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かなり執筆が遅れて申し訳ありません。
森の奥を目指して二人は進んでいた。
あれほど濃厚な霧も、空間を跨いだ辺りから薄くなり始め、今ではかなりの範囲が確認できるようになっていた。
人影も無く、木々とシダの様な植物がどこまで続く風景の中に獣道の様な細い道があり、それを二人は進んでいく。
『制御していた精霊については、存在を感知できません。』
ラディの頭の中にアリアの声が響く。
「そよ風の精霊は居なくなったみたい。」
「誰か居たのかなぁ。でもそよ風の精霊はそんなに弱かった?」
「そうね、元々敵対行動をとるような精霊では無いし、戦うということは考えにくいわ。それにいくら弱いといっても戦うのは普通の人間には無理だわ。精霊を何とか出来る位の魔法使いは居るという事よね。」
「ラディと同じ位?」
「契約によって縛る召喚系の魔法は、契約の強さによって精霊の行動が変わるの。消滅するまで戦うような強力な契約は自分より弱いものとしか契約できないわ。そう考えれば、むしろ私より強いでしょうね。私達と敵対しないことを祈るわ。」
ラディは肩をすくめて言ったが、言い終わるかどうかのタイミングでアリアが被せてくる。
『正体不明の一団に取り囲まれました。』
「フレイ、アリアから…。」
「これってまずいよね。」
ラディとフレイが被ってそう言う頃には、何処から現れたのか数人の射手が二人を取り囲んでいた。
剣技の届かない距離で、かつ魔法の詠唱が始まっても対象出来る様な微妙な感じの間合いをとって取り囲んでいるだけでなく、それぞれが特徴的な意匠を弓に施しているところからも、その所有者が只者ではないのは一目瞭然だ。
「止まれ、そして立ち去れ。ここはお前達が来るような所ではない。」
数人の射手の内、一番手前の者が高圧的というわけでも威嚇するわけでもなく、ただ淡々と言った。
金髪の長髪と細身な体つきは、男性だとは分かるものの、ぱっと見は女性の様に見える。
『集団の個体数は確認できるだけで5つです。総てに魔力が感知できますので、魔力を帯びた装具を身に付けていると思われます。』
技量が有る一定の水準を越えて来れば、自ずと魔力を帯びた物を身に帯びる機会も多くなる。
魔力を帯びた装具を持っているということは、つまりそれだけの手練だということになる。
アリアからの助言も二人が感じている相手の技量の裏付けにしかならないが、間違いないということは分かる。
ラディは慎重に言葉を選びながら、
「ここが、およそ何処であるかの見当は付いています。私達は、この地をならば知り得るであろう知識を求めてこの地を目指してき来ました。長に合わせて頂きたいと思います。」
「求める知識とは何か」
奥でフードを目深に被っている者が言った。フードのため容姿からは判らないが、声の感じからすると女性の様だ。
「とある場所で異界の魔物に取り込まれた妹を助ける方法を、妹は、私にとって最後に残った家族です。」
ラディが言った。
「本当とは信じがたいが、何か証拠でもあるのか。」
フードを被った女性のような者が問いかける。
どうやら雰囲気からしてグループのリーダーの様で、全く聞く耳を持たないと言うことでは無いようだ、まぁ回答によってはと言うところか。
「お見せ出来る様な証拠はありませんが、如何したら信じて貰えますか。」
「さて如何したものか。それが真実だとして、仮に知識を得ても力が無ければ実現は困難だろう。このままではそっちも引き下がれないようだから、まあ我らと腕試しをして、負けたら諦めて帰って貰おうか。」
ラディはフレイを見ると、フレイはウンと頷いている。
「一人ずつやって貰おうか。円陣、2番4番前へ」
リーダーがそう言うと、集団は円を描いて素早く二人を取り囲む。
動きからして、かなり訓練されているようだ。
1人目らしい男が手にしていた弓を背に縛り付け、腰の細身の剣を抜いた。