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愚者の舞い 39

 ガードは傭兵であった。

当時から不利なのは傭兵間に伝わっていたが、ガードの親友がその王国に恩があり、加担すると言い出した。

最初こそ渋ったが、腐敗した宮廷内で祭り上げられた幼い女王に謁見した時、ガードは(いた)く思い入れしてしまった。

戦争に負ければこの女王とその側近を死刑にして事を収め、他の王族などは生き長らえる。

そういう算段が見え見えだったのだ。

何とかしてこの幼い女王を守りたい。

それは幼い時失った、自分の娘と重なったからかもしれない。

娘は流行り病で死んでしまったが、この女王は生き長らえる事が出来るかも知れない。

ガードとその親友は、勝ち目のない戦争で獅子奮迅の働きをしてみせた。

傭兵として普段家にいないガードに対し、妻は悲しみに耐えきれず、娘の死と共に去って行った。

闘病中に衰弱し死んで行く娘を守れなかった妻の深い悲しみに、ガードは引き留めきれなかったから。

守るべき者も無くなったまま戦場を駆け回ったガードにとって、この戦場で戦うために今まで生きていたのだと、心底思えたのだ。

しかし、腐敗しきった宮廷は、やはり腐っていた。

目立つ働きをするガードとその親友をわざと罠に嵌め、窮地に陥れたのだ。

この二人さえいなくなれば、速やかに王国は滅亡し、自分達は安泰だ、と。

愛用の剣は既に折れ、奪ったボロボロに刃こぼれした剣を手に、二人は敵に囲まれて覚悟を決めた。

「ここまでか。」

「ちと頑張り過ぎたな。」

最後の最後まで力の限り戦った、満足感があった。

もうこの戦いに勝ち目はない、そう思ったからこそ、二人は死後、使い道の無くなる有り金全てを使い、ある冒険者に女王の救出を依頼してある。

それも成功するかは分からないが、運命を決めつけて行動を起こさないより遥かにマシだと、二人は思っていた。

「さて、最後に一花咲かせようか。」

「そうだな。 名も無き傭兵にここまで蹂躙されたとあっては、こいつらも長くはあるまい。」

疲れ果てた体に鞭打って、二人は最後の突撃をしようと思った。

「お前らが死ぬ必要はあるまい。」

バサッと翼を打ち鳴らし、腕に幼い女王を抱えたアラムが舞い降りたのは、その時だった。


「女王は平民として、ガード達がシッカリと成人させ結婚し、今は子供に囲まれて幸せに暮らしている。 だが、二人とも傭兵として暮らすわけにいかなくなったから、屋敷で守衛として雇ったんだ。」

「その・・・王国は、滅んだんだよね?」

「ああ。 女王を出せと騒いだが、他の王族と引き換えに黙らせた。」

王家の醜さをまざまざと知った女王も王族として生きる気はなく、普通の庶民として生きていく事を承諾した。

血筋でいえば絶える事も無いが、守るべき領土も民もいないのに王を名乗っても無意味だ。

「なんで、生きるために争わなきゃならないんだろう。」

ルーケが真剣に悩んでそう言うと、アラムはヒョイッとプリンをルーケの方に押しやり、

「お前、プリンをどう思う?」

「ご主人様???」

「どどどどうってどう答えろと!?」

キョトンとするプリンと、思いっきり動揺するルーケ。

「女として見て、プリンをどう思うと聞いている。」

「いや女としてって・・・そりゃ、可愛いと思うけど・・・?」

「私の好みではないですの。」

「グハッ!」

「一刀両断だな。」

ガックリ項垂れるルーケと平然と答えるプリンに、笑うしかない状態ではある。

「まあいい。 アンポ。」

ボウンと、例の美女が現れる。

「お前にどっちかやると言われたら、お前はどう答える? 両方とも人間の女だったらとしてだが。」

「どっちかって・・・女の子を物みたいに言わないで下さい師匠。」

「そうですの・・・。」

実際、プリンは今捨てられたら、確実に飢えて死ねるだけに切実な話である。

「いいから選べって。」

「・・・う〜ん・・・選べない・・・。」

「優柔不断なやっちゃなぁ。」

「そういう問題ではないでしょう!?」

「俺ならどっちと言わず、両方手に入れるがな。 アンポ。」

美女を人形に戻し、ニヤッと笑いながらポンポンとプリンの頭を軽く叩くと、プリンはホッとするが、ルーケはムスッとした。

「それ、質問がおかしいですよ?」

「おかしくねぇよ。 人間に限らず、生物には欲がある。 多かれ少なかれな。 雄が雌を求めるのは自然の摂理だ。 そうでなければ種族を維持できない。 動物は強きが全てを手に入れ、弱きは全てを失う。 理性と知識が売り物の人間だって同じ事だ。 力の弱い者を守るのは法律しかない。 しかし、法律が全てに成ると弱者が強者を席巻する。」

「それって、なにか歪んでいるような?」

「兄貴は法で全てを治めるべきだと言った。 だが、俺は力が全てだと言った。 強きが強くて何がいけないとな。 人間は小賢しいくらい知識をフル活用して、弱さを補う。 しかし、虎と戦う時に肉体しか無ければ人間はほぼ勝てない。 知識を使って勝ってもそれは強さだと俺は思うがな。 だが同時に、欲があれば争いも起きる。」

「その争いを起こさないようにするのも知恵でしょう?」

「だが、大半の生物は、平和に利用するより自分のために使い、争いを起こす。 たとえばお前の言う世界平和だが、犠牲も無く統一できるか?」

「う〜ん・・・まったくは無理だと思うけど・・・。」

「欲に駆られなくても争いは起きる。 お前のように理想を求めるだけではなく、生きていくためにもな。 水を、土地を求めての争いだってある。」

「だから、そんな理由で争わなくてもいいように、統一が必要なんじゃないですか! 大陸を一つの国家にしてしまえば、領土で争う事はなくなるでしょう!?」

「急に強気だが、そんな事はない。 お前は単純に統一したら平和になると思っているようだが、平和にするには治めなければならない。 だが、広い大陸をあまねく統治する事は一人では不可能だ。 住めば必ず不満も出て来るし争いだって起きる。 戦争という巨大な単位から小範囲になるだけの事。」

「それだけでも、不幸は確実に減るでしょう!?」

「その統治も知識が必要だ。 だが、お前はそっちをまったく習得しようとしねぇ。」

「それこそ魔術師などの補佐があればできる事ではないですか! 一人では足りなくとも仲間で補い合えばいいのでしょう!?」

「だからっ! お前は人の話を聞けっ!」

「今こうしている間にも苦しみ悲しんでいる人がいるんですよ!? 師匠はなんでそんなに力があるのに助けようとしないんですか!」

「ありすぎるから関与してねぇんだ!」

「そんなの言い訳だ!!」

「言い訳じゃねぇ! お前はまだそんな程度の知識しかないのか! いいかよく聞け!」

「言い訳なんて聞きたくない! 俺は!」

「二人ともストップですの〜!!!!」

エキサイトした二人に挟まれ、プリンはかなり苦しい。

実際にルーケが詰め寄ったために、文字通り挟まれているのだから堪らない。

「こう言う時、おっ○いが大きいと邪魔ですの!」

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