T3 黒の暴威
T3 黒の暴威
ソルジャーアントの群れから現れたのは、まるで騎士の様な姿形をしたものであった。
例えるなら黒衣の騎士であろうか。
異なる点は腕が4本あり、頭からは触角が生えている点である。
アレはヤバイ!と警鐘が止まらない。
しかも現れたのは一匹だけでは無く、他にも複数現れた。
導師はすぐさま高弟達を呼び集め、将軍の下に行き主要な参謀達と纏めて迷宮の入口まで集団転移した。
いきなりの事に将軍達は面食らうが、導師の只事ではない表情を見て何事か悟る。
地上に戻ってから将軍が導師に話しかける。
「導師。それ程までの相手が?」
「うむ。儂も噂ぐらいでしか聞いた事が無く。実際に目にしたのは先程が初めてじゃ」
「一体何を見たので?」
「多分あれはーーーー」
その後導師達は守備部隊を残して、報告のために帝都に帰還する。
その判断が彼らの命運を分けた。
あの後導師達が帝都に帰還してから僅か数刻程で、エルダー大迷宮から数え切れないほどの魔物が溢れ出してきた。
それらはソルジャーアントなどに追われ、逃げて普段なら出て来る事の無い地上に溢れ出してきたのである。
それは帝国が保持する迷宮の出入口だけでは無く、他に二つある他の大陸も同じ状態であった。
迷宮の前にあった砦は呆気なく陥落し、周辺の町や村も魔物により蹂躙された。
すぐに帝国は軍を編成してこれに当たるが、既に迷宮周辺は魔物で溢れ返っており、なんとかそれ以上の魔物の侵攻を阻止するので精一杯であった。
帝国は巨大であり精強な軍が揃っていたので、その程度の損害で済んだが他の二つの迷宮の出入口にあり国は違う。
迷宮に軍を送り込んだ国は、魔物の大侵攻により一夜と経たずに蹂躙され滅ぼされた。
迷宮に軍を送り込んだ国の周辺国は、どれも滅びた国と大差ない小国であった為に、次々と滅ぼされ被害は拡大して行く一方であった。
もう一つの出入口にある国は、国土の4分の1と全人口の約10分の一を失う大損害を被ったが、迷宮の管理を複数の国と共同で請け負っていた為に、救援軍が間に合いそれ以上の被害は出なかった。
それから多国籍連合軍を組み魔物から領土奪還に動き始めた。
この一連の騒動の原因となったのは、今は滅ぼされた国と帝国が迷宮内に軍を派遣したからだと、帝国を各国は糾弾した。
だが、今は状況が状況だけに抗議文を送るだけに留めて、魔物の駆逐に専念する事となる。
それから一年程で帝国軍は帝国領内から、魔物を駆逐し漸く迷宮の出入口を確保する事に成功した。
それから数ヶ月後に多国籍連合軍も、何とか失地を回復して迷宮の出入口確保した。
最後の一つの方は、漸く周辺国が纏まり動き出した段階である。
帝国はこれで漸くひと段落したと思いきや、今まで服従して居た国々が反旗を翻して各地で内戦状態に突入した。
幸い他の大陸からの干渉は大迷宮から溢れ出した魔物の被害の復興や、まだ争っているいるので無かったが、悠長にはして居られない。
内乱は5年もの間続き帝国は疲弊した。
その間に各大陸は復興に成功し、連合軍を組んだ大陸の各国は大同盟を結び帝国に対抗する。
もう一つの大陸は未だに利権などで足並みが揃わず、徐々に前線が後退し始めている。
■
「ふぅ、漸く帝国もひと段落つきましたね師匠」
「そうじゃのう。あの迷宮での失態から早く6年近く経ったのう」
現在導師は反乱を起こした一領主(元小国の王子)の領都に居た。
漸く全ての反乱を鎮圧して、今は戦後処理もひと段落ついた段階である。
本来ならエルダー大迷宮のあの失態で、地位の剥奪なども考えていたが、導師が考えるよりも事態は深刻で三大陸全てに波及した。
まあ、帝国よりも先に軍を派遣した元凶とも言える国は既に滅びたが、帝国もあのエルダー大迷宮に軍を派遣した事には変わりはない。
その為に処分は有耶無耶になったが、だからと言って呑気に構えている暇はない。
自らの失態を挽回すべくここ6年は精力的に活動した。
普段なら自身の魔法技術の向上や弟子の育成に尽力していたが、今度ばかりは帝国の存亡に関われる問題であると認識した為である。
「さて、これで漸く研究が出来るわ」
「師匠は相変わらずですね」
「そうかの?ここ数年は頑張ったじゃろ?」
「まあ、確かにそうですね。ですが他国との関係は未だ悪いままですからね。ですから救援の部隊が近々発足するそうですよ?原因の一端が帝国にあるわけですからね。細々と物資の支援などは行っていた様ですが、それだけでは他国の心象は良くならないでしょう。それに強力な部隊を送り、帝国は未だに強大である事を列強諸国に喧伝する意味合いもありますからね。多分師匠にも白羽の矢が立つと思いますよ?」
「断れんかのう?」
「無理じゃないですか?」
「そうじゃ!ここ数年は働き詰めだったから体調を崩した事にしよう!儂は暫く療養の為に帝都を離れると伝えよ!ではさらばじゃ!」
「ちょっ!師匠!!それは不味いですって!」
弟子の制止も虚しく、導師は転移魔法で何処かへと逃げて行った。
「はぁ、どうすんだよ本当に………」




