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026『俺の三回忌・2』


まりあ戦記・026

『俺の三回忌・2』     





 日向ぼっこの気楽さで、親父はまりあに言った。


「箱根での戦いは成功だ、まりあもよく頑張ってくれた」

「うん……」

「ヨミは異空間にいる間に叩くにかぎる。三次元戦闘なら一回の出撃で一体撃破するのがやっとだが、異空間なら数百体のヨミを消滅させられる、事実まりあは634体の原始体を撃破した」


 まりあは、さらなる異空間での戦いを強いられるのかと気が重くなった。

 ヨミとは二度戦った。一度はベースに来た直後、ヨミの完熟体と。二度目が異空間で634体の原始体。

 いずれも、戦いの後は死ぬんじゃないかと思うくらいボロボロになった。

 異空間で戦った方がはるかに効率のいい戦いができる。同じボロボロになるのなら戦闘効率のいい異空間戦がまし。

 そう自分には言い聞かせてきた。

 でも、親父の口から直に言われると、正直に――辛い――という気持ちがせきあげて来る。


「統合参謀本部から、異空間戦闘を禁止すると命ぜられた」

「え……どうして?」

 思いのほか棘のある言い方に、親父は直ぐには言葉を返さなかった。


 まりあは二重の意味で驚いた。

 親父が極秘でオペレートした異空間戦闘が、統合参謀本部とはいえ外部に漏れていたこと。

 もう一つは禁止されたことを理不尽に思う自分の心に。二重の驚きがまりあの棘を鋭くさせた。


「ウズメの正規の戦いは、ベースの周囲に分散配置した正規ウェポンを装着して行う。異空間では初期搭載されている固有ウェポンだけだ。異空間戦闘を認めると、正規ウェポンは無用の長物になってしまい、それは国内防衛産業の存在意義を否定してしまうことになる。俺が考え出した異空間戦闘は時代の先を行き過ぎたようだ。これからは従来の三次元戦闘一本でいく」

 それだけ言うと、親父は回廊の階段を下り始めた。

「待って」

「なにが聞きたい?」

「なんで、あたしに話すの? あたしは、命ぜられたら三次元でも異空間でも戦うわ、そんな裏事情聞かされても不愉快になるだけ」

「あとで聞いたら、もっと不愉快になるだけだからな。じゃ、行くよ」


 まりあは階の一番上に腰かけたままボーっとするしかなかった。ちょっと不憫だ。


「まりあ、お斉(おとき=法事の後の会食)が始まるぞ」

「うん……兄ちゃん!?」

 不憫に思ったせいだろうか、俺は一瞬生前の姿でマリアに話しかけてしまった。直ぐに消えたけどね。


 だいぶ疲れてるなあ……


 ペシペシ


 まりあは自分のホッペを叩くと「エイ」と小さく掛け声をかけて本堂に戻った。


「精進料理かと思ってたわ!」

 みなみ大尉が子どもみたいに喜んでいる。お斉に出てきた料理は海老・蟹・肉の三大スターを中心に若者向けにアレンジしたごちそうばかりだ。俺も思わずいっしょになって食べくなった。

「ヘヘ、朝からみんなで作ったんだよ」

 衣を脱いで気楽なセーター姿になった観音カノンがクラスメートたちといっしょに料理を並べる。

「ちょっと失礼」

 まりあは、お皿に料理を大きく盛った。

「そんなに食べたらブタになるわよ」

 まりあが突っ込む。

「いいえ、これは……兄貴にね」

 山盛りを俺の遺影の前に置いた。


「こんなにお供えするんだ、生き返ってみせたら~……な~んてね!」


 チーーーーーン


 リンを大きく鳴らすと、お斉のテーブルの中に戻って行った。


 ありがたい三回忌ではあった。


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