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38話 正規の裏ルート

 オーガをリザードマン村へ持ち帰る道すがら。

 遺跡ダンジョンを発見した俺はそりゃもうウッキウキで侵入した。

 メンバーは俺、ドクンちゃん、ホブスケ、リゼルヴァの4人。

 トリスケとホルンは図体の都合でお留守番だ。


 地下ダンジョンは壁に等間隔で松明が設けられており、見通しは悪くない。

 だからといって安全かというとそんなことはなく――


「このように床や壁を叩きながら進むことで、罠を察知できるんですねー」


「なぜそれを最初からやらない?」


「う、うぐっ。キビシイなぁ……」


 講釈を垂れながら進む俺。

 その額には一本の矢が深々と突き刺さっていた。

 ダンジョンに侵入して早々、床の仕掛けを見事踏み抜き、飛来した矢を頭で受けたのである。

 人間だったら即死してたぜ。


「フジミは異世界人なのだろう? 異世界でも冒険者をしていたのか?」


「まあーーーーある意味そうかな」


 胸に刺さる質問だ。

 少年のころはワクワクアドベンチャーを夢見てましたがね。

 実際は社会の歯車をやっていましたよ。

 アドベンチャーならぬ、ベンチャーでね。


 基本に立ち返った俺は、外から適当な木の棒をとってきた。

 これで数歩先の床を叩きつつ歩けば、罠を未然に誘発したり察知できるわけだ。

 通称3フィート棒……メートル表記だと90センチちょい棒。

 古来より伝わる便利アイテムである。

 デジタルなファンタジーじゃ、すっかり見なくなったけども。


「前に来た地下は宝箱だけの部屋だったよね?」


「そんなこともあったな」


 ドクンちゃんの言う通り、以前の地下室は勇者秘蔵のエロ魔石が安置されただけだった。

 忘れてたけど、いつか取りにいかないとな! あのお宝は。


 しばらく通路と、たまに階段を進んでいくと扉に行き当たった。

 モンスターらしき紋様が彫られている。

 大きな一つ目を中心として、四つの小さな目玉がそれを囲んでいるデザインだ。

 いい感じに不気味である。


 それはそれとして、今度も扉を開けるための仕掛けが見当たらない。


「不親切な作りね」


「だよなー」


「まるでこちらから入るのを想定していないかのようだ」


「ハハハ、それ言えてる」


 同じ要領で開けてやろう。

 軽口を叩きながら俺は包帯を伸ばす。

 包帯を這わせて扉の隙間から向こうの空間を探る。

 すると壁にレバーの触感があった。

 同じように引っ張るとカチリという小気味のいい手ごたえ。

 

 面倒なだけの単純な作りだ。

 いったいどういうコンセプトでダンジョンを作ってるんだ?


 重い音とともに扉が開く。

 目の前には下り階段があり、広間に続いていた。

 そこにはアイテムを祭る祭壇があった。

 

 そして祭壇の向こうには何者かが背を向けて佇んでいる。

 デカい。

 オーガの上半身をさらにマッシブにしたシルエットだ。

 頭には二本の曲がった角も見える。


 あれは――


<<Lv63 種族:魔獣 種別:グレーターミノタウロス>>


「ワァオ、ミノタウロスじゃん! レベルたかっ」


 小声で歓喜する俺。

 この世界はつくづく最高だぜ。


 身長は3メートルくらいか。

 上半身が雄牛、下半身が人。

 または雄牛が二本足で立っているモンスター、それがミノタウロス。

 この世界のミノタウロスは雄牛が直立型に見える。 


 由来は忘れたけど迷宮の守護者で有名。

 蹄じゃなく手指を持ち、巨大な斧を振り回すことが多い。

 

 目の前のあいつも御多分に漏れず2メートルはある戦斧をもっている。

 『グレーター』という文言は上位種であることを示しているのだろう。


 が……


「ねぇ動かないよ」


 ドクンちゃんが耳打ちする。

 そうなのだ。

 扉を開いたときに結構な音が鳴った。

 なので当然こちらに気がついているものとばかり思っていた。


 しかし奴はこちらに背を向けたまま微動だにしない……寝ているのか?

 よく見ると、その顔の先には別の扉があった。

 まるであちらの扉から来る者を待ち受けているかのような……


「あっ」


 俺は思い至る。

 これ見たことあるぞ。


「もしかして俺たち、逆走しちゃったのかも」


「ふぇ?」


「クッ」


 ドクンちゃんは茫然とし、察したリゼルヴァは笑みを漏らした。

 いったん通路に戻り、鈍い使い魔のために説明してあげる。


「入り口からして扉を開く仕掛けがなかっただろ? 内側から開ける――ダンジョンから出ることしか想定されていなかった。

 つまり俺たちが通ったのは入り口じゃなくて出口だったんだよ」


 ミノタウロス部屋の扉も同じ。

 正規の入口から侵入し、守護者であるミノタウロスを倒し、祭壇からアイテムを取り、出口への通路に向かう。

 そして最後の扉を開くと遺跡に出る。

 そういう構想だったのだ、このダンジョンは。


「で、俺たちは空気を読まずに最短ルートっていうかもはや反則ルートで逆走しちゃったんだな」


 かつて、自由度の高すぎる一部のゲームで同じ体験をしたことがあったのだ。

 そんなときはどうしたか。


 こっそりお宝だけを頂戴するのである。


「グレーターミノタウロスのレベルは63、圧倒的だ。戦いを避けられるなら避けたい」


「でもお宝は欲しい、と。マスター欲張りねー」


 とか言いつつニヤニヤするドクンちゃん。

 だってグレーターなミノタウロスが守ってるんだぜ?

 そりゃ期待しちゃうでしょうよ。


「はぁ、能天気な奴らだ……仕方ない協力してやる」


 そこから俺たちの怪盗作戦が始まった。

 そして意外にもノリノリなリゼルヴァなのであった。

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