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35話 鬼の首をとる

 遭遇した二体のオーガーを分断し、一体を斬首した俺たち。

 さて残りも片づけるか、という段に来て……


「魔族化だ! まだ終わってないぞ!」


 敵の復活を一言で説明してくれたリゼルヴァ。


 マヒからの集中攻撃で首と胴がおさらばしたオーガ。

 しかし首なしの胴が起き上がり、断面からは黒い塊が生えていた。

 キノコあるいはヒルに似て、グロテスクに蠢くそれは大きな目玉を一つだけもっていた。


 一つ目の巨人サイクロプスみたい、などと悠長に考えている場合じゃない。

 今の俺はそいつに鷲掴みされているのだ。

 両手ごと掴まれているせいで使える手段が包帯しかない。

 ……いや、覚えたての攻撃方法があった。 


「”シャドーブラスト”!」


 口を開いて闇魔法を発射準備。

 黒い球は相手に命中すれば、肉体と精神にダメージを与える。

 目玉にぶち当てれば怯むかもしれない。


 その隙に脱出してやろうとしたのだが……叶わなかった。

 俺の口から放たれた直後、黒い球は蝋燭の火のようにかき消えたのだ。

 そのとき一瞬目玉が光った気がした。


「無効化かよ!?」

 

 見覚えのある現象だ。

 かつてシルバーゴーレムが同じことをやってのけた。

 銀は闇魔法に耐性をもつため、”シャドースピア”が無効化されたのだ。

 そのときも今と酷似した現象を目にしていた。


 まさか黒いブヨブヨは銀で出来ているのか?

 魔法まで封じられたら拘束から逃れる術が無いぞ。


「今のは”アンチスペル”よ!」


 ドクンちゃんの声が聞こえるのと同時、目玉に矢が突き立った。

 リザードマンが放ったのだろう。

 

「ゴオオオオオオオ!!!」


 どこから出ているのか、苦悶の声を上げる一つ目オーガ。

 俺を離して目玉を抑えた。

 機を逃さず脱出し、俺は敵から離れられた。

 危うく握りつぶされるところだったぜ。

 

「サンキュー、リザードメンズ!」


「ノンノン、アタシの指示よ」


 リザードマンの頭上で胸を張るドクンちゃん。

 最近影が薄いとか思っててごめんよ。


「で”アンチスペル”っていうのは?」


 語感で薄々わかっているけど一応聞いておく。

 ドクンちゃんは魔法のエキスパートらしいからな。


「魔法を打ち消す魔法、その中でも上級呪文よ。そんじょそこらの魔術師じゃ使えないわ」


「そんじょそこらのマミーじゃ分が悪いわけだ」


 俺以外のマミーを知らんけど。

 しかし魔法が効かないとなると肉弾戦を挑むしかないのか。

 脳筋オーガの弱点を補っているな、魔族化とやらは。


「喋っている暇があるなら攻撃しろ、今しかないぞ!」


 目を抑えている今は攻撃し放題のようだ。

 ”アンチスペル”は目玉が万全じゃないと使えないらしい。

 リゼルヴァの火魔法もバシバシ当たっている。


「黒い部分やたら燃えるな。火が弱点なんじゃねぇの」


「魔族は不死者の創造主、特性が似ているのかもしれないな」


「さらりと大事な情報ありがとう、あとで詳しく教えてくれ」


 リゼルヴァがさらっとトンデモナイこと言い放った。

 魔族とアンデッドにそんな関係性があったなんて。


 アンデッド、言い換えると不死者である俺は、聖と火の耐性が尋常じゃなく低い。

 もし目玉も同じ弱点をもつなら聖属性も効くはず。

 つまり――


「これ借りるぞ! あと俺に火あてないでね、シャレにならんから」


「おい!」


 再び接近戦といこう。

 すれ違いざまリゼルヴァから『退魔のハルバード』をひったくる。

 さすがに長柄武器は重いな、包帯で振り回すのは苦労しそうだ。

 あと握る手がちりちりする。

 退魔の効果か?


「ホブスケ、カタパルトセット!」


 手を組み、腰を落としたホブスケが俺を待ち構える。

 走る勢いのまま手に乗り、ホブスケが俺を放り投げた。

 自身の力を加えて更にジャンプ。


 ハルバードの重さが足を引っ張るが、どうにかオーガの頭上に届いた。

 今度は逆に重さを利用して渾身の一撃を見舞ってやろう。


「どたまカチ割ったらあああああ!」


 落下の勢いのまま振り下ろす。

 真っ黒い頭頂部に刃が深くめり込み、どす黒い体液が噴き出す。

 その汚れを浄化するかのようにハルバードが光を放った。

 アンデッドの本能がそれを忌々しく感じる。


「ゴオオオオオオオ!!!」


「いやな光だ、いかにも聖属性な」


 一つ目オーガが頭部を抑えて悶絶する。

 威圧感こそあるけど、この黒い部分が弱点で間違いない。

 

「”ファイアボルト”!……チッ、打ち消された」


 代わりに目があらわになり魔法が効かなくなってしまった。

 ならば物理で攻めればいい。


「射つのよ!」


「シャッ!」


 ドクンちゃん指示のもと、リザーマンズの矢が放たれた。

 うち一本が目玉に命中すると瞳が閉じられる。

 こうなれば”アンチスペル”も使えまい。

 リゼルヴァが火魔法を再開し、俺は包帯をオーガの背に巻き付け自らを固定。

 容赦なく斧を打ち込んでいく。

 

 前後から攻撃を浴びて一つ目オーガはパニックに陥る。

 やたらに腕を振り回すが、慎重にダメージを与えていけば問題ない。


「やったか!?」


 何度か刃を叩き込むと、ようやく一つ目オーガは倒れた。

 ホブスケの『死のアイスブランド』でつつかせてみる……反応はない。

 

「うおっ、出てきた」


「キモチワルー」


 今度こそ動かなくなった胴体から黒い塊が這い出てくる。

 さっきまで頭部を模していた目玉つきヒルだ。

 力なく収縮しており、瞳も乾いて力がない。

 にしても寄生虫みたいで気色が悪いな。

 

「ときめきポイズン!」


 ドクンちゃんが思いっきり毒液を吐きかけた……容赦ないな。

 苦痛に身をよじった目玉ヒルは、やがて塵のように霧散する。

 あとには何も残らない。


「厄介な相手だったな。魔族化ってみんなこうなのかよ」


「私が戦った相手はやたら素早かっただけだ」


 リゼルヴァの表情は険しい。

 魔族化にもバリエーションがあるのか。

 

 獰猛なモンスターを更に強化する魔族化。

 そして魔族という存在。


 戦闘の激化を俺は予感していた。



「ねぇ、ホルンたち助けに行かなくていいのマスター?」


 あっ。

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