4月28日の物語(探索編)(午後②)
遅くなりました・・・・
●同日 15:50 草の墓最奥
「それじゃ行くよ」
クーは隣り合って土が盛り上がっている2ヶ所の間に立つ。魔法を発動するためにさっき考えた魔法式を苦衷に書いていく。
よし、書き終わった。
魔法式を書き終わると土色の魔法陣が右手の手のひらに現れる。そのまま足元の土に手を置く。
これで魔力を右手に送るだけで発動するはずだ。
『震動する土』
魔法を発動した瞬間、決めた範囲の土が細かく震動するのが感じられる。ふと前を見れば震動させてるせいか十字架や花が小刻みに揺れている。
時間が過ぎるにつれて範囲内にある様々な情報が入り込んでくる。細かいところまでさすがに分からないが大まかな形とかは分かるようになっているのである程度は判断が出来るはずだ。
◇
「それで何かわかったの?」
「大まかな形だけは分かったよ。」
「どんな形なんですか?」
「結局のところ掘り起こしてないので断言は出来ませんが、土が盛り上がってるところには夫婦の遺体が埋葬されていると思って大丈夫です。」
「分かったのはそれだけなのか?」
「いや、それがあのお花が咲いてるところに何かあるみたいなんだよね。」
「何かってなんだよ?」
「詳しくはわからないけど大きさ的には本くらいかな?」
「それってさ、あたしたちが探してる薬草の本?」
「なんとも言えないけど場所的にはその可能性が高いね。」
「とりあえず花を傷つけないように引き抜いてみようぜ。」
「それもそうだね。」
「それならあたしに任せて。木津をつけないで引き抜くのは得意だから。」
ラパンの両親は革細工関係をしていたがラパンは子供の時からほかの人の畑仕事を手伝っていたのでそういうのは慣れているらしい。
「よし、それじゃちょっとやってくる。」
ラパンはそう言ってトテトテと花のほうに向かう。
「おうよ。」
「気を付けるのですよ。」
ルークとサリュがそう言った時にはラパンは既に花の元へと着いており、茎部分の土を掃っている。
「さっきから黙りこくってますけど、どうしたんですか?ノックさん?」
ノックはさっきまでの穏やかな様子から打って変わってピリピリと張り詰めた雰囲気を纏っている。
表情もさっきまではどこか頼りない感じだったが、今はキリッと引き締まっており何かに警戒しているようだった。
「ノックさん?」
「クーさん2つだけ謝っておきます。1つは嘘をついたことです。私はここに何回も来ました。そして逃げました。そして2つは―――」
―――あの少女を危険な目にあわせることです。
花を引き抜こうとした瞬間ラパンの居たところで爆発が起きる。
「ラパン?!」
突然のことに誰もラパンの元へと駆け出すことが出来なかった。
「何が起きたんだ!?」
ルークは少し遅れて復帰したのか驚愕を表しつつもラパンの元へと駆け出そうとする。
「待ちなさいルーク!」
しかしサリュが腕をつかんでそれを止める。
「なにすんだよ!」
突然のサリュの行動にルークだけでなくクーも驚く。唯一ノックだけが何も動じず煙が晴れるのを待っているかのように立っている。
「ラパンの居たところから強い聖祈を感じます。感じる強さから言ってラパンは大丈夫です。」
「そんなに強い聖祈をノックさんが・・・?」
サリュの言葉にクーは混乱する。ノックの話を聞く限り彼が教会に属しているという雰囲気は何も無かったからだ。
「ノックさんあなたは一体何者ですか?」
サリュが疑惑に満ちた目でノックを見る。
サリュに釣られてクーとルークもノックのほうを見るも、彼の意識は文字通り空中へと向いているようだった。纏う雰囲気は変わらないものの目は先程より、より強くなっている。
「何も言わなかったことは謝ります。事情も説明します。でもその前にあそこに居る彼女を――堕ちた妖精――を一緒に倒してください。」
ノックの言葉に3人が彼と同じ方を向く。
そこには黒ずんだ衣服を纏った何かがこちらを見ている。ポーランドのマゾフシェ地方の民族衣装のようにスカートは緑と黒を基調とし、上着は袖は白く体の部分は黒をバックに色とりどりの布で花があしらわれている。
