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愚者の舞い 24

 なんだかとてつもなさ過ぎな人に師事を求めてしまった。

そんな後悔を覚えなくもないが、知ってしまった以上、また、師事を受けてくれる以上、これ以上も無い相手ではないだろうか。

相手は世界創造した人物であり、圧倒的な力で世界を滅ぼしかけた人物でもある。

ハッキリ言って、全世界最強と言っても過言ではないだろう。

そんな相手に師事を受けてもらえ、教えてもらえれば、自分も強く成れる。

ルーケはなんだか命がけかもしれないが、嬉しくなって来た。

「今、この自然界にいる子はプリって娘だけだ。 他は魔界と天界に散っている。 他に聞きたい事はあるか?」

「え〜っと・・・奥さんは?」

「とうに死んだよ。 120年前に成人してるんだぞ? 普通の人間はそんなに長生きしないだろ。」

そりゃそうだ、と、納得すると、他に聞きたい事もとりあえず浮かばない。

「とりあえず質問は終わったみてぇだな。 で、どうすんだ?」

「う〜ん・・・。」

とりあえず、戦士としては教えて貰えない。

でも、ルーケは世界を平和に導けるような戦士、または騎士、または王に成りたいのだ。

最低限、王に登り詰められる他の職は・・・。

「・・・ねぇモリ・・・なんて呼べばいい? それに質問。 アラム族って?」

「俺の名はアラムとさっき教えたが、最初この世界に来て人間達に物を教えていた時、普通にアラムと名乗っていたんだが、何回か知恵や技術を悪用したりする奴が出て来てな。 戦争の道具になったりもしたから教えるのをやめたんだ。 そのうち魔界の面倒見るのが忙しくなって100年ほど来なくなったんだが、そしたらいつの間にか伝説にされてたんだわ。」

どれだけ昔に来ていたのか分からないが、100年も姿を見ない知恵者が姿を消せば、伝説にもなるだろうなぁと、思わなくもない。

「んで、今更物を教えるのもかったるいからやめて、普通の人間のように暮らしていたんだ。 普通の人間は50年程度で死ぬから、いつまでも同じ姿・名前だと怪しまれるんでな。 一族って事にして、色々姿を変えたり名前を変えたりして誤魔化していたんだ。」

「・・・あれ? 年数が合わないような??」

「なにがだ?」

「伝説になったのって何年前?」

「軽く300年以上前じゃないか? 魔王の時は名乗ってないからな。 俺の正体知っていたのはクラスィーヴィとプリだけだし、プリは俺の戦い方で意図を察していたからな。 クラスィーヴィは倒したけど不審げだったから、まだ生きていると不審がってるだろう。 それに俺の正体なんぞ言い振らしたらどうなるか、あの二人こそ一番良く知ってるし。」

「・・・? どうなるの?」

「世界が恐慌するよ。 この世を作り出した神が滅ぼしに来てたんだぜ? 倒したら世界が消滅するんじゃないかって普通思うさ。 なんせ人間達は、俺と兄貴の魔力でこの世界は維持されていると思ってるからな。」

「え!? じゃあ、神話とか世界創造の話は全部嘘!?」

「一部本当だが、ほとんどは嘘だな。 まあ、そのように仕向けたのは俺だけど。」

「なんでまた・・・?」

「知ってどうする。 真実なんて自分で探して知るもんだ。 なんでも知ってたら面白くないだろ、人生が。」

自分で探して・・・。

その言葉で、ルーケは目指すべきものが今、具体的に頭に浮かんだ。

「なあ、モリオン。」

「ん?」

「ただの戦士じゃ教えてくれないんだろ?」

「ああ。 お前が俺に追いつくほどの才能持ってれば話は別だが、生憎お前の才能は人並みだ。 まあ、知恵を使う仕事なら人並み以上に成れる才能はあるから、お前の根性と頑固さに応えてそっちなら教えてやる。」

