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035『大尉は司令を追いかけた』


まりあ戦記・035

『大尉は司令を追いかけた』    





 舵司令は拒否権を持っている。


 2033年、未確認攻撃体ヨミが出現するまでは、どこの国でも軍の指揮権や作戦の決定権は人間が握っていた。

 しかし、どこの国でもヨミの出現と、その攻撃の凄惨さを予見できなかったため、コンピューターのAIがとって替わった。

 日本の防衛軍も例外ではなく、政府のマザーコンピューターであるアマテラスがその任に当たっている。

 

 アマテラスは独立したコンピューターではなく、日本各地に分散されている七つのコンピューターの総称である。


 ダイコク ビシャモン エビス ジュロウ ベンザイ ホテイ フクロクの七機のコンピューターは相互に並列化されており、国家の重大案件に関して演算を繰り返し、国家の意思決定時には多数決で結論を出す。問題ごとにホストコンピューターが決まっていて、軍事に関してはビシャモンが受け持っている。

 その決定は絶対的であり、総理大臣といえ拒否することはできない。むろん、このことは一般国民はおろか、政府や軍の指導者しか知らない。


 で、舵司令一人だけが、ヨミとの闘いに関して拒否権を持っている。


「大尉、義足のミサイルは外したらどうだ」

 作戦会議の後片付けに入って来たみなみ大尉に、司令は聞いてみた。

「あら、ビシャモンと同じことをおっしゃるんですね」

 四十七ある会議用シートを一つ一つ目視で確認しながら大尉は返事をする。

「あいかわらず、最後は自分の目で確認するんだな」

「ええ、理屈じゃないんです。ビシャモンも目視確認してはいけないとは言いませんから」

「ビシャモンはミサイルが不測の事態で爆発してしまうことを恐れている。確率は1/123000000000だがね、ハレー彗星が地球に激突する確率よりも高いんだそうだ」

「それって、世界の終わりまで起こらないってことじゃないんですか?」

「ヨミ出現の確率より一ケタ小さい」

「ビシャモンも心配性なんですね」

「わたしとビシャモンは結論は同じだが動機が違う。ミサイルとか物騒なものを搭載しなければ、有機義体に乗り換えられる」

「ええ、有機義体なら限りなく人体に近いですけど、やはり人工の義体であることに違いはありませんでしょ。任務に精励するには、やっぱ、これで……これがいいと思います」

「新しい有機義体を開発したんだ、軍の技研にも届けていないんだがね。一年使用すれば残ったDNAをコピーして完全に本人に同化する。もし脳細胞まで作れたら、人工的に人間を創作できるレベルのものなんだよ」

「……それって倫理規定に反しませんか、人間を作ることは禁じられています」

「君を完全に回復させることが、君のお父さんとの約束だからね」



 大尉の手が止まってしまった。


「ありがとうございます……でも、このミサイルも、どこかで役に立つときがある……アハハ、勘ですけどね」


 司令は小さく頷くと、端末を確認して会議室を出て行った。

 大尉は黙々と作業を続ける。


「あ、肝心の話を忘れてた!」


 手早く作業を終えると、大尉は司令を追いかけた。


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