47話 肩慣らし
新たなるモンスター、ドラウグルへ進化した俺。
パッシブスキルで周囲を怖がらせまくることが判明した。
これのコントロールを会得し、次は体の試運転をすることに。
スケルトンオーガに相手を務めてもらおう。
<<Lv48 種族:アンデッド 種別:スケルトンオーガ>>
二体いるオニスケのうち一体。
生前戦った時は魔族化で手を焼かされたものだ。
今では村の警備として役立ってくれてるナイスガイである。
広場で準備運動をしていると、村人たちが見物に集まってきた。
モンスター同士の勝負はいい娯楽になるだろう。
「みんなワクワクしてるね、マスター」
「ショーの主役も悪くないな」
ただでさえ息の詰まりそうな環境だ。
楽しんで気分転換になるならそれもよかろう。
「準備はよろしいですかな」
「オッケーだぜ、みんな近寄りすぎないようにしてな」
族長が審判を務める。
オニスケは俺の指令で動くから、ぶっちゃけ審判はいらない。
しかし族長が声をかけて欲しそうにチラチラしていから、頼んでみたら喜ばれた。
イベントを仕切ることが楽しいのか、自慢したいのか……お茶目な爺さんトカゲである。
「……」
オニスケは生前に使っていた大斧をもたせている。
どうやってスケルトンを動かすか、これはいわゆる自動操縦だ。
『死霊術』のレベルが上がるにつれ、なめらかな立ち回りをするようになった。
とても意思なき人形とは思えない。
『統率』による強化も加わって、元のオーガより強いかもしれん。
「では、はじめ!」
族長の合図と同時、オニスケが斧を担いだ。
俺はその場で、ごく軽くジャンプしてみる。
……マミーのときより体が重いな。
「包帯の数も減ってやがる」
オニスケが跳躍し、その勢いのままに斧を振り下ろしてくる。
巨体に似合わぬ奇襲だ。
両足の包帯に意識を集中する……動かせる。
マミーのときは最大五本の包帯を操れた。
が、ドラウグルの場合は――
「二本か」
横へ大きく跳ぶ。
一拍遅れて大斧が地面に着弾。
すさまじい音とともに土が舞う。
同時に操れる包帯は二本になってしまったか。
跳躍力自体はあまり変わらないみたいだけど。
「シィエアアアアアアア」
歓声。
おいおい今のはそんなに凄くないよ。
これは俺というより、オニスケの迫力に興奮しちゃってる感じ?
たしかにデカいから見栄えするけどさ。
「”シャドースピア”! ”シャドーブラスト”!」
攻撃を外して隙だらけのオニスケへ魔法を打ち込んでみる。
黒の槍と球が炸裂し、オニスケが大きくよろめいた。
『統率』スキルでオニスケのHPを確認する。
ふむふむ、HPが予想より減っている。
威力が向上しているみたいだ。
何発か攻撃を避けて機敏性を確かめた。
次は耐久性だ。
「マスター殺れぇ! はよブチ殺せぇ!」
(俺の心臓、口悪いなぁ……)
ドクンちゃんのおっかない野次はさておき、新技その1を試してみよう。
次はパンチするようオニスケに指令を飛ばす。
俺の顔より巨大な拳が迫る……が、よけない。
防御の構えをとって詠唱。
「”アイシクルスケイル”」
えぇ、やりました。
念願の属性魔法を覚えた俺です。
進化すると勝手に増えてるスキルがあるけど、今回は『氷魔法Lv1』がそれに含まれていたのだ。
『アイシクルスケイル』は氷の守りを得る呪文らしい。
どうやら防御に使えるっぽいけど、具体的に何が起きるのか。
(おっ、氷の鎧ってところか)
魔法の発動とともに俺の全身を氷が覆った。
なるほど、物理ダメージを軽減できそうだ。
直後、巨大な骨の拳が直撃した。
ガラスが割れるような音とともに、氷の破片が舞い散る。
「マスターーーーーーー!」
「シャッ!?」
観客の動揺がどよめく。
大丈夫だよ、死なないから。
みんなオニスケは俺が操作してるって忘れてないかい?
全身筋肉のオーガ、その攻撃力は尋常じゃない。
マミーなら軽々吹っ飛ばされていただろう。
しかし俺は、その場に立っていた。
鬼の一撃を受けてなおドラウグルは倒れない。
HPが三割減ったが、少し後退しただけだ。
『アイシクルスケイル』込みでもかなりタフだ。
氷の鎧はほとんど吹き飛んでいた。
とはいえかけ直す手間もそれほどない。
この魔法は、アタリだ。
「シャーーーーッ!」
盛り上がる観客。
その後『生命吸収』を交えて耐久力の検証を終えると、最後の新技を試すことにする。
増えていたユニークスキルに、初のアクティブスキルがあったのだ。
常時効力を発揮するパッシブスキルと違い、アクティブスキルは任意のタイミングで発動する。
使いたいときだけ使うという意味では魔法に近いかもしれない。
「まず空振りを誘って……」
オニスケの攻撃をよけ、こん棒のような腕を掴む。
なんでかって?
例によってヘルプの説明がざっくりすぎたが、どうやら接近戦用のスキルらしいのだ。
カッと大きく口を開けて詠唱する。
たぶん口からスゴイのが出るはずだ。
「”フロストバイト”!」
瞬間、口からは何も出なかった……間抜けである。
俺は体が熱くなるのを感じた。
これは、もしや失敗したのでは……?
「いやあ、なんか暑くない? ねぇ皆さん」
恥ずかしさを紛らわせるために周囲を見渡す。
するとみんな一点を見つめて口を開けていた。
俺じゃなく、上のほうを見ている。
どうした、顎でも外れたか。
「ひょっとして俺なんかやっちゃいました……?」
「マスター、それ」
ドクンちゃんが指さすのは、しっかり二本足で立つオニスケだ。
俺のアクティブスキルが外れたせいで何のダメージも……
<<スケルトンオーガ: FREEZE (9997)>>
<<スケルトンオーガ: HP 1%>>
「なんじゃこれ」
そこには氷の彫像と化したオニスケがいた。
骨の表面が霜に覆われ、戦闘命令を解除していないにも関わらず微動だにしない。
まるで時が止まっているかのようだ。
「うぇ、うぇーい」
いきなり凍ってHP1%なんて冗談だろ?
ちょんとオニスケをつついた瞬間。
――ビシリ。
音を立てて亀裂が走り、氷の彫像は音を立てて崩れ去った。
<<スケルトンオーガ: HP 0%>>
「シャエエエエエエエエエエ!!!」
「オニスケごめんねえええええ!?」
わき立つ観客と焦る俺。
どうやらとんでもない大技を獲得してしまったようだ。




