表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/159

59話 王と女王

 陽動&包囲&石化ブレス作戦によってグレムリンたちを殲滅した。

 次はリザードマン一族の宝を探すぞ、という段にきて異変が。

 広場中央の石畳み、その一部がおもむろにスライドしたのだ。

 そして中から現れたのは……。


「でっけぇ!」


「なんだコイツは……」


 口を開けた石畳、そこには地下へ続く階段があった。

 階段を上って現れたのは、身の丈2メートルはある巨体にして肥満体のモンスター。


 頭頂部にはリザードマンに似たヒレをもっている。

 顔や各部位の特徴はグレムリンに酷似していることから奴らの近縁種だろう。

 地上に出ると、濁った眼で俺たちを睥睨した。

 その手には装飾の凝った杖が握られている。

 ヒレの形といい、体格といいさながら王を思わせるシルエットだ。


「見たところリーダー格だな」


 じりじりと距離をとる俺たち。

 相手の手の内は見えないが、少なくとも杖には魔法が込めらている可能性大だ。

 

 ……どう攻める?

 考えていると、巨体のモンスターは開いたままの地下扉へ手を差し入れた。

 まるで何かを取り出すのかのように。


 てっきりもう一本杖が出てくるんだと思った、が予想は外れた。

 現れたのは同じく巨体のモンスター。

 新手をエスコートするかのように、地上のモンスターが手を握って先導したのだ。 


 第二の巨体グレムリン。

 先の王様風と大体の特徴は一緒だ――でかく、太い。


 異なる部位はいくつかある。

 まず目を引くのが頭髪。

 グレムリンのぼこぼこして汚い肌に不釣り合いな、鮮やかなブロンドの長髪だ。

 過剰なまでに反り返ったまつげ。

 胸やけするほど赤く、てらてら濡れ光る唇。

 最後に、一つが俺の頭くらいもある巨大な乳房……これが四つ生えている。


(すげぇ汚い乳牛ってかんじだな)


 おぞましい雌型グレムリンは地上に出ると、エスコートしていた王様風の大型グレムリンに口づけを始める。

 それはもう、熱く熱く。

 敵前にしていちゃつくとは……俺たちなど、どうにでもできるという余裕を感じさせた。

 むしろ精神にダメージを与えられた気がする。

 

 断じていうが嫉妬ではない。それだけははっきりしている。


「うへぇ……マスターが考えた美女グレムリンまんまじゃーん」


「ここまで醜悪じゃねぇわ。にしてもこの状況で、どういう神経してるんだコイツら」


 さっきまでの作戦で囮に使った偽グレムリン美女。

 あれも酷かったが、ここまで酷くはない。

 

<<Lv63 種族:妖精 種別:グレムリンロード>>


<<Lv64 種族:妖精 種別:グレムリンクイーン>>


 鑑定結果は案の定、グレムリンのリーダー的でアタリだったようだ。

 口づけを終えた二匹は俺たちをねめ回す。

 その表情は眠たげというか無表情というか、少なくとも怒っているようには見えない。

 自分たちの群れが石像と化していることに気づいているはずだが、全くの無反応とは。


「フジミ、どう出る?」


 リゼルヴァが『退魔のハルバード』を構えながら尋ねた。

 そういえば『竜の黒卵?』は茂みに置いてきたようだ。


「見た感じ鱗はないから、俺の爪でマヒが狙えるだろう。オスをマヒさせて、残ったほうを集中砲火で倒そう」


「了解」


「オッケー」


 まずは様子見として俺が先鋒を務める。

 それがお決まりの流れになっていた、が……。


「まず私が行こう。フジミは鎧を着て遅くなったし、まだ慣れていないだろう」


「なるほど、じゃあ頼むわ」


 そうだった。

 ギリムにチューンしてもらった全身鎧を着てから、あまり戦闘経験は積んでいないのだ。

 村で多少練習試合はしたが正直動きに慣れていない部分はある。

 今までの軽装と違って危機に陥った時の離脱力が下がった以上、気楽に先鋒を務めるわけにはいかないか。


 ドクンちゃんとホルンがクイーンをひきつけ、俺は俯瞰して魔法でサポートする布陣でいく。

 見たところ相手は肉弾戦タイプ、杖にだけ気をつければ単純な戦いになるかもしれない。


「よし行――」


「オゴッ、ゲエエエエエ!」


 飛びかかろうとした瞬間、突然クイーンが苦しみだし嘔吐した。

 なぜかドクンちゃんが悔し気に言う。


「ゲロはアタシの持ちネタなのに!」


「そのジャンルで張り合うのはやめろ」


 ドクンちゃんの毒液と違って、俺たちに吐きかけてはこなかった。

 地面に吐いたことから攻撃じゃないことは分かったが、問題はその中身だ。

 重い音を立ててぶちまけられた汚物。

 粘膜に包まれて横たわるのは二振りの武器――長剣と斧槍だ。


<<死のアイスブランド? アイテム レアリティ:レア?>>


<<退魔のハルバード? アイテム レアリティ:レア?>>


「えぇぇ……きったねぇ」


「どういうことだ……」


 それは俺とリゼルヴァの愛用品にあまりにも酷似していた。

 見た目はほとんど一緒に見える。

 性能まで一緒なら少々厄介だが、逆にメリットもあるな。


 グレムリンロードは剣を、クイーンはハルバードを構え、悠然と俺たちに向き合った。

 デブ二人のくせに妙にサマになっていやがる。

 

「なんか汚いくせに息ぴったりって感じで腹立つな」


「見た目に惑わされるな不死者」


「ホルンがそれ言う?」


 ともかく第二回戦の幕が切って落とされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