091『なんでテディベア?』
まりあ戦記・091
『なんでテディベア?』
「それで、なんでテディベアだったの?」
お替わりの餃子がきたところで、どろしいに振るまりあ。
「ああ、テディ―ってのはセオドアの愛称なんだよ、日本語のケンちゃんミヨちゃんみたいな感じ」
「それが、なんで、クマのぬいぐるみなんだ?」
ナユタが本質的な質問をする。そうだ、セオドア・ルーズベルトがクマのぬいぐるみを爆雷みたいに使ってんのが疑問だ。
「体形が似てるからかなあ?」
「んん……そんな感じかなあ、ねえ中尉?」
アメリカ人のくせに中原中尉にふりやがる。
「アメリカじゃ、昔からクマのぬいぐるみってテディベアって言うわよねえ……」
中原中尉もよく知らないようだ。
「俺、知ってるよ」
「チーフ、ご存知なんですか?」
お冷のおかわりを配りながらチーフが指を立てる。あ、ちなみに、中華飯店9090じゃ、小村のおっさんをチーフ、ウィッテをシェフって呼ぶようになってきてる。
「セオドア・ルーズベルトってのは狩猟が趣味でね、ある日、森に熊を撃ちに行ったら、ぜんぜん熊に出くわさない。そこで、秘書官だか補佐官だったかが、子熊を見つけて『大統領、あそこに!』って叫んで、ルーズベルトは狙いを定めたんだ」
チーフは、中華のオタマを銃みたいに構えた。
「でもな『あれは、まだ子熊だ』と言って、ルーズベルトは見逃してやったんだ」
「いい話ねえ」
「だろう、でな……」
「あとは、わしに言わせてくれ」
チーフが続けようとすると、カウンターの中でウィッテシェフが手を上げた。
「その話が新聞に載るとな、ある女の子が『子熊を助けてくれて感謝します。代わりに、わたしの子熊をあげます(^O^)』って、子熊のぬいぐるみを送ったんだ」
「ああ、思い出した! エレメンタリースクール(小学校)で習ったよ! それで、子熊の縫いぐるみが流行って、テディーベアって言うようになったんだ!」
「「「「そうなんだ!」」」」
と、みんな納得したんだけど、問題が大きくなった。
あの時討ち漏らしたテディーベアが、中西部の草原に散って、あちこちで悪さを始めた。
「ちょっと放置できん……」
ベースに帰るとボギー大佐が腕を組んでいた。修理が終わったばかりのCIC(戦闘指揮所)のディスプレーには、中西部の地図が出ていて、サウスダコタ、ネブラスカ、カンザス、一部はオクラハマまでひび割れが延びているのが分かる。
「ゴーレム大統領どもが作ったひび割れにテディーベアどもが取り付いて、調査隊も入れん状況なんだ」
「点滅しているドットは、ひょっとして交戦中ですか?」
中原中尉が、軍人らしい質問をする。
「ああ、どこもテディーベアに手を焼いている」
「でも、アメリカが東西に分断されていく……」
どろしいが「でも」に力を入れる。嘆きながらも——なんとかしなくちゃ——という気持ちが伝わってくる。みんな、お土産の点心に手をつけようともしない。
ガチャ!
乱暴にドアが開いたかと思うと、ヘンリー准将が電信文を手に怖い顔で立っている。
「ホワイトハウスからダイレクトオファーだ……」
「攻撃命令ですか?」
「一週間の準備期間を置いて、総攻撃だ」
一週間!?
みんな息を呑んだ。ポンジーもウズメもそんな短時日では無理だ。
「ぜったい無理(>▢<)!」
みんなを代表するかのようにどろしいが叫んだ。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)
・中華飯店9090 ポーツマスのレストラン




