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110『帰還』

まりあ戦記・110


『帰還』





 陸軍特務旅団のベースは首都の南にある。


 それは二十年前のヨミのファーストアクトで出来た巨大なクレーターの中に潜むように存在している。


 クレーターの直径は三キロほどもあり、所狭しと対空兵器が並んでいる。中央にはベースのコアに通じる入り口があり、入り口はカメラの絞りのような構造になっていて、出入りするものに合わせて変化する。


 その絞りを全開にした入り口を、大型のオスプレイが三機同時に下りていく。隔壁三つ分降りたところがハンガーだ。上空には着陸の順番を待っている大型のオスプレイがホバリングして順番を待ってやがる。西の空には、もう二つオスプレイの編隊が接近しつつあって、俺たちが割り込む余裕がねえ。


 ベースは、カルデラ全体にシールドをかけて、オスプレーが進入する間だけシールドを解除。オスプレーがシールドの範囲に収まった時、再びシールドを張って、それからシャッターを開ける。つまり、どんな状態でもベースの防御がゼロになる時間を作らないようにしている。ポンジーはじめアメリカのベースが壊滅寸前までいった轍を踏まないように慎重になってやがる。


 でも、その分、出入りは窮屈で、アメリカから帰ってきたばかりのウズメ02はなかなか入れてもらえねえ。


『悪いけど、そのまま家まで飛んで、明日の朝までは余裕ないから。ここからは命令、可及的速やかに家に戻り、ウズメ02に載せられる以外の物品は廃棄して、1030までに司令室に出頭……分かったら復唱!』


「はい。可及的速やかに家に戻り、ウズメ02に載せられる以外の荷物は廃棄して、1030までに司令室に出頭」


『よし! アメリカが済んだ分、こんどは日本だからね。しっかり頑張んな! 以上!』


「ラジャー」


 みなみ少佐の命令に中原少尉が短く応えて、まりあたちは日本のリアルに戻っていく。日本の特務旅団は、アメリカの状況を見て対策を練りやがった。


 カルデラを閉鎖して、前にも増した防御工事を進めてやがる。ベースへの出入りは正規のシャッターだけに限り、工事機材は軍のオスプレーだけに限るという徹底ぶりだ。シールドもガチガチで、オスプレーが侵入するわずかの時間、オスプレーの図体に合わせた分しか開けやがらねえ。ガチガチコチコチの臨戦態勢、いや、その準備態勢。



『あんたも腹くくりなさいよね』



 ケテイがジト目で俺を見やがる。


 まりあの鞄の中だから身を寄せることもできねえ、仕方がねえから、返事をしてやる。


「分かってるよ、俺が成仏できてねえのはこのためだったんだろうしな……」


 正直、ショックでもある。最後の最後は、ウズメ02も消えちまってオレ一人、実体なんかねえホトケさんなのに、赤毛のアンそっくりのゴッドと立ち向かうハメになっちまった。わけわかんねえけど、そういうことなんだ。とにかく、なんとか勝ったんだからな。


『そうよ、あんたが成仏しなかったのはそういう役割があったからよ』


「ええと、ということは、訳も分からないまま俺の横に居るケティも、この次くらいには俺の代わりに戦ってくれるっちゅうわけか?」


『ウ……そういうわけじゃないけど、叱咤激励ぐらいはしてあげるわよ。有難く思いなさい』


「え、なにもしねえのに居るわけ?」


『もう、そういうのは深く考えないで、これからもまりあたちのことをサポートしてあげなさい』


「ああ、気は進まねえけど」


『今度は七回忌ね』


「え?」


『晋三の力が芽生えたのは三回忌に意味があったと思うのよ、だから、七回忌、きっとグレードアップするにちがいないわ!』


「え、あ、そういうのは勘弁してくれる。基本的にホトケさんてのは草葉の陰から祈ってるもんだし」


『なに言ってんのよ——俺が成仏できてねえのはこのためだったんだろうしな——ってゆったばかりじゃない!』


「いや、それはそうなんだがな」


『うだうだ言ってないで、覚悟きめなさい、覚悟!』


「いそうろうのおまえに言われたかねえぞ……て?」


『あ?』


 気が付くと、俺とケティはベースの上空に置いてけぼりで、ウズメ02はカルデラの外輪部にさしかかってやがる!


『「おーーーい、待てえ!」』


 慌てて追いついて、ウズメ02のコアの中、まりあの通学鞄に収まった。



 

 まりあ戦記(神々の妄想) 第一期  完




 ☆彡 主な登場人物


・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実

・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット

・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父

・高安みなみ     特務旅団少佐

・中原光子中尉    みなみ大尉の副官

・金剛武特務中佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官

・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)

・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年

・徳川曹長      みなみの世話係

・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん

・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)

・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体

・岡田 時蔵     時子の祖父(080で死亡)

・ケティちゃん    晋三といっしょにしまい込まれているマスコット

・メグリ先生(?)  晋三が小一の時の担任

・米国特務旅団    どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐

・アンにそっくりな神 セントローレンス湾の前哨戦で兆しがあって、108回で顕現

 

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