61話 新技と新技と
「これがパリィよ!」
今回は新技目白押しだ。
接近戦の高等テクニックだが、村でみっちり練習した成果が出た。
円盾の曲面を刃にぶつけ、斬撃の軌道を反らす。
すると相手は雑な攻撃の対価に無防備な姿をさらすことになる。
「アイスブランド! からの!」
一気に踏み込むと弛んだ腹を斬り上げる。
鮮血がほとばしり、断面から黄色い脂肪がのぞいた。
「グオオオオ!」
まだだ。
アイスブランドの魔力で傷口が凍りきる前に追撃する。
左の爪を瞬時に伸ばす。
カッターのようなそれにはマヒ毒液が滴っている。
「爪攻撃! 二連!」
「グォ!?」
左手を振り上げると五本の爪が新たな創傷を腹に刻む。
そのまま横に払ってさらに追撃。
剣に比べて爪の傷は浅い。
が、それでいい。
「まだよマスター!」
ドクンちゃんが教えてくれたように、まだマヒ状態にできていないらしい。
ならばブラインドが解ける前にもう一発ぶち込んでやる。
「秘密道具その2!」
鎧の隙間から包帯が伸び、アイスブランドをつかむ。
そして自由になった両の手で貫手を作る。
さながら拳法の達人のよう。
「必殺マヒドリル!」
そのまま全力で腹へと突き刺す!
爪だけではなく、第一関節まで埋まるように。
こうすることでギミックが働く。
ガントレットの指先には少しだけ空洞が作られている。
これは液だまりだ。
俺の指に集まる液とはもちろんマヒ毒。
これを相手の体内に直にブチ込むための仕掛けなのだ。
「ガ……ァ……!」
ロードが白目をむいて痙攣をはじめた。
『マヒ毒強化』スキルに加えて、大量のマヒ毒液攻撃。
爆発力を高めるべく考案したギミックが見事にハマった。
ありがとうギリム、いい仕事するね。
「やったわマスター!」
ちなみにドクンちゃんは第二の『ブラインド』を打ち込むべく待ち構えていた。
このギミックは隙が大きいからフォローも考えてのことだ。
マヒ状態がいつまで続くかも分からないので、さっさと戦闘力を奪わなければ。
手を引き抜いてアイスブランドを両手持ち。
そして渾身の力で振り下ろした。
「オラァ!」
「!??」
一閃。
通常なら絶対に当たらない超大振りの上段切り。
しかしロードに抵抗手段はない。
肉を切り裂く感覚にアンデッドの本能が震える。
一瞬のち、血と臓物を噴き上げながらロードは茫然と俺を見る。
「相手を見誤ったな」
うつぶせに倒れてこないよう、思いっきり蹴りを入れておく。
こうすることで次の処理が楽になるはずだ。
「やったー! こっち片付いたよリゼルヴァちゃーん!」
「意外とてこずったな」
「鮮やかなお手並みだろうが。ドクンちゃんや、まだ一仕事あるのよ」
重々しい音とともに、ロードの巨体が仰向けに倒れた。
血に近づきたくないのかホルンは遠目から見ている。
それでいい。
ここからアレが残っている。
腹から流れ出す赤い血に、徐々に黒い液体が混じりだす。
タールのように黒い血ではない。
――グレムリンロードに巣くう魔族の欠片だ。
断面をかさぶたのように覆った黒い粘液。
その中央が縦に裂け、充血した目玉があらわ――
「セイッ!」
容赦なくアイスブランドを突き立てる。
「セイッ! セイッ! セイッ!」
念入りに何度も何度も刺しては貫く。
目玉が恨みがましく俺をにらむが関係ない。
徹底的に刺しまくる。
「こんなもんか……と見せかけてセイッ!」
「うわ……」
ひくなやドクンちゃん。
非道だろうが、これが勝負というもの。
やがて瞳孔から光が消えると、魔族の巨大目玉は霧散した。
あとにはロードの惨殺死体だけが残る。
魔族化、攻略したり。
「そりゃ出るのが分かってたら速攻刺すでしょうよ」
「血も涙もないな」
ホルンさん、そうは言いますが命がけですからね。
ヒーローの変身を待ってあげる悪役じゃないのよ俺は。
「グメェェェェェ!!」
番の死を前にしてクイーンが吠え猛る。
打ち合っていたリゼルヴァを捨て置いてズシズシ走ってきやがった。
普通のグレムリンが石にされても平常心なのに今度は流石に怒るのね。




