7月1日の物語(本戦前)①
長くなりそうな予感がしたので一回区切ります
◇は少し時間が過ぎての視点変更とかです。変化しないこともあります。○は同時刻の視点変更です。
●7月1日 10:00 陽の日 学園闘技場
本戦出場者を決めるためのバトルロワイアルから1日空いた7月の初日。
「無事に本戦出場果たしちゃったねー。」
「まぁ試合の序盤を見ただけでも大丈夫ってのは悟れたね。」
「パッと見ただけでも強そうなのはたくさん居ましたが、気迫だけならルークは負けてませんでしたからね。」
3人は現在昨日と同じように観客席に座りながらもぐもぐと食べている。
「こっからの本戦はトーナメント形式でしょ?ルークのクジ運はどうだったかな?」
「クジ運でどうにかなるようなモノではないと思うのですが。」
「クジでいい所が引けたらそれはもう勝利の女神さまが微笑んでるのと同じだよ!」
「それならルーク以外の人もいい所引いたら誰に微笑んでるのかな?」
「え・・・・?」
◇
ルークは彼に割り当てられた控室で集中していた。
彼自身の性格故なのか、じっと目を閉じるような集中の仕方は彼に合わないらしく、彼にとっては剣の手入れが集中するためのルーティンとなっている。
手入れをしながら初戦の相手への作戦を考える。昨日1日使って集めた情報によれば相手は学園内ではそこそこの有名人であり簡単に集まった。
まさか最初から貴族と当たることになるとはなぁ・・・・。
エーレル・ベルン――イノサンス学園の3年生であり、貴族である。小さい頃より親からの英才教育を受けてきたおかげか剣の扱いにおいては学園内随一とも言われている。
近接科に所属してれば勝手に耳に入ってくるほどの有名人かよ。話したことも目にしたこともねぇからどんな奴か全くわからねぇなぁ。ただこの剣の練習台にはちょうどいいな。どこまでやれんかな・・・。
彼の心の奥底に暗い火がチロチロと燈り始める。あまりの名前の大きさに気後れしてしまっている。
いや、目的は優勝じゃねぇ。目的はこの剣の練習だ。次への道が見つかればそれだけで十分な収穫だ。
彼は自身に言い聞かせる。「目的を見失うな。本当の目的なら負けても大丈夫だ。」と。
コンコン・・・・
「ルーク選手は居ますでしょうか?そろそろ準備をお願いします。」
彼は「わかった。」と一言だけ言い手入れを止める。
準備はしてきた。あとは作戦がどれだけ通用するかだ。
彼は立ち上がる。彼は引き下がるわけにはいかない。彼は倒すべき相手を倒すまで止まらないと決めたから。
○
彼は1人控室で静かに瞑想していた。愛用の剣は傍らに立てかけておられ、主人の目覚めを静かにじっと待つ。剣を一振りすれば優雅になびく彼の金色の髪も今はただ垂れ下がっているのみであり眠っている。
彼はふと思い出す。伯爵である父親との約束はこの大会での優勝である。いつもはそのようなことを言ってこない父だが、今回の大会にはやけに口を出してくる。ましてや「優勝をしてこい」と言われたからには優勝賞品が目当てであることは十中八九間違いないことを彼は確信していた。
だが彼は分からなかった。何故父親が賞品に固執するのか。今回の大会は普段とは違うということは知っているが、何かまでは知らない。
なぜ父上は賞品を求めるのだ・・・。そこまでして欲するものとは一体なんなんだ・・・。
父親は伯爵である。そんな彼が望めばほとんどの物は手に入れることができるだろう。しかし彼は賞品を欲する。息子には父親の考えも賞品も全くわからないまま大会へと出場した。
父上の考えは分からない。だが優勝してこいと言われたのならばするのが私の役割だ。
彼は自身の世界から目覚め前を見据える。
剣は主人の眠りを察知したかのように仄かに輝きを帯びる。
彼は鋭く前を見据える。たとえそこに一筋の光も射さない闇が広がっていたとしても。
闘技大会本戦がいま始まろうとしている。
②はそのうち・・・




