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【ボツ作】 ブラック・スミス 〜生産職は弱いと誰が言った?〜  作者: 馬野郎
零章 「我らが長は未だ目覚めぬ。されど……」
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第1話 ファーストバトル


〈始原の草原〉


このフィールドに筋骨隆々の小柄な青年が笑いながら地面を掘っている。



なんとも奇妙なその光景に

新しくゲームを始めたプレイヤー達に盛大に引かれているが、当の本人は気にしていないようだ。



いや、正確には気にしている暇があるならこのフィールドの構造を調べたいのだろう。




俺はこのプレイヤーが気に食わない。



せっかくワールドクエストの進行を促すために導入したヴァルキュリアの1柱が

戦闘職でなく生産職に着いたことが気に入らない。



始めて早々地面を掘り始めたことが気に入らない。


確かに地層を調べればその土地の歴史がわかり、どんな鉱物が取れそうか目星が付く。


いい着眼点だが、それがまた気に入らない。



「腹いせにフィールドモンスターをぶつけるか」



実際あってはいけない私情によるモンスターの行動操作


しかしそれはこの人物以外が行った場合だ。


このゲームの全てに、9体のAIが発言権を持っているが、この人物が決定権を握っている。


行けと言われたら行くしかないのだ。

もちろんやりすぎたら首が飛ぶが。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



意識の暗転が終わり、目の前に草原が広がっていた。




「よし、洗いざらい調べるか!まずは俺の体からァ!」




何か特殊な物が埋め込まれてたり、

性別が一応男だからあるものあるのか調べるため

装備してた着流しを脱いで上裸になった。


そしたらいきなり横槍が入った。




《ちょっと待った! 何でいきなり全裸になろうとしてるの?!》




これが素の口調なのか? まぁいい。


調べる為には脱ぐのが手っ取り早いが全裸はダメなのか。




「半裸でも平気だぞ、確認さえ出来れば良い」




《そういう事じゃない!他の人もいますからやめていただきたい!》




そう言われて周りに目をやると

変質者を見るような目で俺の事を見ているプレイヤーがちらほら。


なんかウザイので睨み返したらそそくさとどこか行った。




「なぁ、俺ってただ自分の体を調べてるだけだが客観的に見てどう思う?」



《露出狂》



「なんでだ、調べちゃいけないのか?」




《正直、貴方の思考回路は特殊ですね。理解できないです》




何言ってるか分からない、とよく言われるが

やはりAIから見てもわからないか。


仕方ない、体は後回しにしてこのフィールドを調べるか。




「ここのフィールドって名前あるのか?」




《ありますよ、〈始原の草原〉という名前です


全体像を確認したい場合は、左腕に埋まってるひし形の物に触れればメニューが開き

そこから地図に飛んで確認してください》




韻を踏んできた。



それより左腕にひし形の石みたいなのが

本当に埋まっていたのが気になる。




「売れるかな?」と言ったら


《売ったら犯罪ですし、取ったら死にますよ?》


と言われた。

お巡り居るのかな? 仲良く(殴り合い)したいな。




気を取り直して、言われた通り触れると


自分の体、その右横にステータス画面

下に地図、インベントリ、クエスト、手紙、チャット、配信、外部ネットワークの順に表示されている。


本題の地図に入る前にインベントリが気になったから開けてみた。




中には



応急処置キット×2

さらし×4

歴戦のシャベル×1

ただの鶴橋×1

手紙×8

羽根ペン×1

インク×2

鳥用の餌×2



いやシャベルに歴戦もクソもあるのかよ。


後、鳥の餌。わざわざ序盤に入れるくらいだから手紙とやらは伝書鳩を使うらしい。



俺は歴戦のシャベルを持ってインベントリを閉じた。



本題の地図は

この草原の全体像と近くに位置しているイスマン王国という所まで書いてあった。


地図を見る限り、近くには火山らしきものがありもしかしたら砂鉄が取れるかもしれない。




「なぁ、この地図って他のところ見れないのか?」




《一度行ったことがある所だけが追記されていく仕組みです。


今回はサービスでイスマンまで追記させました》




「ふーん。よし、掘るか!」




早速地面を掘り始めた。

歴戦のシャベルは驚くほど簡単に地面に刺さり、小さな石なら切れる程だ。




《あの、(シャリ、ジャコォ)


その結論に(シャリ、ジャコォ)至った理由が

(シャリ、ジャコォ)知りたいのですが……》




少しスタミナが危ないので手を止めて、ついでに答えた。




「飽きた→地面気になる→スコップある→掘る」




《あの、私が悪かったです。

思う存分掘ってください……》




呆れられたが気にしない。


それより鉄の匂いが地面からする(錯覚)!



