表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/153

14話 オデ、トロール、クウ


 卓越した剣さばきと知略によって難なくトロール攻略した俺たち。

 フジミ=タツアキのソードマスター伝説序章が幕を開けた。

 

 しかし次なる部屋に向かうにあたり、俺は一つの選択を迫られていた。


「アタシのときめきポイズンのおかげでトロールを倒せてよかったわね!

 なんか都合のいい導入があった気がするけど」


「あっはい、すんません」


 祝勝会兼、第二回お食事会。

 トロールの肉を頬張りながら俺たちは意見を交換していた。

 皮が分厚くて解体に手間取ったが、とってもオイシイ。

 固いが深みがある……ジビエって感じだ。

  

「まさか分かれ道になってるとはね」


「しかも開けた先が不思議空間だもんなぁ」


 トロールの部屋には先へ進むためのレバーが2つあった。

 これまでは一本道だったが、ここにきて分岐にあたったのだ。


 俺たちは一瞬だけ扉を開け、それぞれの部屋をのぞいた。

 結果、俺たちは二回もびっくりした。

 扉の先は一つが砂漠、一つが湿地だったのだ。

 何を言っているのかわからないと思うが、俺も何を見たのかわからなかった。

 魔法に詳しいドクンちゃんにも分からなかった。


「でもまぁ、ここはアイテムボックスの中だしな。何が起きても不思議じゃない、か?」


「そういうことにしときましょ。どうせ進むしかないんだし」


 前進あるのみ。

 すべては異世界生活を満喫するため。

 そのための脱出手段が見つかることを信じて……!


 ということがあり、どちらに部屋に進むかを食事がてら相談していたのだ。

 新しいスキルでできることも整理したいし。

 

 脱出への決意を新たに、トロールのもも肉を噛みちぎる。

 弾力がすごすぎて顎の筋肉が痛くなりそう。

 俺、骨しかないから関係ないけど。


「せめてトロールがスケルトンにできれば心強かったのにな」


「頭潰したらダメなんて、残念ねー……ジュルジュルジュル」


 骨髄を吸うドクンちゃん。

 『死霊術Lv1』で覚えた魔法『クリエイトスケルトン』。

 生物の死体をスケルトンとして操れる呪文だ。

 これまで、人間かゴブリンかホブゴブリンの死体しか利用できなかった。

 しかしトロールを倒したことで、トロールのスケルトンが作れるはずとウキウキしていた。

 が……。


 <<失敗:対象の状態が不適切>>


 頭を切り離したトロールは、なんとまだ生きていた。

 驚異的にもほどがある生命力だ。

 生首を跡形もなく滅多打ちにしてようやく息の根を止めた俺たち。

 しかし生首が粉々の死体では、クリエイトスケルトンは失敗してしまうのだった。

 あの怪力、ぜひ戦力に欲しかった……!

 

 とはいえ俺たちの戦力は若干強化されていた。

 久しぶりにステータスを見ておこう。


=====


 フジミ=タツアキ(未使用)

 Lv :20

 種族:アンデッド

 種別:ワイト

 称号:転生者

 ユニークスキル:セカンドライフ 生命吸収 マヒ毒付与

 スキル:不死 自然回復Lv2 闇魔法Lv2 死霊術Lv2 剣術Lv1

     MP回復Lv1 MP拡張Lv1 統率Lv1 恐慌強化Lv1 

     毒耐性Lv5 呪耐性Lv5 魔法耐性Lv1 物理耐性Lv1

     火耐性Lv-3 聖耐性Lv-3 (鑑定Lv1)


=====


 ……うん、(未使用)は取れてないね。

 もはや転生者以上のアイデンティティと化してるね。 


 大きく変わったのはユニークスキルが増えたことだ。

 レベルが上がったことでワイトのユニークスキルが増えた――というか解放されたらしい。


<<マヒ毒付与:通常攻撃がマヒ毒を帯びる>>


 マヒ。数ある状態異常のなかでも強力とされることが多い。

 しかし俺はこのスキルについては有用性を疑っている。


 ”通常攻撃”という文言をみてほしい。

 これはどうやら、俺自身の体で直接傷つけないといけないらしいのだ。

 つまり噛む、ひっかく、殴るなどしないと発揮されない。

 ……そして俺の手には剣がある。

 素手よりもリーチも威力も勝る、武器を持っているのである。

 剣を捨て、麻痺ほしさに生身で特攻するだろうか?

