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愚者の舞い 9

 確かに目は良く覚めたが、同時に人生も終わる直前だったため、素直に礼を言う気も起きない。

憮然としながらルーケは、モリオンが持って降りて来た自分の荷物を背負うと歩き始めようとして、襟首掴まれて止められる。

「グエッ。」

首が締まってカエルが潰れたような声が出る。

「そっちは街道だ。 方向音痴かお前?」

「あれ?」

慌てて辺りを見回すと、確かに昨日来た・・・と、そこで気が付いた。

暗闇なのに良く見えるのだ。

そう言えば暗い地面に落とされたのに、シッカリと地面が見えていた。

(暗闇に目が慣れたため・・・か?)

それにしては昼間のように良く見えるのが気がかりで不可思議なのだが。

「なにトンビが油揚げ攫われたような顔してんだ?」

「それ、が じゃなく に だよな?」

「そんだけひょうきんな顔してんだよ。」

「むぅ。」

「さて、行く前にお前の装備を点検しよう。」

そう言いつつ、モリオンは丹念にルーケの鎧などを点検し始める。

「え? どっかおかしいかな??」

「鎧を着ているのは見りゃわかる。 だが、これから襲撃するために静かに前進し、配置に付かなければならん。 どうせ消音処置してないだろ? お前。」

「そんなに煩いかな。」

「静まり返った闇の中では、僅かな物音も響き渡るものさ。」

ド〜ン!

「な?」

「本当だ。 よくきこ・・・えぇ!? これってゴブリンの巣の方向じゃぁ!?」

「そのようだな。」

「そのようだって落ち着いてる場合か!? 急がなきゃ!!」

「急いで行ってどうする?」

「だって誰かが襲撃しているって事だろ!?」

「そうだな。 どっちの魔法の音か分からんが。 よし、これでいいか。 もはや意味はないが。」

「ほらモリオン急いで!!」

「だから、急いで行ってどうすんだ。 いいか、ゴブリンは一か所だけに被害を及ぼすわけじゃない。 それこそ巣を中心にして広範囲になる。 他に被害のあった人や国が他の冒険者雇っててもおかしくないだろ。」

「だったらなおさら急がなきゃ!」

「んで、その場合早い者勝ちになるんだ。 今から急いで駆け付けて協力しても、無駄骨だ。 それに襲撃しているんならそれなりに準備してから攻めているだろうから、罠なんか張ってるかもしれん。 それに引っ掛かったりして邪魔するのも信義に反する。 それにお前がノコノコ突っ込んで行っても足手纏いにしかならんだろ。」

「じゃあどうすれば!?」

「落ち着いてゆっくり行けばいいさ。 他の誰かが退治しても、依頼成功には違いないしな。 ゴブリンキングは倒しているわけだし。」

「・・・そういうもんか??」

「そういうもんだ。 暗視の魔法をかけてあるからめくらになる事はないだろう。 ゴブリンか襲撃者が罠を張ってるかもしれんから、それに注意して進むぞ。 お前は罠の知識無いだろうから、俺の後に付いて来い。」

「暗視の魔法!? 道理で・・・。 って、いつの間に??」

「お前が寝ている間に。 行くぞ。 万が一負けてるようなら手助けしてやらんとな。」

(それで良く見えるのか。)

納得できたルーケである。


 ゴブリンの巣まで、結局罠は無かった。

だがどうやら、襲撃者の方には罠が張ってあったらしく、不意を衝いての襲撃に失敗したようだ。

魔法の明かりで煌々と照らし出された洞窟入り口付近で、ワラワラ湧いて出て来るゴブリンと4人の冒険者らしき人々は激戦を繰り広げていた。

「これは・・・助けよう!」

「いや、その必要がある様には見えんが。 良く見ろ。 有利に戦いが進んでいるだろ?」

「・・・でも、何があるか分からないじゃないか。」

「その通り。 ま、不利になるまで見学だな。」

モリオンの言う通り、ゴブリンは数が多いが冒険者達に次々倒されて逝った。

「中々の手足れのようだな。 連携が見事だ。」

言われて意識して見てみれば、確かに見事に息が合っていた。

戦士と盗賊(シーフ)が壁になってゴブリンを押しとどめ、黒魔法使いは後ろから魔法でゴブリンを攻撃し、白魔法使いは負傷した仲間を手際よく治していく。

ゴブリンは魔物の中でも最低レベルと言われるが、この戦いを見れば納得もできる。

もっとも、そのゴブリンに後れをとった自分はなんなのか、ルーケは空しくもなったが。

そんな事を考えている時、突然洞窟の闇の中から光り輝く矢がゴブリン達の頭上を飛んで来て、黒魔法使いの胸に突き刺さり打ち倒す。

「ぐあ!」

「チムニ!! 今治すわ!」

だが、白魔法使いが魔法を唱えるより早く、もう1本光る矢と、光る球体が飛んで来た。

黒魔法の光の矢と精霊魔法の光の精霊だ。

共に初級攻撃魔法だが、体力の少ない魔法使いでは耐えきれるかどうかギリギリであろう。

それも抵抗に成功しての話である。

攻撃魔法は打ち消す事が出来ないため、自分の魔力で抵抗してダメージを半減、またはもっと相殺する事が出来る。

しかし、先にダメージが入っているため、意識が無かったりしたらモロにくらう事になる。

これはやばいのでは、と、ルーケがモリオンを見た瞬間にはすでに行動に移していた。

「打ち消せ!」

モリオンが強く声を発しながら小剣を突き出した瞬間、ろうそくの火が吹き消されるように光の矢と光の精霊は消滅した。

「「「!!??」」」

あまりに非常識な結果に、ゴブリンも冒険者達も動きが止まり、モリオンとルーケを振り返って初めて彼らの存在に気が付いた。

洞窟からは信じられないと言わんばかりに、3匹の異質なゴブリンが姿を見せた。

「ヘルファイヤー!」

モリオンの声と同時に、異質なゴブリン三匹の足元に淡く輝く1つの魔法陣が現れた。

「キョヒ!?」

3匹はそれに気が付いて逃げようとした時、魔法陣がギガッと軋むような音を立てて内輪が回り、火炎が魔法陣から噴き出してその身を蒸発させる。

暫し呆然とする冒険者達とルーケ、そしてゴブリン達。

いち早く行動に移ったのはゴブリン達だった。

敵う相手ではないと悟るなり、洞窟に戻らず、個々に四方に逃げ出したのだ。

「いかん! 逃がすな!!」

戦士の男がそう叫び、追討しようとしたが。

「光りの矢!」

モリオンの突き出した左手の先に光り輝く球が現れ、そこから数十もの光り輝く矢が放たれて、全てのゴブリン達を複数本ずつ射抜き消える。

あまりの結果に、冒険者達もルーケも呆然と見ているしかなかった。

「お邪魔してすいません。 同じ依頼を受けたようですね。 ところで、そちらの方。 先ほど負傷したようですが大丈夫ですか?」

にこやかにそう言われ、ハッと白魔法使いは気が付き、慌てて倒れている仲間に回復魔法を唱え始めたのだった。

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