シャリ、ジャコォ。カキイィイン!


なんか当たった。




周りを掘って取り出してみると

それは、黒光りした小さな塊が集まって出来た磁鉄鉱だった。


これは砂鉄が取れるかもしれない。



だんだん笑いが込み上げてきた。


さらに掘り続けて、6個磁鉄鉱を集めたところでいきなりオリアが騒ぎ出した。




《緊急事態!

フィールドモンスターが急接近!》




お?素材が向こうからやってきたようだ。




「どこから来る?」




《南西の方向です》




言われた方向に目をやると地面が盛り上がってそれがどんどん迫ってきている。




「特徴は?」




《フィールドモンスター:〈アーマーマグネタイトモール〉


目が見えない代わりに耳と鼻が良く

それに加え蓄えた磁鉄鉱が磁気レーダーの働きをします。


そして磁鉄鉱は鎧のように全身を覆っており前腕部分に集中しています》




初バトルはモグラときた。




「攻撃は地面からの突き上げと前腕によるパンチか」




《そうです。接敵まで10!注意してください!》




俺は2振りの刀を抜いた。


初期装備だから〈鈍〉以下の刀

だが!肉を着れずとも命を断てればいいだけの事!


俺の流派は両手とも順手で握る。

今回は〈鈍〉なので逆刃にする。




Q:ここでクイズ。ただの初期装備(鉄の棒)でモンスターを狩るにはどうしたらいいでしょう?


A:脳みそ潰せば行動不能




俺は腰を落とし2振りの刀を大上段の構えをとる。


地面の盛り上がりが5メートル先で終わった。


これで初手は突き上げ攻撃!




「来る!」




地面が凹んだ瞬間ピンク色の大きな鼻が見えた。


バランスを少し調整して、(つづみ)を叩く感じで!




「素材落とせやァァ!」




俺は大上段から地面の鼻めがけて振り落とした。


他人が見れば刀の扱いを知らない素人に見えるだろう。

だが、これでいい。


〈鈍〉で切ろうなどと考えるのは100年早い

本当の使い方は捻り潰す!ただこれのみ。



どうやらこのゲーム

異様な程作り込みがしっかりしているらしく

骨の感触があった。


て事は内蔵も作り込まれてるはず。



もちろん不意をつこうとしたら、逆につかれた哀れなモグラは

鼻がやばい方向に曲がって地面でピクピクなっている。




「脳震盪は固い鎧があってもキツいだろ」




このモグラ

ご丁寧に背中、首、頭、脚、腕、に磁鉄鉱の鎧つけてやがる。


だが、脳に近くで無防備な所が2つある。


今、奴は鼻がきかない。

だから磁気レーダーで俺を把握しなきゃいけない。


これを使えば!



俺は左の刀を地面に突き刺しモグラの近くまで来た。

そして刀を振り回しながら




「鬼ごっこしようぜ?」




「「ビィッ!ビギギギギギギギ! 」」




すげぇ鳴き声



どうやら挑発に乗ってくれたらしく

いきなり俺にハグしに来た。


臭い獣のハグはお断り。

て事で脇構えからの顎を殴り上げ、丁重に断った。



ここから刀を振り回しながらダッシュ!



ポイントにそろそろ着くから俺は止まった。

あとは刀を肩の高さに持ち上げモグラが来るのを待つ



さっきの鬼ごっこでわかったが

こいつは鉄を攻撃しようとしていた。

つまり……


もしや

鉄が無ければ攻撃できないと思ってるのかもしれない。魔法はどうするんだ?



