020『突然の休暇』
まりあ戦記・020
『突然の休暇』
ここのところヨミの攻撃が無い。
首都駅に着くなりヨミの攻撃に晒され、命からがらたどり着いたベースでは、いきなりウズメに乗せられ、命がけの戦闘をさせられた。
もう、なんでもかかってこい!
まりあは覚悟を決めていたが、こんなに平穏な日々が続くと、いっそこのまま穏やかに生きていければと思ってしまう。
せめてお兄ちゃん(俺)の法事が済むまではこのままで……。
そう願うのは、まりあの愛情……と言ってやりたいが、十六歳の少女らしい怯えからだろう。
「休暇は休暇、楽しまなくっちゃ!」
みなみ大尉は、五分で準備した荷物を景気よく車のトランクにぶち込んだ。
「さ、行くよ!」
「うわーーーー!」
まりあがドアを閉めきる前に車は急発進した。
「家の外で朝ごはんを食べるなんて新鮮だ!」
まりあの横で男の子のナリをしたマリアが興奮している。
徹夜で仕事をしていたみなみ大尉に突然休暇の許可が下りたのは、ほんの十分まえだ。
頭の片隅で「なんで!?」という疑問が無いわけではなかったっが、詮索したら仕事が増えそうな気がしたので、瞬間で頭を切り替えた。
箱根にある軍の保養施設の空きを確認し、二秒で予約を入れると、八分でマンションに帰り、まりあとマリアを急き立てて車に乗せたのである。
まりあは戸惑ったが、マリアの反応は早かった。
「まりあ&マリアじゃまずいわよね」
マリアはまりあの影武者だ。いっしょに出かけるのははばかられる。
「エイ!」
小さく掛け声をかけると、髪の毛が縮んで肌の色が変わった。
「え、そんな技があったの?」
「あたしも初めて知った」
自分でも驚いたマリアの声は、一オクターブ低い少年の声だった。
「マリア……じゃまずいわよね」
高速に入ったところで、まりあが呟いた。男のナリでマリアはまずい。
「じゃ、マリオって呼んで」
「それじゃ任天堂のゲームだ」
「よし、晋太郎だ!」
「ウプ!」
まりあが吹き出しかける。晋太郎は親父の名前だ。
「えと、泊まりになるのよね、みなみさん?」
「学校なら、明日の朝一番で連絡入れる。軍務は最優先事項になってるから、ドントマインよ」
「え、これって仕事なの?」
「休暇も大事な任務よ。しっかりホグシておかなきゃ、いざって時に力を発揮できないでしょ! ガハハハ!」
高笑いしながら宣言するみなみ大尉の圧に呑み込まれていくマリアであった。




