1.買い物
到極と桜が出会ったのは4月のことだった。
到極がティアと出会ってから二週間後。
当時、桜は不登校で家出中だった。
泊まるところのない桜に居場所を与えたのが、他校の不良・岩田だった。
岩田甲骨。
西中学校の生徒で、西中の不良を集め不良グループを結成。その不良グループのトップに君臨している。
そして岩田は。
家出中の桜を自分たちのアジトに案内した。
桜の異能を利用し、酷使することを条件に。
到極は岩田と戦い、説得し、桜を不良グループから解放した。
そして桜をチームLに誘った。
それ以来、桜は到極に感謝以上の感情をいだくようになっていた。
【第3章 出会い編3 終盤戦】
2065年6月のとある休日。
シェアハウスの居住者は現在、到極、ティア、桜、隼人、光の5人。
その5人は全員リビングでくつろいでいた。
ソファに寝転がり、漫画を読む隼人。
窓辺の席で本を読むティア。
到極、桜、光の三人はテレビを見たりしながら過ごしていた。
こんな日常を桜が過ごせるのも。
到極さんが自分を救ってくれたからだ。
そう桜は思った。
「隼人、ちょっと買い出しに行って来てほしいんだけど」
ふと、光が言った。
「あ、わりぃ、今ちょうど宿題しようと思ってたんだよねー」
隼人はそう言うと、漫画を持って自分の部屋に行ってしまった。
「あれズルですよ、あのまま部屋で漫画の続きを読んでるんです!」
桜が言った。
「僕が行くよ、今日は特に予定なかったから」
到極が言った。
「いつもわるいわよ、到極くんばっかり」
光が言った。
だが隼人に断られた時点で。
他の選択肢は限られていた。
光は家の事で忙しく。
ティア一人での外出は不安だ。
桜一人では一度に持てる荷物の量が少ない。
「私もお供します」
「……私も到極君と一緒がいい」
桜とティアが言った。
「じゃあ、やっぱりお願いできる?」
光が言った。
結局。買い物は到極、ティア、桜の三人で行く事に落ち着いた。
「私、おでかけ用の洋服に着替えてきますね」
桜はそう言って自分の部屋に向かった。
桜の部屋。
そこは白とピンクを基調とした部屋だった。
中は整頓されていた。
棚にはぬいぐるみが並んでいる。
学習机の上の写真立てには、到極とのツーショット写真が飾られていた。
そんな自分の部屋で、着替えのため服を脱ぐ桜。
青い模様の入った白い下着。
上下お揃いの物だった。
下着姿になり、桜は姿見の前に立った。
(この身体で、いつか到極さんに好きになってもらう事なんて、出来るのかな……)
自分の平坦な胸を見て。
桜の口から思わずため息がこぼれた。
◇ ◇ ◇
シェアハウスの廊下。
「お待たせしました。到極さん、ティアさん」
桜が明るく振る舞った。
「そんなに待ってないよ」
「えぇ」
到極とティアが返した。
三人はそのままお使いに出かけた。
店に向かう途中。
話題は到極の服装の話になった。
「到極さんって、よくそのパーカーを着てますよね。お気に入りなんですか?」
桜が言った。
到極は出かける際、よく白のパーカーを着ていた。
今日もそのパーカー姿だった。
「無難だからよく着てるだけだよ。どんな服がお洒落かとか、よく分からなくて」
到極が言った。
それを聞いて桜が提案した。
「でしたら、今から一緒に見に行きませんか? 私が到極さんに似合う服を選びます」
「本当、良いの?」
「もちろんです」
そう言って到極と桜は服屋に寄ることにした。
ティアも二人について行った。
◇ ◇ ◇
服選びと光のお使いを終えて。
到極たち三人は町の大きな通りを歩いていた。
到極の両手には、たくさんの荷物。
店員さんに煽てられ。
桜には何を試着しても「似合う」と言われ。
到極は、普段なら買わない量の服を購入していた。
三人は歩きながら、雑談をしていた。
「さっきの店員さん、何でも勧め過ぎじゃない?」
到極が言った。
「――ね、桜?」
到極が桜に話を振った。
だが。
桜の反応はなかった。
到極が桜の方に振り向く。
すると。
「え?」
そこに桜の姿は無かった。
到極とティアは慌てて辺りを見回した。
だが桜の姿はどこにも確認できなかった。
この日、桜波姫は何者かの手によって連れ去られた。
到極の平穏はいつも突然崩れる。
これからの予定が、午後のゆったりとした時間から捜索と奪還のための切迫した時間に変わった。




