序章 1
普段はPBWというもののマスターをやっています。怖くて切ない話が書きたくて書き始めてみました。
少しずつですが更新していきます。よろしくお付き合いくださいませ。
パタリ、パタリ、と落ちていた涙は、いつしか生暖かい流れとなって頬を伝っていた。
胸に渦巻くのは、悲しい、痛い、苦しい、そんな負の感情。ないまぜになり、「憎しみ」の結晶になった怒り。
その原因は目の前にあった。
……ワタシヲコワシタモノハナニ。
くつくつと低く響く声。聞いていたくない。聞きたくない。消え去ってほしい。そう願いながらも、澱む滓のように鼓膜を打つ、歪んだ笑い声。低く、低く、嘲るように見下す嘲笑。
……コノオトコハナニヲシタ。
ガタン!と不意に部屋の戸が音をたて、美咲はびくりと身を震わせた。
ふうっと感じていた圧力が消え、ずっと降っていた雨の音が聞こえてきた。
闇夜を震わせる雨の音。ざああ、ざああ。さああ、さああ。
うあぁ、あ、あぁ。哭き声が聞こえる。美咲は気づかなかった。その哭き声が自分のモノであることに。
目の前に転がる物体が、父と、母と、呼んでいたモノであることに。その動かない体の下に広がる黒い液体。冬の気温にさらされて、止まった時の中で冷たく固まっていく、チ。
哭き声はやがて止まり、雨音以外には何も聞こえない、静かな冬。
それは美咲が愛を失った、10歳の夜のことだった。
魔法とかは出て来ないし、ゴシックホラーかと言えばどうなんだろ?ではありますが、ともあれ気の向くままに書き綴って行こうと思います。目指すはハッピーエンド(多分)。