ファンタジーは突然に
ノリと勢いだけで書きました、続くかは分かりません。
カタンカタン……カタンカタン……
吐き気がするほど単調なリズムで鉄と鉄がぶつかり合う、
鉄の車輪と鉄のレール、車輪の上には鉄の箱、ゴミ貯めみたいにスーツ着た人間が押し込められている。
優先席に偉そうに座るどう考えても優先される理由のないオッサン、若々しい青年は老人に席を譲る、そこの女は……周りの人間には無関心で化粧をしている。
世界の縮図、人間の生態が詰まった車両、俺はと言えばそんな息苦しい中でなんとか呼吸しようと窓の外を眺めている。
クソみたいな日々だ、刺激もなく意味もなく生きている意味すら疑う毎日。俺が生きていようが死んでいようが時間は進む、他人も生きたり死んだりする。
つまらない……単調、単調、同じことの繰り返し。グルグル同じ毎日がループするから、三半規管がやられて吐き気が、目眩が、立ちくらみがする。
神様ってのは本当にいるんだろうか、こんなクソみたいな世の中見てるだけの無能なら居ないのと等しい気がする。俺を救ってくれと言いたいんじゃない、あんたにすがる人間がたくさんいるんだから少しは働けって……働きたくない俺が言うのも変な話か。
駅に着き俺はようやく息苦しい箱の中から解放される。眼前に広がる海が「私の胸に飛び込んでおいで」って顔をしているような気がする。
少し歩いた先の大きくも小さくもないビルが「お前はここで命を削れ」と口を開けているから、仕方なく社員玄関の自分の名前が書かれたタイムカードに出社時間を記録する。
ハッピー奴隷ターイム。さぁ、きっちり8時間お前の命を削るからな。無機質なはずの始業チャイムでさえそんなふうに聞こえる。だいぶ疲れているみたいだ。
さて、今更だが自己紹介をしよう。仕事中は面白いこともつまらないことも何も無い平坦な時間。自己紹介でもしなければやってられない日も有る。
俺の名は《真能 道生》ある1点を除いてとても普通な社会人、歳は今年で23。高卒で働き始めて今年で5年目、夢も目標もなく日々をダラダラ過ごしてる。さっきから暗いことしか言ってないが一応本当は楽しい奴なんだよ、とても明るく学校ではムードメーカーだのトラブルメーカーだの色々言われてきている。仕事中のテンションが低いだけだ、皆そうだろ?
さっき言った「ある1点」それはとても特殊な力、他人からの視線を感じる事ができる。私もできるよって?俺のは集中すれば誰が見てるかわかる。なんならどこを見てるかだってわかる。ドッヂボールはめちゃくちゃ強かった。相手が俺のどこを狙っているかわかるからな、狙っている所を少し動かすだけでまったくボールに当たらなかった。
だから今君が画面の向こうから俺を見ていることもわかっている。特にどこをっていうのが具体的にわからないから思考そのものを覗いているのだろう。この感覚は初めてだ、画面を隔てているせいか君の顔がわからない。別に覗かれて困るような事は考えて無いし画面向こうの君になんと思われても気にはしない。
さて、そんな事を話していたら仕事が終わった。こちらとそちらの時間の流れは場合によって変化するのだ。
今日も今日とてハゲ上司にムカついたから会社の目の前に広がる海辺に向かう。海に沈む夕日が美しい、キラキラと海に反射して目の前の景色を真っ赤に染める。まるで時間がゆっくり流れているかのような癒し空間。金が無尽蔵に有れば毎日夕日を眺めるだけの日々を送れるのにな……一時期ネットで流行った「5000兆円欲しい!」まさにそれだ。
そんなアホな事を考えていたからか太陽はどんどん身を沈ませてそろそろ見えなくなる。
ふと浜辺を見渡すと人が倒れている。人が倒れている。人が倒れている!?待て待て、こういう時こそ慌てない、まずは意識の確認だ。
「どうしました?返事できますか!?」
駆け寄ると女性だとわかる。日本人とは思えない綺麗な銀色の髪……外人でもありえないか、最近の毛染めは万能だしな。まぁどうでもいいか。
