表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能と青春  作者: 成海由華
夏休み編
22/100

7.発見

 港の近くのとある倉庫。


 蒼焔は倉庫の中で身を潜めていた。


「はぁ、はぁ……」


 焦って異能を使い過ぎたことで蒼焔はスタミナ切れを起こしていた。


(これからどうする?)


 蒼焔が考えていると。


 ペタ、ペタ、ペタ、と。


 ブロブの足音が少しずつ近付いていた。


 息を潜める蒼焔。

 だが。


 ガシャーン! と。


 蒼焔が後ろに隠れていた棚やドラム缶を弾き飛ばし、ブロブが目の前に現れた。


「ひいっ!?」


 蒼焔は恐怖でその場から動けなかった。




 ◇ ◇ ◇




 一方町中では、到極が走りながら電話していた。


「もしもし光? 今いい?」


『どうしたの到極くん?』


「光たちって、今家にいる?」


『うん、私とティア。それと今日は、こはくちゃんとれいなちゃんも遊びに来てるんだよ』


「そ、そっか……」


(シェアハウスは本部を挟んで逆方向か。今から二人を呼んでもあまり意味がないか。……わざわざ四人の時間を壊すことないしな)


「隼人は?」


『隼人は少し前に出かけたよ、補習だって』


(隼人も駄目か、桜もバイトだし……)


 補習中やバイト中は携帯の電源を切っている。

 二人に連絡を取るのは難しかった。


『とうごくからでんわー? かわってかわって!』


 携帯の向こうからこはくの声が聞こえてきた。


『とうごくー。あのね、今、ティアお姉ちゃんたちと一緒にアイス作ってるの!』


 こはくだけでなく、れいなの声も聞こえる。


『どーしても食べたかったら、とうごくも食べてもいいよ。でも一口だけだからね!』


「あぁ、分かってるよ」


 到極が言った。


『大丈夫? 何かあった? 今から行こうか?』


 何かを察したように光が言った。


「いや、大丈夫。光はアイス作りを続けて」


『そう? 何かあったら呼んでくれて良いからね』


 そう言って光は電話を切った。


(仕方ない、か。いざという時は……)


 到極はポケットを触った。

 ケースに入った『禁断触媒』を確かめる様に。




 ◇ ◇ ◇




 港の近くの倉庫。


 蒼焔は涙目になっていた。

 逃げなきゃと思ったが、足がすくんで一歩も動けなかった。

 ゆっくりと蒼焔の顔に手を伸ばすブロブ。

 蒼焔は絶望しかけていた。

 そして遂に手が触れかけた、その時。


「おりゃあー!」


 到極が助けに来た。


 到極は跳び上段回し蹴りでブロブを蹴り飛ばした。

 後ろからの不意打ちに反応できず、ブロブは横方向に吹き飛んだ。

 倉庫内に積まれた荷物に埋もれるブロブ。


 到極はすかさず蒼焔に駆け寄った。


「大丈夫、蒼焔さん!」


「う、うん!」


 蒼焔が答えた。

 今の蒼焔にはいつもの強がった感じはなかった。


「怪我してるじゃないか、早く治療を――」


「危ない!」


 蒼焔の声に反応し、何かを避ける到極。

 攻撃のあった方を見ると、ブロブが起き上がり電撃を飛ばしていた。


「異能者なのか、アイツ!?」


 到極が言った。


 ブロブが到極に向かって走り出す。

 受けて立つ到極。

 両者は組み合い、互いを攻撃した。


 ブロブを攻撃しながら。

 あるいはブロブの攻撃を避けながら。

 到極が言う。


「蒼焔さん、僕に使えるのは変則的な【第一艤装】と【第三艤装】だけです」


 到極がブロブを殴りながら続ける。


「蒼焔さんの言うような『究極の力』を、仮に持っていたとしても、今の僕にそれを自由に発動する方法はありません」


 到極がブロブを蹴りながら続ける。


「でも、その力を使えなかったとしても! 僕は蒼焔さんを助けます、助けてみせます!」


 到極の言葉が蒼焔に届く。

 その言葉を聞いて、蒼焔は自分を見つめ直した。

 自分は『究極の力』にこだわり過ぎていたのかも知れない、と。


 到極の拳が遂にブロブを後退あとずさりさせる。

 体勢を崩したブロブに到極が追い打ちをかける。


「【第三艤装】爆拳バグパンチ!」


 ドン! という衝撃が倉庫内に響いた。

 ブロブは数メートル吹き飛び、動きを止めた。




 ――。


 ――――。


 ――――――。




 だが。

 ブロブは再び動き出した。

 そして到極と蒼焔に向かって手を伸ばした。


 微電槍サンダー・スピアを警戒する二人。

 だが。


 ブロブが放ったのは()()()だった。

 ()()が二人を数メートル吹き飛ばした。


「うわっ!?」

「きゃっ!?」


 二人は倉庫の床に転がっていた。


 アーク名 風の渦リトル・ストーム

 小さな竜巻を作り出し、敵を攻撃する異能だった。


「コイツ、一度に二つの異能アークを!?」


 到極は驚愕した。

 異能アークは一人につき一つ。

 これは異能の大原則だった。


(コイツ、只者ただものじゃない!)


 到極はそう思った。


 横を見ると蒼焔はまだ起き上がれずにいた。

 急いで体勢を整え、拳を構える到極。

 蒼焔を守るように、ブロブとの間に立つ。


「よし、行くぞ!」


 自らを鼓舞し、到極は再びブロブに向かって走る。


「うおーっ!」


 微電槍(サンダー・スピア)だけでなく、風の渦(リトル・ストーム)も警戒しなければならず到極はかなりのエネルギーを消耗していた。


 そんな時だった。

 到極の頭上の空中に"灼熱"を感じたのは。


 到極が見上げると、そこには"火の玉"があった。


 アーク名 流炎球メテオ・ポイント

 上空に火の玉を作り出し、敵に落とす異能だった。


「何っ!? 三つ目の異能アークだとっ!」


 ブロブが火球を到極に向かって落とす。

 無理やり体をねじり、火球を避ける到極。


 だが、そんな到極を次なる攻撃が襲った。

 倉庫内の荷物が到極に向かって飛んで来ていた。


 アーク名 公転念力レヴォルキネシス

 物体に触れずに、円の軌道で動かす異能だった。

 常識ではあり得ない四つ目の異能アークだった。


「マズい、避け切れない!」


 直撃を覚悟する到極。

 だがその攻撃は当たらなかった。


 蒼焔が最後の力を振り絞り、自身のアークを発動していた。


 自身を飛ばし、到極の近くに出現。

 そのまま到極に触れ、再度アークを発動。

 ブロブの攻撃の及ばない距離に飛んだ。


 着地までは制御できなかったが。


「ぐへっ」「ごはっ」


 不安定な体勢で出現した二人は、そのまま倉庫の床に倒れ込んだ。


 ブロブがそんな二人に向かって、ゆっくりと歩いて来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