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64話 防戦

 魔族化したグレムリンクイーンに挑む俺とリゼルヴァ。

 そのころドクンちゃんはグレムリンロードをスケルトン化していた。

 クイーンの死角からグレムリンロードを仕掛け、一気に優勢に持ち込んでやる。


「ナイス! そのまま羽交い絞めにしろ!」


「オッケー」


 クイーンの背後から接近したスケルトン・グレムリンロード。

 骨化して随分スリムになったがパワーは折り紙つきだ。

 ドクンちゃんの支配下にあるため、ドクンちゃん経由で指示を出す。


「ガァ!?」


 まんまと不意をつかれ、魔族化クイーンは後ろから拘束された。

 無防備な腹――複乳が激しく……グロテスクに揺れ、気分が悪くなる。


 このまま『コープスボム』でスケルトン・グレムリンロードを爆破するのが手っ取り早い。

 が、俺の悪い癖が出た。


 クイーンがもつ、アイテムを模造する能力。

 それを備えたスケルトンが是非とも欲しい……!


 そのためには『コープスボム』の使用は避けたい。

 スケルトン化できないほど死体を壊す恐れがあるからだ。


「リゼルヴァ、とどめ頼む」


「わかった」


 リゼルヴァの得物は魔族に特効をもつ『退魔のハルバード』。

 爆死させるより状態よく始末してくれるだろう。

 

 俺は『ブラインド』対策の援護だ。

 胴体収納から『双唱の指輪』を取り出し装着。

 これで魔法を同時に打てる。

 つまり俺の攻撃を打ち消さなければ、クイーンは『ブラインド』を撃てない。


「”シャドースピア”!」


 リゼルヴァのダッシュに合わせて闇魔法を打ち込む。

 予想通り黒い槍は空中で打ち消された。

 が、二本のうち一本だけそのまま突き進んでいく。


「一本しか打ち消さないだと」 


 なぜ片方だけ残した?

 疑問はすぐに明らかになる。


「マスター! スケルトンが!」


 ドクンちゃんの悲鳴。

 見ればクイーンに組みつくスケルトンが崩れていくではないか。

 屈強な大型スケルトンが、ただの骨の集まりへ戻ってしまう。

 もはや拘束力はない。

 クイーンは己にまとわりつく骨を荒々しく振り払った。

 

「まずい、”コープスボム”!」


<<エラー:対象の状態が不適切>>


「くそっ……!」


 あちこちに散らばってしまったロードの白骨体は、”コープスボム”の弾にはならない。

 対象の死体は、ある程度原形をとどめる必要があるのだ。


 唐突に解除されたスケルトン。

 一方的にクイーンを拘束していた以上、ダメージによる崩壊とは考えにくい。

 なら何故だ?


「まさか」


 気づいた。

 クイーンの頭部、巨大な一つ目がこちらを向いていない。

 俺からは黒い粘液部分しか見えないのだ。

 ということは、奴は背後――スケルトンのほうを向いているということ。


「”アンチスペル”で”クリエイトスケルトン”を打ち消した……?」


 打ち消せるのは射出するタイプの魔法だけじゃないのか。

 ”アイシクルスケイル”を打ち消したのだから不思議じゃない。

 が、”依然としてスーサイド”は打ち消されていない。

 

 打ち消される魔法、打ち消されない魔法。

 違いはなんだ?

 

 ……そうか。


()えるかどうか」


 目玉のもつ『アンチスペル』、その発動条件は『対象の魔法を視認すること』。

 ”スーサイド”は視認できるタイプの魔法じゃないから打ち消せなかった。


 双唱の指輪により同時に放たれた『シャドースピア』。

 クイーンの脚の目玉はシャドースピアを注視していたから、ひとつを打ち消せた。

 が、頭部の目玉はスケルトンを見ていたから、ひとつは打ち消せなかった。

 代わりにスケルトンを打ち消した――そういうことか。


 魔族化オーガよりも厄介だな。

 目玉が二つ生えている分、強力な魔族化が施されているわけだ。


 などと考えているうちにも戦況は動く。


「オオオオ!」


 不測の事態でもリゼルヴァの勢いは落ちない。

 ナイス判断だ。

 クイーンの防御態勢は間に合わない。

 