それはさておき、


目の前に刀を追ってきたモグラ


少し斜め後ろに地面に刺さった刀。


ここらは導き出される攻略法は、




「こいつでもしゃぶってろ!」




俺は、空中に刀を置くように離した。


そして後ろに飛び地面の刀を引っこ抜いた。


そして!

噛み付いた勢いでこちらの真横に飛んできたモグラの目めがけて突き刺す!


やっぱり目の奥に脳らしき感覚!

ちょっとグロいが少し刀を捻って確実に〆る。




「ピギィッ ピギギギィィィィ……」




「勝負ありだな」




《フィールドモンスター討伐おめでとうございます》



オリアがそう言うと、目の前に

〈フィールドモンスター討伐成功〉と出てきた。




「素材は何かな?」




哀れなモグラは

刀の刺さった目から血の代わりに赤い球体を出し

傷口はポリゴンでモザイクがかけられてた。



(仕事が細かいなぁ)



俺が刀を取りに行こうとしたらモグラが塵になってドロップアイテムだけ落とし消えた。



(こういう所はリアルじゃないなぁ〜

さすがにグロいか)



ドロップアイテムを確認すると

革と羅針盤と骨しかなかった。




「は? 磁鉄鉱ないの? なんで無いの? あんだけ体に付けてたのに1個も泥らないっておかしいだろ!」




《確率できまりますので、運が無かったと……》




なんかムカついてきた


1本刀がダメになったから作り直すために磁鉄鉱でも何でもいいから欲しかったのに。




おもむろに歴戦のシャベルを取った。















気がついたら磁鉄鉱が71個に増えてた。


そして

〈始原の草原〉が戦争でもしたかのように穴だらけになっていた。


ついでにオリアが

〈( °_° )〉こんな顔してた。




《そろそろイスマン王国に言ってください!》




時間を見るとどうやら1時間穴掘ってたらしい。

俺の悪い癖だ。酷い時は4時間鉱石を掘り続けてた。



そろそろログアウトしないとVRのシステムからペナルティ食らうから早く行かないとな。


あと約束もある事だし。




「宿屋とかに泊まれば死んでもそこにリスポーンするよな?」




《はい、しかし厳密に言えば個室にベットさえあれば何処でも平気です》




宿屋の商売上がったりだな。





道すがらオリアと駄弁ってたら、なんとオリアは重度のシスコンと判明した。




「ま、まぁ、姉妹同士が、仲良いことに越したことはない思うよ……」




《そうですよね!


あとメヒトさん! メヒトさん! 1番上の姉さんは、父さんの屋敷でメイド長やってるでよ!

良いですよねぇメイド長、憧れます。


次女はと言うと、父さんのやし………………〈15分後〉…………………なんですよ。

妹も凄いでしょ!》




凄い勢いで家族関係の情報が来て思考がフリーズした。



このタイプだと何回聞いても喜んで教えてくれるから覚えなくていいや。



なんかどっと疲れたがやっと城門が見えてきた。



時計を確認したら15時だった



「そろそろティータイムか」



主人公は紅茶と珈琲をこよなく愛する変人です。

最近は 1:4の割合で珈琲が優勢。


甘いものはあまり好まないのでストレートとブラックをよく飲みます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


〈サーバー内〉


最高責任者: フィールドモンスターこいつにぶつけてー


1st AI : 始めたての人にぶつけるのは如何なものか。反対だ


2nd AI : 俺の管轄じゃないが、ヴァルキュリ アが気に入った奴だ、弱くは無いだろう。俺は賛成だ


3rd AI : 俺の娘が選んだんだ奴だ。賛成


4th AI : 私は反対


5th AI : 鍛冶屋だから賛成。後でこいつに会ってきていい?

最高責任者: いいよー


〈6789:オフライン〉


最高責任者: 他のやつは興味無いか、賛成過半数。派手にぶつけちゃってー


1st AI : 反対しかなくても強行しただろ、こんな茶番。


最高責任者: まだ首と胴がお別れしたくないからさー。じゃあよろしく!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


モグラって本当に「ピギギギ!」って鳴くんですよ!まじキモイ!


知り合いの爺さん(農家)がモグラにキレてるのを見て、初モンスはモグラにしました。

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