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52話 それはそれで面倒な正体

 正体不明の巨大モンスター。

 双頭の攻撃を華麗に走りぬけた俺とホルン。

 死線を切りぬけたことで二人の間に友情が芽生えた。

 が、生き延びた喜びに気を取られ、眼前の壁に激突するのであった。


「メガネメガ――違った、あたまあたま」


 激突した衝撃で、俺の頭は吹っ飛んだ。

 人間だったら首が胴体にめりこんでいたかもしれない。

 地面に転がる俺(首)は、体を遠隔操作して頭を探しているのだが……。


「俺どこー!」


 頭が茂みに入ってしまったため、体を操ろうにも見えないのである。

 早いところ復帰しなければ次の攻撃を防ぎようがない。


 それにホルンも心配だ。

 激突してから動いた様子がない。

 気を失っているだけならいいけど、まさか頭を強く打って死亡なんてしてないよな……?


『ギギギ、ガ』


 と、軋むような音がした。

 謎のモンスターの鳴き声だ。

 まずい! そこまで敵の首が降りてきたのか!? 


「ややっ、なぜユニコーンが! こりゃ大変じゃ!!」


 しかし俺の予想は外れたらしい。

 続いて聞こえてきたのは、しゃがれた声だ。

 こんなおっさんは俺のパーティーにはいない。


 いったい誰だ? どこから現れた?


「なんじゃこのアンデッド! ワシの作品をへこませおって! くたばれ! オリャ!」


「ちょちょちょ何事!?」


 打撃音。

 そしてじわじわ減る俺のHP。

 俺は謎のおっさんから攻撃を受けているらしい。

 

 大した攻撃力じゃないけど、雷と激突で減ったHPには辛い。

 逃げたくとも状況が見えないからどうしようもない。

 とりあえず敵意がないことを示すべく、体には両手を上げさせた。


「うわ、なんじゃ急に気持ち悪っ! ボディがガラ空きじゃ! オラッ!」


「やめてやめて! やめ――やめろや!」


 削られるHP。

 容赦のない一撃がみぞおちに叩きこまれた。

 無抵抗の首なしアンデッドをサンドバックにするな!


「おいフジミ、ホルン無事か!? ……なんだこの状況は」


 脱力したようなリゼルヴァの声。

 謎のおっさんに殴られ続ける、首のないドラウグル。

 なかなかシュールな光景だろう。


「今度はリザードマンが現れおった、腹立つツラじゃのぅ」


「助けてリゼルヴァ! 好戦的なおっさんがいじめる!」


 その後、リゼルヴァがおっさんをなだめ、俺はようやく体を取り戻した。

 頭がとれたのはシルバーゴーレムの爆発に巻き込まれて以来だ、懐かしい。


 さて、ようやく認識できた状況は何だかよくわからないものだった。

 まず上空に巨大モンスターの頭が見えない。

 どこかへ行ったのか?


 次にホルン。

 こいつは案の定、ぶつかった衝撃で気絶していた。

 和解してそうそう死なれては寝覚めが悪い。

 リゼルヴァがもってきた、リザードマン製回復ポーションを飲ませて安静にさせている。

 

 で、謎のおっさん。

 人間の言葉を話すから期待していたのだが、人じゃなかった。

 似ているけど、鑑定結果によると……。


<<Lv40 種族:妖精 種別:ドワーフ>>

 

「ワシはギリムじゃ、殴るぞ」


「なんで?」


 とにかく口が悪い。


 ドワーフ。

 エルフに並んで有名な、ファンタジー世界の住人だ。

 

 身長は子供くらいだが、手は不釣り合いなほど大きい。

 体格はがっちりしていて筋肉もある。

 デフォルメしたトロールとでも言おうか。

 固そうな茶髪、ゆたかな髭。

 だんごっ鼻に(しわ)の刻まれた厳かな顔立ち。


 性格は頑固や職人気質とされることが多い。

 手先が器用で鍛冶の腕前は随一とも。


 ちなみに女性のドワーフが人間基準で可愛いかどうかは、作品による。

 下手するとヒゲがもっさもっさ生えていたりするのだ。

 この世界は可愛いといいなぁ、と切に願う。 

 

