095『総攻撃前・4・移動』
まりあ戦記・095
『総攻撃前・4・移動』
ジェファソンとセオドア・ルーズベルトは撃破した。
ヨミのことだから、リペアして再出撃してくる可能性はあるが、おそらくは残りの健康なゴーレム大統領で仕掛けてくると考えられた。
「特にリンカーンが要注意だ」
ボギー大佐が腕を組む。
「奴は、いちどゲテイスバーグからワシントンに向かって進撃した」
「でも、あの時はブロンズだったじゃない、今のは岩石でできたゴーレムだよ」
どろしーが異議を唱える。
「うん、だがやつの動力波を解析すると、ゲティスバーグのと99%一致する」
モニターにゲティスバーグの時のとラシュモア山の時のが重ねられる。
「「「「ああ……」」」」
四人とも納得して、テレジアが微かな動作音をさせて演算しなおす。
「大佐のおっしゃる通りですね、ワシントンとリンカーンが残っているけど、リンカーンの方が厄介なようです」
「そうだろ」
「ムゥ、最初から言ってくれたら、そっちに集中したのにぃ」
前回の戦いでライオンマンをオシャカにしたので機嫌の悪いどろしーだ。
「戦いは試行錯誤だ。ボギー大佐は一手間多くかけるが、最後には勝利をもたらす。信頼してくれ」
ヘンリー准将がきちんとフォローする。日本の特務旅団は親父の強すぎるリーダーシップで進んでるけど、アメリカは、こういう相互のフォローが強みなんだろう。
「これからの見通しはどうなんでしょう?」
中原中尉がお姉さんらしく、話の先をうながす。
「では、結論から言おう。きみたちウズメのクルーはオーガスタに移動してもらう」
オーガスタ?
みんなの頭に『?』が浮かんだ。
「ええと……ポートランドの北にある?」
「ああ、となりの州都だよね」
ポーンジー(ポーツマス・ネイバルシップヤード)自体はメイン州だが、街そのものは川向こうのニューハンプシャー州で、御ひいきの中華飯店9090があるとおり、クルーは、メイン州と言えば隣という感覚なんだ。
「いや、ジョージア州のオーガスタだ」
「「「え?」」」
クルー三人が——どこだ?——という中、中原中尉は「マスターズ・トーナメントが開催されるオーガスタですか?」と反応した。
「ああ、古いゴルフ場の下に、同じくらい古いミサイルのサイロがある。ウズメはそこに格納するから、君たちは先に移動してもらう」
「「「ええ!」」」
三人は不満げに驚くだけだったが、中原中尉は冷静に反応した。
「ポンジーが危ないんですね」
ヘンリー准将が大佐と顔を見かわせて話を進めた。
「中尉の言う通りだ、ここはラティモア山からは射程距離の中だ。以前、ストローハットが現れたセントローレンス湾(070『セントローレンス湾の前哨戦』)からはさらに近い。リスク回避のために移動してもらう」
「部隊指揮のために、わたしが同行する」
大佐が一歩前に出る。
「ということは、ポンジーを放棄するということではないんですね?」
「むろんだ、ポンジー再建はまだ途中だ。バリアーや隔壁は95%回復したが内部施設はいよいよこれから、それは軍政に属することだから、わたしは残る」
准将が宣言し大佐が頷く。
ウズメを残しての移動は寂しかったけど、その日の夕方には欺瞞進路を取ったうえで、オーガスタに移動するクルーたちだった。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション (integration)ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)
・中華飯店9090 ポーツマスのレストラン
・ゴーレム大統領 岩石の魔物(ワシントン・ジェファソン・ワシントン・リンカーン)




