君と僕の夢
拝啓、未来の君と僕はどうなっているのでしょうか?
一番いいのは僕の小説がめちゃくちゃ売れて、君が超人気声優になって、アニメ化された僕の作品の主人公の声を君が吹き込む、そんな未来。
一番なって欲しくないのは、どちらも売れず、夢を捨ててしまうということ。
きっと、ほとんどの人はその道を歩く。そんな厳しい世界。
そんなこと、僕らは百も承知だ。
でも、あの夏お互いに誓った無謀な約束はまだ、僕の中で生き続けていて、大きな僕の心の支えになっている。
きっと、今は遠く離れた場所にいる君も同じだよね?
僕はそう、信じて今日も独り画面へ向かう。
目の前に広がるのは無数の文字の海。その海は、僕を簡単に翻弄して弄ぶ。
そんな海に足を取られながら、溺れそうになりながら、僕は今日も頭の中にある拙い物語を、海の中から拾った文字で必死に紡いでいく。
どうか、君に届け、と。
未来の僕らにとっての希望になれ、と。
僕はそう、必死に足掻いていく。
そうしていつか君と行こう。
一番の未来へ、、、、、、。
拝啓、未来の俺とお前はどんなモノを観てる?
例えば、お前の書いた小説が絵になって動いていて、それを見ながら俺はスタジオでアフレコしてて、ブースの向こう側ではいつもみたいに控えめな笑みを浮かべたお前が遠慮がちに、でも、すごく誇らしげに見学してる。
アフレコが終わると、俺たちはいつもみたいにバカなくだらない会話を交わしながら、街へ繰り出し、夜通し語り合う。
そんな、幸せな、きっと誰もが憧れる夢の世界。
分かってるさ。それが一番難しいってことくらい。
でも、ダメなのか? こんな未来を信じてはいけないなんて、誰が決めた?
周りの奴らはみんな言う。
「甘えた奴らだ」
「所詮、現実を知らない子どもの戯れ言」
「もっと自分たちのこと真剣に考えなよ」
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!!!
そんなこと、俺もお前も全部知ってるんだ。他人に言われなくたって理解してる。
それに、こんなにイライラしてる俺を見て、お前が言うことも分かるんだ。
「バカだなぁ」って。
「そんな奴ら、相手にするのが時間の無駄だよ」って。
「そんな奴ら、今に見返してやろう」
どこから来るのか分からないような、普段は決して見せない自信満々の表情を浮かべて、ぽん、と俺の頭に手を置く。
そして、なだめるようにわしゃわしゃって、髪を撫で回すんだ。
で、俺がやめろよ、って、少し拗ねた顔をすると、少し困ったような笑顔で髪を整える。
そして、二人で笑いあうんだ、なんて。
数ヶ月前まで身近にあった穏やかな光景は。
今ではセピア色に褪せていってしまうような、儚い夢のような、そんな錯覚を覚える。
だからさ、二人の記憶が完全に夢に消える前に、行こうぜ。
最高の未来へ、、、、、、。