「もしもーし!……ダメか、救急車呼ぶか……」
と、携帯を取り出そうとしたその時
「まぁー待て、慌てるな、私は無事だ」
倒れている女から声が発された、とはいえ浜辺に倒れているのだ、救急車は呼ぶとしよう。
「待てってば!待ってよ!呼びかけ無視したのは謝りますから!ほんとになんとも無いんです!」
「じゃあ、なぜこんな所で寝ていたんだ?」
「いやー着地に失敗して……ってそんなことはどうでもいいんです!まったく、せっかく威厳ある感じで行こうと思ったのにグダグダじゃない……」
立ち上がった女、いや少女か?見た目は成人していないように見える。大きな目に長いまつ毛、真っ白な肌は夕日で赤く染っている。この服装は……なんて言えば良いのか、俺の語彙じゃ表現が難しいがゲームとかに出てくる僧侶?いや女神?うーん、とにかくなんか神聖な雰囲気が出ている、雰囲気程度しか感じられないのは俺がそういった事に疎いからだろう。
えっ、乳デケェ!は?なにそれ、ドスケベじゃん。取り乱してしまった。とても大きく柔らかそうなおっぱいがおっぱいである。あまり見すぎてはいけないと思うがついつい目がいく。
「ちょっと、あんまり胸ばかり見ないでください、あと、貴方の考えていること全て私には筒抜けですからね」
「ほう、他人の心が読めると?」
「当然……私は女神クローネ、神なのです、人間どころか虫や木々の思考まで読み取ることができます」
はぁーん、うさんくさくないな。
「貴方今私を引っ掛けようとしましたね?『うさんくさいって思ったでしょ!』とか言わせるつもりだったのですか?しっかりと『うさんくさくないな』って思った事読めてますからね」
ほう、女神ってのはまだ信用ならないがそういった力は有るようだな。常日頃クソつまらない毎日に何かファンタジーな出来事は無いかと生きていたが少しはファンタジーじみたことが起きているようだ。
ところで、そんな女神様がいったい何故ここに?
「……めんどくさがって声を出さないのはどうかと思います……これだと私が1人で一方的に喋ってるみたいじゃないですか……」
いやー、俺は他人の思考とか読めませんからー。
「くっ、まぁいいです。貴方、今朝神を侮辱しましたよね?」
今朝……あぁ、見てるだけの無能なら居なくても良いってアレか、
あんなの気にしてやってくる神とか暇なんだろうか、本当に無能なんじゃないかと思えてきた。
「あああああもう!うるさい!いちいち悪口言わないでください!私は時々地上に降りてきては貴方のように神を信じないものに奇跡を起こして、神を信じさせるという仕事が有るんです。」
奇跡って、例えば?
「好きな願いをひとつ叶える事ができます。望むなら世界を貴方の意のままにすることだってできますよ」
別に世界は要らんな……あぁそうだ5000兆円でも頼んでみるか、世界は要らんけど5000兆円も有れば不自由なく生きれるからな。
「ふふん、貴方の願い聞こえましたよ……叶えて差し上げましょう!さぁ、私の前に跪くのです……奇跡を起こす儀式を始めましょう」
俺は他人に頭を下げることにまったく抵抗のない人間だと思っている。頭を下げるだけで厄介事が無くなるならそれほどいい事は無い。ので、さっさと跪く。
「あんだけ悪口言ってた割に素直ですね……厄介事扱いされているのでしょうか……この男は思考の表面から先が見えづらいですね……」
そう言って俺の頭に手をかざす、この姿勢じゃおっぱいが見れない。早く終わらせて欲しい。あ、おっぱい揉ませて欲しいって願えば良かった気がしてきた。これは大きなミスだ、が、5000兆円有ればそんなミスよりも大きいおっぱいが手に入るだろう。1度のおっぱいか、多数のおっぱいか。当然後者だ。
なんてことを考えているうちに儀式とやらは終わっていた。
「貴方の願いは叶いました……良い人生を送りなさい……」
そう言い残し気付けばそこにクローネの姿は無かった。
テンポ悪いなぁ……まぁー今後の展開に期待って所ですかね。