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異能と青春  作者: 成海由華
夏休み編
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4.発明家

 本部内のとある研究室ラボ

 E.D.O本部にはさまざまな研究室があり、さまざまな研究が日夜にちや行われている。

 その中の一つ。


 発明部。


 本部内の研究室の中で一番有名な研究室だった。

 その評価は真っ二つ。

 希代の天才か、物好きの変人か。

 良くも悪くも本部内では広く知られていた。


 到極はこのラボを何度か訪れた事があった。

 そして今日も。

 到極はこのラボに一人で訪れていた。


「すいませーん、博士いませんか?」


 到極がラボの入口で言った。


 ラボの扉はすぐに開いた。

 そして中から白衣を着た女性が現れた。


「やーやー到極くんじゃないか。いらっしゃい!」


 桂木天かつらぎてん

 E.D.Oで一番の天才……あるいは変人。

 研究分野はアークの応用。

 アークの技術の製品化などが専門だった。


 ラボは他の研究室に比べると狭く、研究員も数人しかいなかった。


(追いやられたのかな、本部の窓際的なところに)


 到極はそんな事を思ったりもした。

 ラボ内には、一見ガラクタにしか見えない様な発明品が大量に並んでいた。


「おじゃまします。博士」


 到極がそう言ってラボに足を踏み入れる。


「もう、気軽にてんちゃんでいいって言ってるのに〜」


 桂木が言った。

 桂木の軽い言動は到極を毎回戸惑わせていた。


「それで今日はどうしたんだい?」


 桂木がコーヒーを淹れながら言った。


「私に研究される気になってくれたのかい?」


 桂木がそう言ってコーヒーを差し出した。


「いえ……」


 到極が言った。


(博士に自由に研究させたら、僕の体が無事じゃ済まなそうだ……)


 到極はそう思ったが、口には出さないでおいた。


「残念だなぁ、私なら君を強化改造してあげられるのに」


 やっぱりそうだった!

 と到極は思った。


「博士はショ○カーか何かですか」


 到極が言った。


「おすすめはキ○コモルグかヒ○デンジャーだよ!」


 博士が返した。

 まさか乗ってくるとは、と到極は思った。


「選出が玄人向けですね、どうせ成るなら普通に仮面ラ○ダーが良いんですけど……」


 到極が困惑しながら言った。

 桂木はいつもこの調子だ。

 到極はいつもの様に桂木のペースに飲まれていた。


 そんな話をしていると、研究員の一人が言った。


「桂木博士。"触媒"が届きました」


「あー、そういえば今日だったっけ」


 桂木が言った。

 すると透明なケースに入った赤い鉱石が、厳重そうに運ばれてきた。


「何ですか、これ?」


 到極が聞いた。


「《禁断触媒》。上層部から解析を頼まれたんだ」


 桂木が答えた。


「これはね、異なる二つ以上の異能アークを合成するのに利用する触媒なんだ。これがあれば強力な異能アークを生み出す事ができるってわけ」


 桂木が続けた。


「すごいじゃないですか! これがあれば強力な異能がたくさん――」




「ところが、そう簡単じゃないんだ」




 到極の発言をさえぎり、桂木が言う。


「この触媒は過去に何度か使用されたんだけど、そのほとんどが失敗。成功の割合は一割ってとこかな」


「その、失敗っていうのは……」


「異能者がダメージを受ける場合、暴走、異能を失う場合、異能が望まない変化をする場合、色々だね」


「そっか。そんなうまい話、ある訳ないですよね」


 到極が言った。


 その時だった。

 ラボに通信が入った。


『例の物は届いたかね? 桂木博士』


「えぇ、ちょうど今届いたところです」


 通信はE.D.O上層部からだった。

 E.D.O上層部。

 それは本部を取り仕切り、運営する役員たち。

 その内の一人と思われる者が言った。

 通信は音声のみだった。


『わかっていると思うがそれはかなり貴重な代物だ。くれぐれも破損や紛失のないようにな』


「分かっています」


 その様子を見て。

 先程の会話を思い出しながら到極は思った。


(この組織がショ○カーなら、上層部は大首領って所かな)


 その考えがあながち間違いでない事を、到極たちはまだ知らなかった。




 ◇ ◇ ◇




 真夏に似つかわしくない長いコートを着て。

 そのフードを被って。


 "それ"はとある路地裏を歩いていた。


 それの進む先には不良がたむろしていた。

 地べたに座り、缶の酒を開けて。


 正義感の強い人間なら注意し、普通の人間なら別の道を通っただろう。


 だが、"それ"は違った。


 不良たちの座る場所を、堂々と横切った。

 地面に置かれた缶の酒を蹴散らしながら。

 すかさず不良たちがそれに絡んだ。


「おい、随分ふざけたマネしてくれるじゃねぇか!」


 不良の一人がそれの胸ぐらを掴む。

 するとフードがずれ、それの顔が露わになった。


 "それ"には顔が無かった。


 頭部はあった、それも銀色の。

 だが、目も鼻も口も耳も。

 それには存在しなかった。


 のちに"ブロブ"と呼ばれる事になる未知の生命体。

 その姿を前にして不良たちは恐れおののいていた。


「ひ、ひぃ、何だコイツ!」


 ブロブが不良に向かって手を伸ばした。

 不良はその手を払い、ブロブに殴りかかった。


「この、化け物が!」


 ドン! と。


 不良の拳がブロブの胸部を打った。


 だが。


 ブロブにダメージは無かった。

 そして。

 ブロブは改めて手を伸ばし、不良に触れた。


「う、ぐ、何だ、これ……」


 不良は力を吸い取られ、そのまま倒れた。


「ひぃ、に、逃げろ!」


 残りの不良たちが一斉に逃げ出した。

 ブロブは次の標的を定めると、ゆっくりと歩き出した。

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