初勝利
「今回は楽に勝てたね。ハヤトのおかげだよ」
いやいやいやいや。
こんなグダグダな戦いが楽っていつもどうやってるんだよ。
ハヤトは口から出そうになる言葉をすんでの所で飲み込んだ。
「でも、もうヘトヘトだよ。戦利品集めたらすぐに帰ろう」
リーフは早々にゴブリンの装備や持ち物を集めると帰り支度を始めた。
『オーガを倒せたら一人前』
この世界の冒険者の間ではみんな知ってる言葉だ。
だが、このパーティーはゴブリンすらまともに倒せない。
熟練者としか組んだことがなかったハヤトはまともに戦えない人が自分以外にいることに驚いた。
しかもゴブリン三匹の成果では生活するのもままならないだろう。
全員ホームに帰ってきた。
ハヤトは一緒について来てまたも驚いた。
彼らが住んでいたのはギルドで無料で貸し出されてるボロい家だったからだ。
普通なら旅のちょっとした休憩やどうしても金がないときに一時的に使われるものだ。
ここをホームにしているパーティーなんて彼らくらいだろう。
しかし、ハヤトも金がなかった。
「俺もここに住んでいいかな?」
「え? もちろんいいけど自分で言うのもアレだけど、ほんとにここでいいのかい?」
リーフは心底心配そうな顔をして尋ねる。ラケシスも心配そうに聞いてきた。
「そうよ。あなたにはもっといい家があるでしょ?」
「いや、いいんだ。せっかくパーティーになるんだし、できるだけ早く馴染みたいから」
半分は金がないせいだったが、半分は本当だった。
あまりにもひどいパーティーを目の前にして、自分が役に立つかもしれないと、初めて思うことができたからだ。
「本当かよ! 本格的にパーティーに入ってくれるのか?」
アレクは本当に嬉しそうにハヤトの手を両手に握るとブンブンと大きく振り回した。
「ありがとう」
ラケシスは無垢な笑顔をハヤトに向けた。