「想像した通りのドワーフだな、ちょっと感動」


 この調子でぜひエルフとも出会いたいものだ。

 

「エルフじゃなくて残念だったわね……」


「おっドクンちゃん、目が覚めたか」


「心臓止まったわよ……」


 ドクンちゃんが胴からはい出てきた。

 『自然回復Lv3』を『統率者』スキルでシェアしたおかげで、いくらか回復したみたいだ。


「また妙なモンスターが出てきおった、殺すぞ」


「マスター、ドワーフがこんな性格だって知ってた?」


「それについてはガッカリしてる」


 ギリムと名乗るドワーフはやたらとケンカ腰だ。

 酒とタバコをカフェインを同時に切らした中毒者のように気が短い。


 ぶっちゃけ面倒くさいが色々聞かねばならない。

 主に謎のモンスターについてだ。

 あいつはどこへ行った?


「あれはワシの作品じゃ、間に合わせじゃがの」


「作品?」


 ギリムが合図をすると、茂みから例のモンスターが首をもたげた。

 長い首の根元はギリムの背後、岩のようなものに繋がっている。 

 よく見ると二本の足が岩から生えていてた。

 首と同じく、これも草葉や枝によって覆われている……あぁ、迷彩か。


 俺とホルンがぶつかったと思しき部分が見事にへこんでいる。

 断面を見るに木製モンスターのようだ。


<<Lv48 種族:魔法構築物 種別:ウッドゴーレム>>


「ウッドゴーレム?」


「そうじゃ、鑑定くらいはできるようじゃな首なし死体」


「ずいぶん変わった形だな、頭が二つあるなんて」


「あれは腕じゃ。ゴーレムが人型など発想が古いのう」


 古いの? 

 しかし、なるほど両腕が極端に長いデザインだったのか。 

 ビジュアル的にはカニに近いのかな?


 イライラドワーフは勝手に愚痴りだした。

 こいつ、さては話し相手に飢えてるな?


「あのふざけた勇者に魔法を使われたと思ったら、ワケのわからん場所に飛ばされておったんじゃ。酒もない、鉄もないところにの! 次にあったら顔の穴にケツをねじ込んでやるわい!」


「穴が逆な。にしてもまた勇者か。もしかして、あんたも無茶な要求されて断った口?」


 たしかリザードマンの皆さんは、助けられた見返りに一族の宝(の使い方)を要求されたんだったな。

 それを拒否したら村人全員アイテムボックスにぶちこまれたと。


 勇者のことだ、どうせロクもない理由でギリムも収納したんだろう。


「理由? 魔王を倒す剣を格安短期間で作れとか言いよったんじゃ。あとユニコーン用の(くら)も。おまけに材料はワシもち。アホじゃろ」


「それは酷い……」


 頭を抱える俺とリゼルヴァ。

 あいつマジでユニコーンを乗りこなす、というか見せびらかすつもりだったらしい。


 でもゴーレムが俺たちを攻撃する理由にはなってない。

 するとギリムはあっらかんと言い放った。


「ムシャクシャした。誰でもよかった。反省はしていない文句あるか」


「文句しかねえわ!」


「ねぇマスターこいつ殺っちゃおうよねぇ」


 ドワーフの血の味が楽しみだぜ……。

 殺気立った俺とドクンちゃんを制したのはリゼルヴァだった。


「後にしろ。 怪我人を治療するのが先だろう」


「そうじゃった! ユニコーンを助けねば! まさか角が折れてしまうとは」


 ユニコーンには優しいのね。

 でも角が折れてるのはゴーレムに頭突きしたからじゃないんだよ、言わないけど。

 ていうかなんでホルンを攻撃したんだよ。


「あのときはハイになってたからじゃ」


「救いようがねぇな、このおっさん」


「失礼な。ワシはまだ17歳じゃ」


 おいおい。

 かくしてドワーフとウッドゴーレムを加え、俺たちは村へ帰るのだった。

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