6月23日の物語(お店の手伝い)
疲れた・・・
●6月23日 10:00 土の日 黒鉄の武器屋
「ギャリさんこんにちはー。」
「お、来たか。今回は受けてくれてありがとうな。」
武器屋の店員であるギャリは頭に布を巻き上はタンクトップ、下はニッカを履いており、白い歯を見せながらニカッと笑った。
「ブランさんは元気にやってるー?」
「親父なら今日も朝から鍛冶してるよ。」
「それよりもお前ら、受けてくれたのはありがたいがここしばらくは大変だからな。根を上げるなよ。」
「そりゃなんでだ?」
「お前らの学園で闘技大会が間近だろ?それで急に武器のメンテナンスとかを頼むやつが来るからだよ。」
「そんなに来られるのですか?」
「いいか、お前らに言ってもわからないだろうが、ガキの計画性の無さを舐めるなよ。」
「えぇ~~そんなに無いかな?」
「手伝ってれば実感するさ。」
「ほんとかよ。」
「まぁいい。親父は裏に居るから挨拶してこい。」
「じゃあちょっと行ってきます。」
クーたちは奥にあるドアから裏の工房へと入る。
「うわ熱っつ。」
「急に暑くなりやがったな。」
「多分・・・魔法的な仕掛けじゃないかな。」
「きっとそうだと思いますよ。教会にもこんな感じのことが起きますし。」
「おめえら入り口で何やってるんだ。はやく入ってこい。」
声がしたほうを見てみればブランが鍛冶用の椅子に座りながらこっちを見ていた。その手にはハンマーとハサミが握られており、炉にはいまだすべてを灰にしてしまいそうな炎が燃え盛っている。
「いえ、依頼を受けたのでそれの挨拶に・・・。」
「あぁそういうことか。わざわざありがとうな。悪いが、スケジュールが詰まってるから鍛冶の方に戻らせてもらうぞ。」
「あ、はい。」
「邪魔してはいけないですし、はやく出てしまいましょうか。」
熱さから逃げるように4人は工房から出る。
「お、戻ってきたか。工房は熱かったろ。」
「えぇはい。あのなんで工房に入った瞬間熱くなったんですか?」
「工房には熱が他の部屋に伝わらないように魔法の仕掛けをしてあるんだよ。」
「へぇ、そんなのがあるんですか。」
「まぁ一般の人で使う場面はそうそう無いからな。」
「さてと、依頼の内容を説明をするぞ。大まかに分けて、商品の整理にお客さんの対応の2つだ。」
「商品の整理っていうのは?」
「お客さんが武器を買ったりしたならその場所に新しい武器を置くとかだったり樽に入っている武器に錆びている物があったらそれを樽から出すとかだ。」
「じゃあそっちは男衆の役割だね。」
「そうですね。私たちはお客様の対応の方が合っている気がします。」
「適材適所ってやつだね。それでいいよ。」
「俺はその分担でいいぞ。」
「決まったみたいだな。じゃあこのバッジを付けろ。これで店員ということが一目で分かるようになってるからな。」
ギャリが差し出してきたバッジには黒をベースにしたハンマー2本が斜めに交差しているデザインがされている。
「じゃああとすこしでお店を開けるから、適当にくつろいでいてくれや。」
「「「「はーい。」」」」
◇
●同日 19:00 土の日 武器屋
「お疲れ。1日やった感想はどうだ?」
武器屋の本日の営業が終了した後、2名はケロリとしており、2名は「私疲れました」を全身で表現していた。
「疲れたー・・・。」
「これは予想外でした・・・。」
「自分はそんなでもないかな。」
「俺もそんなに疲れてないな。これくらいなら全然大丈夫だな。」
ラパンとサリュはカウンターに体をグデーとうつぶせのまま死んでいる。いや、死んでないけど。
「そっちはいいよね・・・。物を運ぶだけだもん・・・。」
「まさか作り笑顔を終始顔に張り付けるのがあんなに辛いだなんて・・・。」
「なんか精神的に疲れた・・・。」
ラパンの耳は彼女の精神状態でも表しているのかペタンをしており、元気が全くない。
「こりゃ相当参ってるな。」
「ですね。」
「だが、期限内まではしっかりと働いてもらうからな。」
彼がこの依頼を出したのには先ほど彼が言ったように大量の学園生徒が急に武器を持ち込んでくるため人が足りなくなるからである。それならもちろん依頼内容の期限も察せるだろう。
「期限っていつまでだっけ・・・?」
「確か大会の2日前だった気がします・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「「はぁ~~~~~・・・・・。」」
