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39話 マミーズミッション

 遺跡に乗り込んだ俺たちは拍子抜けしていた。

 罠こそ多少あったものの、一度としてモンスターの襲撃がなかったからだ。

 あっさり辿り着いた大広間。

 そこには祭壇に祭られる何かと、グレーターミノタウロスが待ち受けていた。

 ……こちらに背を向けて。

 

 そう、ここはダンジョン最奥部。

 俺たちは出口から逆走してきてしまったのだ。

 じゃあお宝だけ頂戴しようぜ、という卑怯な作戦が今はじまった。


(作戦が作戦なのでお喋りは少なめにいくぜ)


 まず準備として貯めてたSPを少し使って『隠密Lv2』をとった。

 検証不十分だが、相手に気づかれにくくなる効果のはずだ。

 これを『統率者』スキルで配下――ドクンちゃんとホブスケに共有した。

 

 リゼルヴァとホブスケは部屋入り口に待機。

 抜き足、差し足、忍び足。

 俺とドクンちゃんで祭られているアイテムへ向かう。


 頭の中ではスパイ映画のBGMが流れる。

 どの映画かは人によるだろうが、俺の場合は『不可能な任務』のやつだ。


 ミノタウロスはこちらに背を向けたまま。

 たまに「フゴッ」とか聞こえてくるので、たぶん寝てるんだろう。

 こんな暗くて落ち着く場所で待ちぼうけしてたら眠くもなるわな。


(そのままネンネしてくれよー)


 俺たちの位置から広場までは段差がある。

 1メートルほど階段を下ると祭壇の裏にたどり着けるのだが、几帳面に降りたりはしない。

 祭壇を見下ろせるギリギリまで来たら包帯を伸ばしていく。

 マミーの包帯は無限に伸ばせず、宝までは届かない。


 そこでドクンちゃんの出番だ。

 包帯を祭壇真上まで伸ばし、それに触手を絡ませたドクンちゃんが降下していく。

 クレーンゲームの要領だ。

 宙づりで宝に迫っていく様子は、『不可能な任務』の一場面にも似ている。


 徐々に宝に近づくドクンちゃん。

 ミノタウロスは気づかない。


 あとちょっと。

 あとちょっと……!


「フゴッ!」


「!」


「!」


「!」


 緊張が走る。

 ミノタウロスがおもむろに片手を上げ……頭をかいた。

 

 そして、再度居眠り。


(ほっ)

 

 ドクンちゃんがアイテムを掴んだ。

 小さい布の塊のようだ。

 というより布に包まれている何か?


 触手を巻いてドクンちゃんが上昇してくる。

 包帯まで戻ってきたら今度は包帯を――


「フゴゴッ!」


「!」


「!」


「!」


 またも鼻息。

 こいつはあれか、睡眠時無呼吸症候群なのか。

 枕を使って寝なさい、枕を。


 動きを止めて見守る俺たち。

 やがて静かな寝息が再開された。


 やれやれ引っこ抜けた心臓に悪いぜ。

 ドクンちゃんを目を合わせたそのとき――


 ゴ、ゴゴゴゴゴゴ


「フガッ!?」


 なんということでしょう。

 ミノタウロスの正面の扉が、重厚な音を立てて開いたではありませんか。

 これには流石の寝坊助も目を覚ましたようだ……俺たちが開いたときは寝ていたくせに。


 正面の扉からは一人のリザードマンが駆け込んできた。

 そして入るや否や、壁のレバーを下げて扉を閉めた。

 一瞬だけど通路にスケルトンの集団が見えた。

 あれに追われていたのだろう。

 リゼルヴァの驚きが後ろから聞こえてきた。


「仲間だ!」


 アイテムボックスに収納されたときにはぐれたリザードマンの一人か。

 スケルトンから逃れて安心したのだろう。

 そこな君、汗を拭って「どうにか凌いだぜ」とかやっている場合じゃないよ。

 ここボス部屋だよ。


 しかも間の悪いことに……。


「あっ」


 カツーーーン…………


 小さな呟きに続いて、何かがぶつかる甲高い音が響いた。

 見ればドクンちゃんの手に布がはためいている。

 宝物が布から解け、床に落ちてしまったようだ。

 金属質な軽い音から察するに、宝物は装飾品の類なのかも。


「フゴゴ」


 リザードマンを見て、背後のドクンちゃんを見るミノタウロス。

 起き抜けのダブル侵入者に動揺しているようだ。


 ええ、華麗なる大泥棒作戦は失敗です。

 本来なら背を向けて一目散に逃げる手はずだ。

 が、イレギュラーのせいでそのプランも無しになった。


「シェ……ッ」


 逃げ込んできたリザードマンだ。

 ミノタウロスの迫力にいまさら腰を抜かしている。

 リザードマンも抜けるんだな、腰。

 

 彼は族長が探している、はぐれたリザードマンの一人だろう。

 捜索依頼を受けた以上助けないとな。


「リゼルヴァ作戦変更だ、救助を頼む!」


 アイスブランドを抜き放ち、俺は祭壇に飛び乗った。

 燭台やら供物やらが、けたたましい音を立てて散乱する。

 ついでにドクンちゃんを回収。


「ゴフ……!」


 守るべき対象を荒らされ、ミノタウロスの敵意が俺に向いた。


「マスターごめんねぇ、しくじったあ」


「そういうこともあるさ気にすんな」


 しょげる使い魔をなぐさめるのも主人の度量よ。


 リゼルヴァに続いてホブスケも入ってきた。

 ホブスケは全身甲冑にオーガの斧を担いだ狂戦士スタイルだ。

 あの斧ならムキムキミノタウロスにも有効打を与えられるだろう。

 

「俺たちで引きつける、まずはリザードマンを逃がせ!」


「恩に着る」


 ここからはアドリブだ。

 ミノタウロスが迷宮の守護者なら、こちとら迷宮の主人(ミイラ)だ。

 伊達にピラミッドに埋葬されてないぞ。


「お前も焼き肉にしてやんよ!」


「ゴッフアアアアアアア!」


 怒声と蹄音がダンジョンを揺らした。

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