 マヒ毒付与の残念性能、おわかり頂けたと思う。

 

 ちなみにスキルの検証はゴブスケで行った。


「何なんだよ、この残念スキル……」


「使い道次第よ、想像してみて?」


 トロールの骨をしゃぶりながらドクンちゃんは述べる。


「狭くて暗いダンジョン、麻痺持ちのワイトたちがなだれ込んできたとしたら?

 前衛がマヒにされたら一瞬で隊列が崩されるわよ」


「たしかに……敵だと強いけど仲間になると弱いライバルみたいなもんか」


 なりふり構わないモンスターだからこそ光るスキルってことか。

 その点、俺はワイトでありながら立ち回りが人間だ。

 スキルを活かせないのも仕方ない……のか?


 ほかに新調したのは『統率Lv1』『闇魔法Lv2』『死霊術Lv2』だ。

 『統率Lv1』は配下のモンスターを強化するスキルだ。

 これは使い魔のドクンちゃんと、クリエイトスケルトンで作ったゴブスケが対象だ。

 ドクンちゃん曰く「アタシらしさが増した」とのこと。聞くだけ無駄だったわ。


 『闇魔法Lv2』と『死霊術Lv2』はそれぞれレベルを上げたことで呪文のレパートリーが広がった。

 『死霊術Lv2』はスケルトンの強化、新しい戦闘呪文、さらには――


「いくぞー、スケルトンズ」


 がちゃりがちゃり、と。

 駆け寄ってくるスケルトンが二体。

 そう、同時に二体まで「クリエイトスケルトン」できようになったのだ。

 一体はこれまで通り、ゴブリンのスケルトン(通称ゴブスケ)。

 もう一体はホブゴブリンのスケルトンだ(通称ホブスケ)。

 ホブスケの鑑定結果はこんなかんじ。


<<Lv14 種族:アンデッド 種別:スケルトンウォーリアー>>

 

 どうやら上位のスケルトンらしい。

 ホブスケはゴブリンの上位個体の死体だからか、背丈も高い。

 だいたい俺と同じくらいだ。

 きっと大活躍してくれるだろう。


 ちなみにトロールが守っていた宝箱だけど、中にはこんなのが入っていた。


<<フルプレートメイル(使用済み) アイテム レアリティ:アンコモン>>

<<金属製の全身鎧>>


 なんと剣に続いて全身鎧である! 素晴らしい!

 兜からつま先まで全て揃っているのだ……血まみれだけど。

 ただ残念なことに、脇腹の部分に人差し指くらいの穴が開いていた。

 千枚通しのような武器で貫通させられたのだろう。

 穴からの出血具合からして、装着者は生きてはいないだろう。


 そしてもう一つ残念なことがある。


「くっそ重いぃぃぃ……これぇぇ」


 鎧ワンセットを装備してみたところ、歩くのがやっと。

 とても敵の攻撃をよけられそうになかった。


 なので俺は兜だけ被って、残りはホブスケに着せた。

 どうやらホブスケのほうが筋力(?)があるらしく、キビキビ動いている。

 しかもトロール愛用のこん棒も持たせた。

 1メートル近いサイズのこん棒は振り下ろすので精いっぱいだが、威力はお墨付きだ。

 重装備で動けるなんて、さすが元ネームドモンスター。


「よし、いよいよ行きますかー!」


「オッケー!」


 ぴょんと俺の肩に飛び乗るドクンちゃん。

 兜をかぶり直し、いざ次の部屋へ出発!


 砂漠か、湿地か。


 どーちーらーにーしーよーおーかーなー……



「きゃあああああああああ!!」


 

 唐突に響く女の悲鳴。

 俺はすぐさま走り出した。

 

 目指すのは湿地の部屋だ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