4月28日の物語(探索編)(午後③)
本気を出せば一日で投稿することくらい訳ないんですよ・・・・
●同日 16:36 最奥
≪クエスト――”今は昔の思い出”――が開始しました。≫《BGM――壊レタ感情――を再生します》
「ルークさんはあくまで妖精を惹き付ける役をお願いします!クーさんは魔法を使って少しづつ削ってください!」
「俺には魔法なんて使えねぇぞ!」
「物理でも大丈夫です!黒い靄に変化する時はあいつは何も出来ません!人型が保てない以上、彼女は魔法を使うことも出来ません!せいぜいが少し移動するだけです!黒い靄から戻る時も同様です!」
「そういうことかよっ!クー!上手く合わせろよ!」
「任せろルーク!」
ルークはクーが返事したのを聞いたあと、大剣を右斜め下に構えた状態で駆け出した。
妖精は迎撃のため魔法式を素早く書き魔法を発動する。
ルークはそれを避けながらも一直線に駆けていく。
「サリュさんはしばらく補助をお願いします!きっと彼女は魔法を多様してくると思うので、魔法に対する聖祈をお願いします!」
ノックの突然のリーダーシップに普通の人なら迷う。そこは冒険者でもある彼らは即座にノックの指示に従ったほうが良いという判断を各々で下した。
「サリュ!ラパンは最奥に入るための通路の近くに置いておいたから流れ弾が当たっても大丈夫なようにラパンにも頼む!」
クーは一方的に頼んだのち、妖精に攻撃が通りやすい位置へと移動していく。
「ノックさんあなたは何をするのですか?」
サリュは顔を妖精へと向けたまま、指示を出すだけだして自分は何をするか何も言っていないノックを見る。
「私はクーさんと同じで魔法を使いますよ。剣も使えるのですが、残念ながら前回の敗北から近づくと恐怖が戦意に勝ってしまうんですよ・・・。」
「そうですか。なら早くクーと連携をしに行ってください。私たちは聞きたいことがたくさんあるのですよ。」
「そうですか。そのときはどうぞお手柔らかにお願いしますよっ!」
ノックは軽く笑いながらクーの元へと向かう。そこに戦闘が始まる前の雰囲気は無く、リラックスしているように見える。
「『主よ我ら堕ちし者を浄化する者なり。我ら主の怨敵に主の鉄槌を下す者なり。主よ我らに祝福を。』」
サリュの聖祈による祝福によって全員の身体能力が向上する。
「『主よ我ら堕ちし者を浄化する者なり。我ら主の怨敵の魔を退けるものなり。主よ我らに祝福を。』」
2度目の祝福によって全員の魔法耐性が上がる。
「行くぜおらぁ!」
ルークは身体能力と魔法耐性が上がったことを感覚で感じながら再度妖精へと突撃する。
「危ないルーク!」
妖精はルークが突っ込んでくるのを予測してたのか、その手には魔法陣が浮かんでいた。
「ちぃ!」
クーは魔法の内容を推測しようとするも、既に魔法式が出来上がって魔法陣が浮かんでいる状態では属性までしかわからない。
あの色からして属性は水・・・ならばルークの前に土の壁を出せばどうにかなるはず・・・!
クーは学園で習った土壁を出す魔法式にアレンジを加え、大きさと出現位置を変更した。
これだとルークも土壁に突っ込むことになるけど、あのフルプレートアーマーなら大丈夫なはず!
妖精が魔法を発動した瞬間、妖精の手から水球が3つ一直線上に並んだ物が発射される。
大きさはざっと1mくらいで統一されており、進む速度も一緒である。
「うぉ!やば!」
間に合え・・・!
クーは即座に魔法を発動する。水球の先頭とルークの間は3m程度だ。その中間地点の地面から土が盛り上がっていき、高さ2mの壁を形成する。
水球は壁に辺り、水しぶきをまき散らしながら消える。水球が当たった場所は大きく抉れており、まともに当たったらただじゃないのは容易に想像できた。
ルークは空中で態勢を変えたあと土壁を蹴って地面へと力のベクトルを変えた後、地面に着地した。
セーフ!
