004 : ドーン!!
まりあ戦記(神々の妄想)
004:『ドーン!!』 晋三
みなみ大尉は車を路肩に停めると、まりあを引きずるようにして路地に跳び込んだ!
「どこへ行くんですか!?」
「シェルターよ! 万全じゃないけど地上にいるよりはまし!」
ズウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
ビル街の四角い空を巨大な何かがよぎった。
「みなみさん、あれは!?」
「ヨミよ」
「あれが……」
「さ、急ぐわよ!」
俺もぶったまげた。二十年前に東京とその周辺を壊滅させたヨミのことは知識としては知っていたが現物を見るのは初めてだ。
瞬間見えたそれは、巨大なクジラを連想させて、圧倒的ではあったけど、かっこいいと感動してしまった。
流行りのレトロ表現でいうところの仮想現実、今風に言えばVRに慣れた俺たちは、瞬間圧倒されても、我が身に直接危害が及ばないかぎり、ゴーグルの仮想現実でゲームのラスボスに遭ったようにしか感じない。
しかし、二つの角を曲がって目に飛び込んできた光景は、凶暴なリアルだった。
「う、なんてこと……」
それまで敏捷にまりあをリードしてきたみなみ大尉も立ちつくしてしまった。
まりあは大尉に手を繋がれたまま青ざめ、俺は胸ポケットの中でまりあの止まらない震えを感じていた。
仮想現実は視覚的にはリアルと区別がつかないが、目の前のリアルには凶暴な熱と臭いがある。
地球に骨があるとして、その骨さえ打ち砕く悪魔がいるとしたら、目の前の惨状がまさにそれ。頭蓋骨ががむごたらしく陥没骨折、あるいは肋骨のすべてがへし折られ、剝き出しになった脳みそや臓物が燃えているような感じだ。
「シェルターが壊滅している……」
陥没骨折の亀裂からはホコリとも煙ともつかないものが噴きあがり、それは見る見るうちに炎に取って代わらた。
数百メートル離れたここには圧を持った熱と臭いとして届いてくる。
「ウッ、この臭い」
まりあは制服の襟を引き寄せて鼻と口を覆った。
「崩れた鉄筋とコンクリートが焼ける臭い…………人が焼ける臭いも混ざってるわ」
「中の人たちは?」
「過去にこうむったどんなヨミの攻撃からも耐えられる。カタログスペックではそうなっているんだけどね……」
「あ、あれは?」
その時、西の方角から大量のミサイルが飛んでくる音がした。
ゴォーーーーーー
「軍の攻撃が始まったの?」
「ええ、でも時間稼ぎにしかならないでしょうね……」
ミサイルの群が飛んで行った彼方に小さく光るものがあって、すぐに光のドームのように膨らんだ。
ピッカーーーーーーーーーーーー!
「伏せて!」
「は、はい!」
ウグ!
地面とまりあの胸に挟まれて過去帳の俺でも息が詰まりそうになる。
ドォーーーーーーーーーーーーーン!!
遅れて衝撃! 大量のミサイルが同時に命中した衝撃だ! これならゴジラであってもやっつけられると思った。
ビュビューーーーーーーーーーーン!!
もうひとつ遅れてハリケーンのような暴風がありとあらゆる破片やゴミやホコリを巻き起こしながら吹き荒れ、あたりは真夜中のようになった。
五分……ひょっとして一時間かもしれない時間が過ぎ、曇り空ぐらいに回復して、ようやくみなみ大尉は顔を上げた。
「さ、その交差点で救援を待つわよ」
そして、やがてやってきたオスプレイに救助されて現場を離れた。
数キロ離れた海上にヨミの上半分が突き出ている。なんだかオデンの出汁の中に一つ残った玉子のように見える。
「球体に近い姿が一番衝撃に強いの。ダメージを受けてはいるけど、ヨミはすぐに復活する……」
そう言われると、玉子に似たヨミは僅かに鼓動しているようにまりあには見えた。
「怖い?」
「えと……オスプレイの振動です」
「頼もしいわ、まりあ」
大尉はマリア頭をワシャワシャと撫でた。
こういう子供にするようなことをされると嫌がるんだが、ベースに着くまで大人しいまりあだった。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年
・高安みなみ 特任旅団大尉




