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017『ヨミ出現公式』


まりあ戦記・017

『ヨミ出現公式』     






 風が吹けば桶屋が儲かる……という言い回しがある。


 風が吹く⇒砂ぼこりがたつ⇒砂ぼこりが目に入って視力を失う人が増える⇒門付かどづけをする盲人が増える⇒門付が使う三味線が良く売れる⇒三味線に使う猫の皮が足りなくなる⇒乱獲されて猫の数が減る⇒天敵である猫が減ると鼠が増える⇒鼠に齧られて桶がダメになる⇒桶の需要が高まり桶屋が儲かる。


 一見するとなんの関係もなさそうなものが次から次へと影響が及んで、とんでもない結果になる。という意味である。


 これにヒントを得たのか偶然か、ヨミが出現して人類に壊滅的な打撃を与え続けることの原因は太陽風にある……と学校では教える。

 

「う~……憶えられない!」


 妙子が音をあげ、友子も机に突っ伏してしまい、観音かのんは涼しい顔をしている。

 ちなみに、妙子は佐藤妙子、友子は鈴木友子、観音は釈迦堂観音の三人で、まりあが転校してきて仲良くなった友だちである。

 先週、渋谷2のハローウィンで一層仲が良くなったので、まりあも三人のことを名前で呼ぶようになったのだ。

「小学校の頃はさ、もっと簡単だったじゃん」

 妙子が、サラサラとノートに書いた。


 太陽風の異常⇒地球磁場の異常⇒地磁気の異常⇒ヨミの出現


「これだけだったんだよ」

「抜けてるわよ」

 友子が『四次元空間の歪』を『ヨミの出現』の前に付け加えた。

「あ、そうだった」

 妙子たちは放課後の教室に残って『ヨミ出現公式』を覚える勉強をしている。

 小中学校では、たった五段階の公式なのだが、高校になると48段階にもなる。これを暗記しないと二学期の社会の単位が取れない。

 円周率を3・14の下二桁ではなくて下108桁まで覚えろと言う以上に難しくナンセンスでもある。

「カノンはさ、どうしてサラッと憶えられたのさ?」

 妙子がシャーペンをクルクル回しながらプータレる。

「お経を覚える要領よ」

「ああ」

「カノンちお寺だもんね」

「そゆこと……まりあ遅いね」


「ごめん、遅くなって」


 ぴったりのタイミングでマリアが戻って来た。



「あら、手ぶら?」

「わたしの前で雪見大福売り切れちゃった」

「「「あーーーー」」」

 三人のため息が揃う。

「みんな考えることはいっしょなんだね」

 第二首都高では『暗記ものには雪見大福』というローカルな伝説があり、テスト前などには食堂は仕入れの量を増やすのだが、今年は追いつかなかったようだ。

「一つファクトが増えるだけで、こんなに違うんだね」

 友子が呆れるには理由がある。ヨミの出現公式は半年に一つぐらいの割でファクトが増えるのだ。研究が進んでいるというのが理由だが、覚える高校生はたまらない。

「ね、もう帰ろうよ。テストなら直前までカンペ置いといて、エイヤって分かるところまで書けばいいわよ。他の生徒だって同じか、それ以下。全員を落第にするわけにもいかないだろうしさ、平均点取れればいいじゃん」

「お、開き直り!?」

「それよりも、雪見大福クリーミースイートポテト食べにいこっ!」

「え、それってなに!?」

「新製品、先月の末に発売されたの。学校の食堂じゃ、まだ売ってないんだよ、ほら、これ」



 マリアはスマホの画面をみんなに見せた。


「「「おーー、食べたい!!」」」


 瞬間に決まって、四人は昇降口を目指して駆けだした。


 『ヨミ出現公式』は、どこかへ吹っ飛んでしまった。


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