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心の中

 ハヤトは食事を終え夜風にあたっていた。


「本当に良かったの?」


 振り向くとパティが立っていた。

 小柄な彼女は少しぶかぶかな家着の襟元を直しながら心配そうに聞いてくる。


「なにが?」


 質問の意図を薄々は気づいていたがあえて聞き返した。


「あたし達のパーティーに入ったことよ。ゴブリンすらまともに倒せないチームなのよ?」

「そんなことを言うくらいなら俺の噂も知っているだろ?」

「もちろん知っているわ。『不死身の騎士』……でしょ?」

「もう一つの異名は?」

「……鋼の彫像」


 パティは言いにくそうに答える。


「そう。俺は絶対死なないけど敵を倒すこともできないんだ」

「それでも……いずれはあなたの力を評価してくれるパーティーは現れるはずよ。だって絶対死なない人なんてこの世の中に二人といないもの。実際にあなたがいたおかげで今回の冒険ではゴブリン三匹を倒すことができたわ」


 彼女の口ぶりでは今回の戦いすら大戦果のようだ。


「それは君たちが頑張ったからじゃないか?」


 ハヤトは自分が大して役に立ってない事を知っていた。

 せいぜい、ゴブリンの攻撃を多く受け止めたくらいだ。


「ううん、私達じゃダメ。私達の力じゃ冒険を続けることなんて無理だよ」

「そうかな? 俺は君が思ってる以上に君たちは強いんじゃないかと思ってるんだ」


 彼女は振り向くと庭先で談笑しているアレクを指さす。


「突撃ばかりでダメージを受けまくるファイター」

「率先して行動する行動力と傷つくことを恐れない勇敢さがある。それにゴブリンにダメージを与えてたのは彼だけだ」


 ハヤトの回答にハッとした顔を見せる。

 今度はアレクと話しているリーフを指さす。


「非力で避けてばかりのシーフ」

「機転が利いてあの乱戦でダメージを受けない素早さがある。それにゴブリンの隠していた宝箱の罠を難なく解除する器用さもある」

 

 今度は少しムッとした顔になる。

 ムキになって二人の会話をニコニコと聞いているラケシスを指さす。


「回復しかできない臆病なプリースト」

「あれだけ無茶な戦い方をしているアレクを死なさない様に丁寧に回復していた。それに夕食とか洗濯とか生活の面でも彼女に随分と助けられてるように見える」


 心配そうな表情でおそるおそる自分を指さす。


「当たらない魔法を使う役立たずなメイジ」

「魔法の威力はかなりのものだと思う。当てることができればゴブリンなんて簡単に倒せるよ。それに一番パーティーのことを考えているし頭も良さそう」


 安心したような嬉しいような微妙な表情をする。


「でも結局、今の様な戦い方ならまともな冒険者とは言えないわ」

「自分で言っているじゃないか『今の戦い方なら』って、つまり少し戦い方を変えればゴブリンなんて問題なく倒せるよ」


 ハヤトは安心させるようににこやかな笑顔をパティに向ける。

 内心はうまく行くかどうか心配しながらだったが。


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