髪と目は緑色だがそれすらも黒ずんでいる。
一見綺麗な服に見えるが、装飾のための花はぼろぼろになっており生地が小さく裂けているところさえある。
「ノックさん彼女は一体・・・?まさかとは思いますが・・・・。」
「彼女からは濁った気配の魔力を感じます。ほぼ確実に童話に出てきた妖精でしょう。」
「そのまさかだったなクー。」
3人は軽口を叩きながらも己の武器を構え、いつでも戦闘に突入できる体制になっている。
「サリュさんの言う通り彼女は童話に出てきた妖精です。両親が死んで以降、墓を荒らす存在を殺すようになっているんです。」
「なんでそれをあなたは倒そうとするんだよ。ようは墓守みたいな存在だろ。」
「それが願いだからですよ。」
ノックがそう言った直後、妖精が動き始める。
「ちぃ!まずはこいつを倒してからだ!みんなこいつを倒してノックさんに打ち上げの食事を奢ってもらうぞ!」
「おうよ!」
「はい!」
「出来るだけ安いところでお願いします!」
「「「無理!」」」
クーが気合を入れるための声を張り上げた後、BGMが掛かり始める。
音聞く限り、楽器はピアノのみだが低音がリズムを奏でつつ、時折高い音が低音に合わせるように入ってくる。低音は自らを主張しつつも高音が入ってきた瞬間、即座に高音のサポートになり高音を女性的な音にしつつ激しい自己主張の強い音に変えてくる。
まるで誰かの悲しみを表しているかのように聞こえる。この悲しみは誰の悲しみなのか。妖精か老夫婦かはたまた―――
「まずはラパンだ!ノックさんの言うことが正しければ無事なはずだ!」
「えぇ!死にはしていないでしょうが気絶くらいはしてるかもしれません!」
「俺があいつを引きつけるからクーがラパンを頼む!」
「わかった!」
「サリュさんはルークさんに補助用の聖祈をお願いします!クーさんが助けた後は攻撃用の聖祈をお願いします!」
「堕ちた妖精には聖なる力が有効という訳ですね!わかりました!」
「しゃあ!行くぜぇ!」
ルークは大剣を背中から抜き出し右斜め下に剣を置いたまま妖精に向かって走り出す。
「『主よ我らに主の祝福を。我らの敵を打ち砕く主の祝福をここに。』」
サリュがルークに対して祝福をかける。
祝福を受けたことによって、ルークの動きは早くなり、ルークの身の丈ほどもある大剣を軽々と振り回せるようになった。
「まずは一発だああああぁぁぁぁあぁぁあぁ!」
地面から3mくらいの高さに居る妖精に向かってルークは助走をつけ飛び寄る。
そのまま構えていた大剣で左切り上げをする。
しかし、妖精の体は大剣が当たった瞬間黒い靄のようなものとなった。
「なんだよそれっ!」
「ルークさんここに出ていた黒い靄の噂の正体はそいつです!」
「俺も今それを実感したよ!」
「サリュさん武器に聖属性を纏わせることはできますか?!」
「一時的な物でも良いなら出来ます!」
「おいクー!そっちはまだか!?」
「こっちはもう大丈夫!案の定ラパンは気絶してるけど目立った傷は無い!」
「ならルークさんとクーさんで隙を作ってサリュさんはそこに大きいのをお願いします!」
信者以外の人の武器に聖属性を纏わせることは出来る。しかし、聖属性は他の属性と比べると特殊な部類なので武器にもある程度の細工は必要になってくる。もし細工がされていないと付与できる時間が短くなっていしまうし切れるたびにその都度付与するのも時間がかかりすぎる。
それに信者はアンデッドなど―――堕ちたもの―――に対してアドバンテージとディスアドバンテージを持つ。
したがって、サリュの危険は大きいがノックの案はそれなりの勝率を含んでいる。
≪クエスト――”今は昔の思い出”――が開始しました。≫《BGM――壊レタ感情――を再生します》
予想以上に草の墓編が長くなってしまい申し訳ございません。
最後のクエスト開始の物はクーたちには聞こえないものとします。
6・07に妖精の髪色と目の色を追記しました。