2人から重く辛いため息が出る。
「これは重症すぎじゃ・・?」
「まぁこいつらのことだから飯でも食って寝れば立ち直るだろ。」
ここでこの考えが出てくるあたりやはりこいつは脳筋というのが再認識できる。しかしいざ戦闘方面に目を向ければ輝くものはあるので脳筋というより、動物に近いのかもしれない。
「あの2人はお前ほど単純じゃないよ・・・。」
「そうかぁ?案外それでどうにかなるもんだがな。」
「はぁ~~・・・。」
クーもたまらずため息を吐く。ついでにこめかみのあたりもグリグリしている。
「決めた!」
「教授のところに突撃する!!!」
「何言っちゃってんの?」
ラパンの突然の不可思議な発言にクーは語調を崩す。
「何を?じゃないよ!あのときケーキを奢ってもらう約束をしたじゃん!」
草の墓の調査終了後に彼らは教授と会う機会があったのだがラパンがそこで「ケーキを奢って?」とあざとく上目遣いで教授に頼んだところ快く了承したのである。その時の教授の目は正にジジバカのそれであった。
「いやあれはどう考えても社交辞令とかそういう類のやつだろ。」
クーが正論で説き伏そうとする。
ルークは腕を組んで目をつぶっている。これは「俺は何も関係してない」の意思表示である。脳筋なのに危険察知が優れているあたりやはり動物とか獣に近いのかもしれない。
「クー知らないのですか?」
そこにサリュが加わる。彼女に目にハイライトは無く、真っ暗の暗闇が広がっていた。
「何をかな・・・?」
クーは碌なことじゃないと思いつつ顔を引きつらせながら聞く。
「男に二言は無いんですよ?」
予感的中。クーはとっさに魔法で2人の体を捕らえようとする。
「あっ!」
「あぁサリュ!」
「行くのですラパン!あなただけでも!」
「うぅ・・・。」
「行くのです!私の分まで!」
「分かった!あたし頑張る!」
なぜか悲劇のヒロインを演じるラパンとその友達を演じるサリュの寸劇が即興で行われていた。そんな状況でサリュを捕まえラパンを捕まえようとするクーは悪役といったところか。
「頑張るじゃねぇよ!大人しく捕まれっての!!!」
クーさんキレる。
「おいルーク!お前も手伝え!いつまで無関係の立場を貫くつもりだ!ここに居る時点で同罪だっての!!」
ちなみにギャリは一番先に逃げている。何気に一番危機察知能力が高い。
「うむ。」
ずっと目を閉じ腕を組んでいたルークがそう呟く。これを聞いたクーは勝ちを確信し某計画通りのしたり顔を披露している。
「面白そうだから俺は教授を呼んでこよう。」
「はぁぁっぁぁぁぁあぁぁぁあ!???!!!?!?」
クーさんキャラ崩壊。
「正直な話、俺もケーキが食いたい。」
「お前がケーキとか一番似合わないんだよ!!!!!!!!」
「仕方ないだろ食いたいんだから。」
「だったら最初からそう言えよぉぉぉぉぉっぉぉ!!」
「もうやだ・・・・。」
クー心折れて膝をつく。
「さきほどから大きな音がしているが大丈夫かね?」
そこに教授が来てしまった。
その声に4人の顔がグリンッと教授の方を向く。
「誰かと思ったら君たちじゃないか。何をしているのだね。」
「教授・・・逃げて・・・・。」
クーはそう言い力尽き倒れる。
残りの3人はそれを確認するとお互いにうなずき合う。
「そんなにお互いにうなずき合ってどうしたのかね・・・。」
「教授?」
「草の墓調査完了後に会ったときケーキを奢ってくれるという約束をしましたね?」
「む?まぁ奢るとは言ったが、あくまであれは―――」
「男に二言は無いらしいぞ?」
ここにきて教授は状況をなんとなく理解する。
「ふむ・・・・。」
教授は顎に手を置き考える。めんどくさいイベントから逃げ出すために。まさか彼も友達との飲みの帰りでこんなことに巻き込まれることは予想していなかった。
「ふむぅ・・・・・。」
顎に手を置き教授はうなりながらうろうろと店の中を歩く。
それを見てる3人。
「う~~~む・・・・・。」
教授はそのまま店を出ていく。うなりながら。顎に手を置いたまま。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
沈黙が訪れる。
「「「逃げた!!!!!!」」」
3人は速攻で追いかけだす。カモを捕まえるために。
その日3人の冒険者が衛兵に説教をされ、1人は治療院に運び込まれた。
多分あと1本あげます・・・