「クーサンキュー!」
「少しは気をつけろ!」
「クーさんサポートに来ました。それでクーさんは攻撃と守りはどっちが得意ですか?」
「それは助かります。どちらかといえば攻撃のほうが得意です。」
「それならクーさんは攻撃に集中してください。防御に関しては私に一任させて構いません。」
「了解です!」
「サリュさん!いつでも一撃を下せるように準備をお願いします!」
「わかりました!今から向かいます!」
サリュは聖祈を始める。武器に属性を纏わせたら合流するみたいだ。
「クー!準備は出来たか!?出来たなら行くぞ!」
ルークは戦闘が楽しいのか荒くなった呼吸を整えずに三度駆け出す。
「お前は少し待つことを覚えろこのバカ!」
クーもそれに続いて駆け出す。クーは元々魔法を剣の組み合わせを中心にした戦い方であるため彼本来の戦いをするには近づく必要がある。
戦場は彼らの会話で賑わっており物哀しいBGMがかかっていないように思える。
真っ直ぐ突っ込むと魔法で迎撃されるのを学んだのか、彼らは左右に分かれ妖精の周囲をグルグル回りつつ少しづつ妖精との距離を詰めていく。
妖精もそれには気づいているようで、牽制の意味も込めて出の速い魔法を多用してくる。
「俺が最初に行くからそのあとにうまく当てろよ!」
「言われなくてもそんなのわかってるよ!」
「ならやってみせろよっ!」
妖精から1m離れた地点で妖精の視線がクーへと向いた瞬間ルークは突っ込む。
「もらったあああああぁああぁぁ!」
しかし、そんな初歩的な戦い方は当然読まれており、妖精はあらかじめ展開していた魔法陣に魔力を注ぎ現れた炎の渦を投げつけてくる。
「はああああぁあぁあぁぁぁ!」
しかしルークは止まらない。止まれないが正しいのだがそこに炎の渦からの被害を少なくしようとは露ほども感じられない。
ジュウウウウウウウ・・・・
ルークの右方向から水の奔流が来る。それはノックの放った魔法であり、高等技術をそれなりの魔力を要求される魔法である。
炎の渦が消えるのにはさしもの妖精も驚いたらしく、次への対応が遅れる。ここに戦闘経験の有無が現れた。
その結果妖精はルークの接近を許してしまい、切られる。
しかし、切られても妖精は黒い靄となるため何もダメージはない。
妖精は黒い靄から戻った瞬間、心が緩んだ。切られて動揺しない人物は稀有なのでその行動は仕方ないと言える。例え悪手であったとしても。
「もらったぁ!」
妖精が黒い靄から戻った瞬間目にしたのは、自身の目の前まで飛び込んできていたクーの姿だった。
クーの左手には魔法陣が展開されている。
そのことに気付いた妖精は避けようとするも、クーは剣を妖精の服に刺した。2人はそのまま一緒に先ほどクーが出した土壁まで飛んでいく。
クーは土壁にも剣を刺し、妖精を壁に縫い付けた。そのまま彼は剣を持ったまま両足の裏を壁に押し付け態勢を安定させ魔法陣を壁につける。
「『蝕む土!』」
魔法名を唱えた瞬間、壁の土が蠢き始め、妖精の体を包んでいく。
「・・・・!??・・・!!!」
妖精は逃れるため必死にもがくが既に両足と両手が土に包まれているため思うように力が出せない。
これはクーが学園で教わった魔法にアレンジを加えて必要魔力は多くなるけどもその分、相手を封実事に特化している。
「これで終わりかな?」
クーは壁に刺さっている剣を引き抜きながら確認する。
「えぇ。おそらくはこの状態なら魔法も使えないので大丈夫でしょう。」
今の妖精は両手両足を土に包まれ、さらに体の中心部分を土の輪っかで固定されているので何もできそうにない。
「それではサリュさんお願いします。彼女に安らかな眠りが来るようにどうかお願いします・・・。」
BGMの音量はいつのまにか小さくなっており聞こえなくはないが荒れた息を整える呼吸音が響く。
「いいのかよ?なんか顔見知りみたいな感じだったじゃねぇかよ。」
ノックは最奥に来た時から何かを警戒していたし、妖精が現れた時にもまるですでに会っているかのように振舞っていた。
「いいのです。見たところもう話せるような感じはしません。ならばすぐにあの世へと送るのが私に出来る最後の行いです。」
そこには悲しさを感じさせる表情はない。いや違う。彼は今すぐにでも泣きたいのだろうが、それを必死に堪えているようだった。
「わかりました。」
サリュはノックの願いを叶えるため歩みだす。
「さようなら・・・」
ノックから呟きが漏れる。
「主よ堕ちし者に永遠の安らぎを。」
サリュは神の元へと行けるよう願う言葉を唱えたのち聖属性を纏わせたメイスを振り下ろす。
「!・・・・」
妖精は食らった衝撃で顔を苦痛に歪ませ、血を吐いたのち体が透けていく。
これが妖精が死んだ時に起きる現象であり、妖精が死んだということを表している。
「さよなら・・・・さようならエーデル・・・尊き思い出よさようなら・・・・。」
妖精が消えていくにつれて、ノックから感情が溢れ出てくる。
そして、ほぼ消えかけの状態まで来たとき妖精は光となって消えていった。
彼の目からは大粒の涙が溢れてきており感情のダムが決壊していた。
「しばらく一人にしておこうか。」
「そうだな。」
「そうですね。」
クーの提案にルークとサリュは賛成する。
「私はラパンの様子を見てきますね。もしかしたら目を覚ましているかもしれませんし。」
「じゃあ俺もついていこうかな。」
ルークとサリュはラパンの様子を見に行くと言ってラパンの元へと向かった。
ふーむ・・・なにをしてよう・・・。
クーは完全に暇を持て余していた。
うん?あれは妖精の服か?暇だし鑑定してみようかな。何か出るかも。
完全な好奇心だけでクーは今だ泣いているノックの元へと赴き、残された服を鑑定する。
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【堕ちた妖精の服】
堕ちた妖精の服。彼女の着ていた服は妖精族に伝わる伝統的な服であり、緑や花は妖精族を表す象徴であり彼女もそれを誇りに思っていた。
彼女も昔はただ普通の妖精族の女の子だった。しかしある時から彼女は変わった。変わらされた。そして彼女は穢れ黒ずんだ魔力を持つようになった。それを使い復讐し彼女は堕ちた。
彼女が堕ちた時に彼女の記憶は無くなり、ただ老夫婦の墓を守るためなら何をするのにもいとわない存在となった。
彼女が大切にしていた思い出は彼女――エーデル――の名の通り尊き思い出へと昇華された。たとえ彼女はそれに気づかなかったとしても。
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変わらされた・・・・・ねぇ・・・・。
クーはここの一部分を不審に思いつつも、誰が、何のために。が何も想像つかないので考えるのを放棄した。
既に日は沈み夕焼けは草の墓の外を夕焼け色に照らしていた。しかし、最奥は暗く静まり返っていた。
≪クエスト――”今は昔の思い出”――をクリアしました。≫《BGM――壊レタ感情――を停止します》
次で終わります。