 模造品じゃない『退魔のハルバード』。

 その一閃がクイーンの腹を引き裂いた。

 黒い眼玉のどこからか怒声がする。


「ギエアアアアアッ!」


「浅い!」


 クイーンは辛うじて下がりダメージを抑えた。

 とはいえ聖属性によって傷つけられた腹部からは、内臓と黒い粘液がこぼれ出る。 

 すさまじい威力だ、同じく聖属性の特効を受ける身としてゾッとする……。


「”シャドースピア”!」


 フォローの遠距離攻撃……は打ち消されたが問題ない。

 クイーンは俺たちか距離をとると、これまた想定外の行動に出た。


「今度は何なんだよ」


 裂けた腹に自らの手を突っ込み己の体内を探り出したのだ。

 どす黒い血と内臓が溢れる陰惨な光景が広がる。

 狂気じみた様子に思わず手が止まる。


「うへぇ……」


 たじろぐ俺たちをよそに、クイーンは目的の何かを見つけたらしい。


 血と肉に塗れて引きずり出されたのは、更なる模造『退魔のハルバード』。

 口が無くなったから腹から模造品を出したってことかよ、そんな馬鹿な・


 これでクイーンは二本のハルバードを手にした。

 そして片手それぞれに持つ……まさかのハルバード二刀流。

 本気で振り回すつもりか?


「まさに怪物だな」


 リゼルヴァの感想に同意する。

 その傍ら、俺は素早く共有スキルを操作。

 『死霊術Lv3』から『氷魔法Lv1』へ。


「ドクンちゃん、作戦変更」


「オッケー」


 スケルトンが使えない以上、正面からねじ伏せるしかない。

 模造品とはいえ両手に退魔のハルバード……デタラメな相手だが、不思議と気持ちが(たかぶ)る。

 闘争本能というやつだろうか。


 自分の力が通じるのか試したい。

 戦って勝ちたい。

 殺したい。


 胸中の高鳴りと反比例するように、頭の芯が冷えていく。


「上等だぜ、ブチ殺す!」


「その意気だフジミ!」


 リゼルヴァと同時に斬りかかる。

 暴風のような刃をかい潜り、受け流しながら魔法を、あるいは斬撃を差し込んでいく。


 攻撃の余波を受けて周囲のグレムリン像が砕け散っていく。

 舞い散る石片の中、物理と魔法の攻防が激化する。


 途中、相手が『シャドーブラスト』を使ってきた。

 ダメージをMPにも与える闇魔法だ。

 なんとか避けたが、これで判明した。

 やはりクイーンは闇魔法スキルを持っていたようだ。


 『ブラインド』対策としてドクンちゃんが援護射撃を適宜打ち込む。

 逆にこちらから『ブラインド』をかけてみたが効果はなかった。

 おそらく二つの目玉がそれぞれ独立して動いているため、片方にブラインドをかけても視界が封じきれないのだ。


 クイーンは巨体とハルバードのリーチを活かし、俺たちをなかなか近づけない。

 奴が後ずさりするたびに腹からこぼれた血と臓物が地面を濡らした。

 足をとられないよう注意する。


 長いこと攻防が続く。

 数で勝るものの、決め手に欠く俺たち。

 逆にMPが枯渇すれば『ブラインド』を防げなくなり窮地に立たされるだろう。

 

「一気に決めないとマズイな……くっ」


 重い一撃を盾で流す。

 MPもヤバイが左腕もそろそろ怪しい。

 攻撃の受けすぎて間接にガタが来ている。


 リゼルヴァも弱音こそ吐かないが限界が近づいているのか、息が荒い。


 俺の瞬間凍結技、『フロストバイト』が入れば形勢逆転できるだろう。

 しかし絶大な威力を誇る技だが射程が非常に短いという欠点がある。


 クイーンに触れるためには、あと四歩は踏み込まねばならない。

 二振りのハルバードを前にして、あまりにも遠すぎる。


 ……いや、アレ狙いならあるいは。

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