかお前がこんなに変わっちまってたとはな! いいねぇ、ますますお前が欲しくなったよ」


 そう言って高塚がコンテナの上から降りる。


「決めた、お前を()()()にする」


 そう言われて、桜は思い出した。


 不良グループの中で、桜が男子である事実を明かしたのは、信頼していた岩田にだけだった。

 つまりそれ以外のメンバーは。

 高塚は、今も桜を女子と認識しているのだと。


 高塚が桜に向かって歩き出す。

 その途中でポケットから何かを取り出した。


 右からカッターナイフ。

 左からカメラを。


「お前を屈服させる方法なんて、いくらでもあるんだからな」


 高塚が桜の前で立ち止まる。

 そして桜の頬にカッターナイフを当てた。


「時間はあるんだ。よーく考えなよ」


 そう言って高塚は離れて行った。


(嫌だ、高塚くんに裸を見られたくない……!)

(到極さん、助けて……!)


 桜は心の中でそう願った。




 ◇ ◇ ◇




 到極は位置情報を頼りに、桜の携帯のすぐ近くまで迫っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 場所は路地裏。

 到極は結構な距離を走り回っていた。

 だがやっと、位置情報の地図上で、到極と桜の二つの点が重なろうとしていた。


「さくらー、いるー? 居たら返事してー」


 だが返答はなかった。


 そして。

 次の瞬間、到極は一瞬言葉を失った。




 位置情報の示す先。

 そこにあったのは、一つの大きなゴミ箱だった。




 蓋がしてあり、中身は見えない。

 しかし到極が桜に電話をかけると、着信音はゴミ箱の中から聞こえ、ゴミ箱は大きく揺れ出した。


 一瞬、ほんの一瞬だけ。

 到極は最悪の事態も想像した。


 意を決して、到極がゴミ箱の蓋を取った。




 そこには携帯電話しか無かった。

 到極はひとまずホッとした。


 だがすぐに、桜がただの迷子などではなく連れ去られたのだと理解すると。


 到極の中で、様々な感情が渦巻いた。

 怒り、不甲斐なさ、罪悪感。

 そして。


 ――到極の中で"何か"が暴走した。

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