第8話 小鳥は人見知り
私はだいぶ大きくなった。
魔法を使っては気絶の繰り返しで、生まれてからどれくらいたったのか分からない。
小鳥は今日も一緒にくっついている。
名前は決まっているけど、まだ、呼んでいない。
私がだいぶ話せるようになったので、明日皆の前で小鳥の名前の発表をすることになった。
それまで、呼ばないようにしている。
心の中でも、直接呼ぶまで呼びたくない。
もし、この名前が気に入らなかったら、他のを考えようと思う。
ハイハイもできるようになったけど、まだこの部屋から出たことはない。
明日から誰かが付いていれば出てもいいことになっている。
明日はなにがあるのだろう?
ちなみに、この国では、1日を24時間、1ヶ月を30日、1年を360日としているみたいだ。
リクお兄ちゃんが、自慢げに私に話してきた。
その横で、カイお兄ちゃんは苦笑いしていたけど。
カイお兄ちゃんは時々絵本を読んでくれる。
文字は日本語ではなかった。
でも、することもなかったから、頑張って文字を覚えた。
しっかり、物を握れないから書けないけど、読むだけならもう大丈夫だ。
会話はなんか分かる。
不思議だよね。
「アリーチェ起きてるか!!」
毎度のことながら、リクお兄ちゃんは扉をばんっと開けながら大きな声で元気に入ってきた。
これ、私が魔法で耳を強化して、来るのが分かっていなかったら普通に怖いよ。
「リク、もう少し、静かに入りなよ。アリーチェがびっくりする。」
つづけて、カイお兄ちゃんも入ってきた。
「わりぃ、わりぃ。アリーチェ!小鳥の名前は決まったか?」
たぶん、また次もやるな。
カイお兄ちゃんも分かっているのか、大きなため息を吐きながら静かに扉を閉め、入ってきた。
リクお兄ちゃんは私が小鳥の名前を決めてないと思っているようだ。
でも、私は大分前に決めている。
それこそ、名前を決めていいって言われた日に。
「だいよぶらよ!」
まだ、綺麗には話せないし、ゆっくりだけど、話せるようになった。
「そうか!そうか!良かったな、小鳥!」
リクお兄ちゃんはそういって、私の肩に乗っている小鳥を撫でようとした。
でも、この小鳥は逃げて、反対の肩に乗った。
いつものことだ。
「まだ、俺のこと慣れないのか?」
ちょっと悲しそうにリクお兄ちゃんは言う。
たぶん、人見知りなんだと思う。
でも、リクお兄ちゃんが持ってきた時はそんなことなかったから、急に人見知りしちゃったのかな?
私はそっと、肩に手を近づけた。
すると、小鳥は私の手に乗ってくれた。
安心させるように、頭を撫でてあげる。
「なんで、買ってきた俺よりアリーチェに懐いてるんだ!?買った時は大人しかったのに。」
リクお兄ちゃんは結構すぐ、拗ねる。
「まぁまぁ、リク、初めより進歩したじゃん!リクが近づいても反対側に逃げるだけでしょ?」
そうなのだ。
初めの頃はもっと人見知りを発揮し、リクお兄ちゃんが部屋に入ってくると、部屋の隅の角の1番上の天井まで、逃げてた。
ちなみに、カイお兄ちゃんの時もだ。
カイお兄ちゃんはリクお兄ちゃんよりもショックだったようだ。
カイお兄ちゃんが近づいて、動物に逃げられたことはないらしい。
というか、この小鳥威嚇してたんだよね。
初めの頃は。
どんだけ、人見知りなのか。
天井まで、逃げたあと、いきなり、とても早いスピードで、リクお兄ちゃん目掛けて突っ込んできた時は焦った。
急いで、「大丈夫だよ!おいで~」って思いながら手を広げた。
この時はまだ、全然話せなかったから。
それで、安心したのか、方向転換し、座っていた私に優しく飛び込んでくれた。
人見知りしすぎて、攻撃的になってたんだなって思った。
「そうだな。アリーチェ!明日はアリーチェが生まれて、1年がたつからそのお祝いだって!」
1年もたってたんだだ。
意外とたってるんだな。
「アリーチェは俺たちの時より成長が早いってお母さんもお父さんも喜んでたよ。特に、お父さんが。」
そうなんだ。
まー成長早いって言うのは前世の記憶があるのも関係しているかもね。
ていうか、最近お父さん見てないな。
お母さんとお兄ちゃんたちが毎日来ていているけど。
まー寝ている時に来てたかもしれない。
「お父さん来る時、いつもアリーチェ寝てるからね。」
あ、やっぱそうなんだ。
ごめんね。
そして、次の日。
1歳の誕生日だ。
そして、今日から色々なことができる。
お兄ちゃんたちも抱っこしてもいいことになった。
でも、外に出る時と階段を降りる時は大人が見ている時となっている。
ついに、小鳥の名前発表だ!!
「アリーチェ、名前は決まった?」
お父さんが私に聞いてくる。
今は私はお父さんのお膝の上だ。
私が寝てて、お父さんは不貞腐れていたらしい。
リクお兄ちゃんに似ているとカイお兄ちゃんは言っていた。
「あい!!きまえゆ!」
私はそういって、手で抱いていた小鳥を机の上に置いた。
「あなちゃのなまえは」
ちゃんと言いたくて、これだけいつも練習した。
菜々(ナナ)って呼べるように、「な」だけ練習した。
「菜々(ナナ)」
私はそういって、小鳥の名前を呼んだ。
ずっと言いたかった名前だ。
気に入ったのか、菜々(ナナ)がうなづいたように見えた。