「じゃあ魔法戦士にしてくれ。」

「それも無理だ。」

「あれ。」

折角閃いたのにと、ガックリ項垂れる。

「お前は魔力、ほとんど無いんだよな。 そっちの分野に関しては人並みにもならん。」

「でも、俺は王になりたい。 英雄になりたい。 そして、世界を平和にしたい。 剣は人並みでも、技を覚えれば強くは成れるだろ? だから・・・そうか、じゃあ!」

「技に頼る気持ちは分からんでもないが、お前じゃ俺の技、ほとんど扱えないぞ。」

「いや、技に頼るんじゃ無く、知識を教えてくれモリオン!」

「それなら構わんが、学者にでもなるのか? もしそうなら」

「違うんだ!」

「何がだ?」

「知識を武器に戦う戦士にしてくれ。 軍師では王には成れない。 でも、知識を生かして世界中を巡り、戦えれば、英雄になれる。 俺は誰かの下で平和を実現したいんじゃない。 自分の手で成し遂げたいんだ。 頼む、モリオン!!」

「・・・勝手にしろ。 だがそれなら、俺が懇切丁寧に教える必要いも無い。 自分で学べ。 着いて来い。」

そう言うとモリオンは立ち上がって通路の奥へと歩き出し、ルーケも訝しげに着いて行く。

「そう言えば、この通路ってどうなってんの?」

「ああ、壁を境目に、異次元に通じているんだ。」

「い・・・いじ!?」

「現状でこの力を使えるのは俺だけなんだけどな。 残念な事に。 まあそんな事はどうでもいい。 ここだ。」

そう言って、ガチャッと開けたのは、ルーケに与えられた部屋から3つ先。

どこまであるの〜・・・の〜・・・の〜・・・。

と、入り口で叫んだらエコーがかかりそうなほど、広い部屋に所狭しと何列もズラ〜ッとギッシリ本の詰まった本棚が、遥か彼方まで続いていた。

「世界の始まりから現在までの歴史、現在ある全ての魔法と、過去に失われた魔法などを完全に網羅した魔術書、罠の知識や狩りの仕方などなど、まあ、ここにある書物で分からない事は何もないな。 好きに調べな。 魔術書は読めないだろうが、もし読めても声に出すなよ。 下手すりゃ死ぬぞ。」

「・・・マジ?」

「他にも、魔術書の中には禁断の呪いが掛かった物があるからな。 触っただけで力を吸い取られるような感じがしたり、冷たすぎたり、ゾクッとしたら手に取るのはやめておけ。 持ち主を選ぶ魔術書もあるしな。 知識を得るだけならそっちは関係ないし、知りたい事は好きに調べな。 で、次だ。」

モリオンはそう言うと、更に二つ奥の扉を開けた。

今度は中央に一体の人形があるだけで、他には何もない広い部屋だった。

その人形も人型というだけで、顔も無ければ腕や足もまともに作られていない。

言ってしまえば、人型に作っただけのヌイグルミを、そのまま木製にした感じだ。

その人形に歩み寄ると、モリオンはポンポンと頭を叩いた。

「こいつは通称ドール。 コマンドワード次第でいろんなものに変化する。」

「ドール? 変化??」

「そうだ。 サーバントはこないだ使って見せたが、あれの上級版と言ったところか。 サーバントは人間の姿に成って、従順に命令に従うだけだからな。 こいつは知能も兼ね添える。 ま、使ってみるか。 アンポ。」

ボウンッと、ドールの足もとから突然煙が吹き出し、一瞬だけ全身が包まれ。

煙が消えた後に現れたのは半裸の物凄く美しく、物凄く色っぽい美女だった。

「おおぉ!?」

美女はルーケに向かってニコリと微笑むと、ウインクした。

「夜、一人で寝るのが寂しかったら添い寝でも頼みな。 本来の使い方じゃないけどな。 アンポ。」

ボウンッとまた煙に包まれ、再び人形に戻る。

「で、だ。 こいつを使って、勝手に剣の稽古もしたければしな。」

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