(53) 黒騎士誕生②
お待たせしました。
短めです。
この花畑を任されたオーバストアントであるケルケイオスは、実直な性格の持ち主である。
下からの叩き上げでもあるために、部下達からの信頼は厚い。
なのでこうして巣の重要な拠点の一つである、花畑を任されている。
花畑の花から採れる蜜は、高純度の回復効果をもたらす。
なので沢山の魔物がこれを求めて日夜やって来るのである。
部屋の扉がノックされたので、入室を許可すると今まで見たこともない新種の蟻が入って来る。
「ギギ(ほう、その姿が噂の新種か)」
「ギィ(そのようですね)」
副官も同意する。
「ギィ、ギィ(なるほど、部下達からの報告では騎士の様だと言うのは、強ち間違いではないな。ニンゲンどもが着る鎧?と言ったか、アレみたいではないか)」
「ギギ(ええ、ニンゲンは我々と違い、外骨格がありませんからな)」
「ギギギ(さて、呼んだのは他でも無い。君にはこれより我らが女王陛下の元へと向かって貰いたい。女王陛下も大層君のことを気にしておいでだ。何せここ数十年で初めての新種だからね。滅多に無いことなのだよ)」
「ギギ(わかりました。それで部下達の方は?)」
「ギィ(彼らは私が預かろう。君の護衛には私直属の部下を付ける)」
(逃げ出さないかの、監視目的もあるのかな)
「ギギ(了解しました)」
その後諸々の手続きが完了次第、巣に帰還する。
流石はケルケイオス直属の部隊は鍛えられており、帰還途中に出会した魔物は鎧袖一触であった。
派手さは無いが一匹一匹がちゃんと自分の役割を認識しており、まるで機械の様に狂いのない動作で前衛後衛を入れ替わり邪魔な魔物を仕留めていった。
この部隊を見るだけで、ケルケイオスの実直な性格が分かるというものだ。
巣に帰還した後は、上官に暫く進化後の身体に慣れるまでは、訓練迷宮に行くように通達される。
基本的に巣の外に出る事は禁じられた。
暫くは訓練迷宮で身体を鳴らすのと並行して、人型の蟻に女王陛下に会うための最低限の礼儀作法を叩き込まれる日々である。
帰って来てすぐに会う事になると思っていたが、向こうは忙しいのは勿論、やはり最低限のマナーなどは必要とされた結果、巣に帰還してから三ヶ月後に漸く謁見の許可が下りた。
三ヶ月の間に用意していた儀礼服(外骨格により、鎧見たいな見た目なので、実質はマントや多少の装飾を付けただけ)を着て用意する。
アリグルは蟻に生まれてから、初めてこの巣の最深層にあるこの国の頂点が座す場所へとやって来た。
見事な宮殿で、材質は全て何やらわからない謎物質が使用されている。
「綺麗ですね」
思わずそう呟くとここまで案内してくれた兵士が振り返り「そう思うだろう?皆同じ想いを抱くものだ」と答えてくれた。
重厚な扉を潜り抜けて、宮殿内へと足を踏み入れる。
中は更に立派で、様々な物が綺麗に配置されている。
ここまで来ると、殆どの蟻は人型か、または見たこともない種類の蟻達ばかりである。
人型も、アリグルとは少し違い、蟻が無理矢理人型になった様な形状であるのに対して、アリグルは鎧を着ている様に見える。
だが、宮殿の奥へと進むにつれて衛兵の強さも段違いになって行く。暫く迷路のような宮殿を案内蟻の後に続いて行くと、漸く案内蟻が扉の前で立ち止まった。
扉の前に立つのは近衛兵と呼ばれる、この巣の中でもエリート中のエリートである。
いよいよこの中に、この巣の支配者であるエンプレスアーマイゼが待っているのである。




