表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/53

018『草葉の陰から感謝したのだった』


まりあ戦記・018

『草葉の陰から感謝したのだった』    







 みなみ大尉は、ここのところ帰ってこない。



 ハロウィンの日におこなった演習の結果が思わしくなかったので、泊まり込みでウズメの調整にあたっているのだ。

 その間の生活はアンドロイドのマリアが仕切っている。


――やっぱ、マリアが居てくれて正解ね――


 思ってはいるが、本人を目の前にして言えるほど素直ではないまりあではある。

 素直ではないが、全てをマリアに任せて胡座をかけるほど人でなしでもない。

「まりあって、お風呂掃除の名人だよね……」

 洗濯物を畳みながら、少し大きめの声でマリアが呟く。マリアもまりあの影武者らしく、素直に人のことは誉めないが、思わず呟いたぐらいの感じで言っておけばオリジナルは喜ぶことを承知している。

「はい、タオルのストック」

 畳み終わったタオルをまりあに示した。

「ありがと、もらうわ」

 ちょうどバスタブの掃除を終え、濡れた手足を拭きながら、まりあは返事をする。

「あれ……青いタオルなかったっけ?」

「青? 青いのってあったっけ?」

「えと、ちょっと色あせてるんだけど」

「あ、ひょっとして水色の?」

「あ、うん」

「古ぼけてるから、雑巾にでもしようと思って……」

「ダメよ、雑巾になんかしちゃあ!」

「え、そなの?」


 青いのは、俺が使っていたタオル……厳密には使おうと出しておいたタオル。

 出したその日に死んじまったから、一度も使っていない。それをまりあは使っていたのだ。

 口に出しては言わないけど、俺のことを少しは思っていてくれているようなのだ。


「どのくらい使えば、こんなふうにくたびれるんだろうね」

 雑巾になり損ねたタオルを、マリアはしみじみと見る。

「そりゃあ、もう二年もたてば……あ、お兄ちゃん、三回忌になるんだ」


 まりあが思い出し、その表情を見て、マリアの目が優しくなった。


「浄土真宗のお寺は二軒あるけど……」

 パソコンの画面をスクロールしながらマリアが呟く。

「えと、近い方のお寺」

「じゃ、専光寺の方だ」

 マリアは、直ぐに地図をプリントアウトし始めた。

「御挨拶に、なにか持っていったほうがいいかなあ……」

「なんなら、あたしが行ってこようか。まりあ、この二日ほどは時間とれないでしょ?」

「いい、あたしが自分で行く」


 俺は、マリアの気配りに草葉の陰から感謝したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