魔法-4
着火を覚えてから2週間が経った。
今の僕の最大MPは58になっていた。
着火を練習していくうちに気づいたことがある。
日を重ねるごとに同じ消費MPで調節できる火の大きさ幅が広くなっていたのだ。
今では2倍、1/2倍まではMP1で発動できる。
その仕組みを探るべく、僕は久しぶりに自分のスキル画面を開いた。
慧眼:1.00
火属性魔法
着火:2.18
神祖魔法
物質生成:0.01
残SP:0
案の定増えていた。
なるほど横の数字はそのスキルの熟練度を表しているのだろう。
慧眼は初日から1.00だったから魔法の基本熟練度は1.00なのだろう。
1.00増えるごとに威力が倍になると考えていいのだろうか。
そこら辺はもっと観察が必要だろう。
これからは頻繁に見たほうがいいかも知れない。
そして気になったのは、異彩を放っている神祖魔法というものだ。
名前からして明らかにヤバい。
神で祖だ。
絶対チート魔法だろう。
名前が物質生成──
もしかして、倒れたときにやろうとしていたやつだろうか。
そして熟練度0.01って。
思わず笑えてくる。
きっと消費MPの半端ない魔法なのだろう。
これを誤って発動してしまったせいで魔力が枯渇してしまったのかもしれない。いや、そうに違いない。
魔力欠乏を起こすと大切なHPの最大量が減ってしまう。
しばらくは使ってみるのを避けた方がいいだろう。
どうせだからステータスも確認しておこう。
ハルキ Lv.1 人族 村人
HP:15
MP:58
ATK:1.00
MATK:1.00
SPD:1.00
STR(1) INT(1) DEX(1) AGI(1) MND(1) VIT(1)
残P:0
うん、HPとMP以外は変わっていない。
MATKなど他のものはレベル依存か、INT等のステータス依存のようだ。
しかしレベルはどうやってあげればいいのだろうか。
前世にあったRPGなどでは敵を倒すと経験値がもらえ、経験地を貯めるとレベルが上がっていたが……
そんなことを考えていると、目の前に画面が出てきた。
取得経験値:0(0%)
累計取得経験値:0
なるほど、こんな画面も存在したのか。
まだまだ知らない事が多そうだ。
ステータスについては僕以外には見えていないのだから自力で地道に調べていくしかない。
まずは神祖魔法についておじいちゃんに聞いてみることにした。
ステータスが見えることについては秘密にしているので、何か聞かれたら本に出てきたことにしよう。
僕は早速おじいちゃんの部屋に向かった。
「ねえ、おじいちゃん。神祖魔法ってなに?」
「しんそまほう?はて……しんそまほう、しんそ魔法、、」
祖父は何度か繰り返し呟くと、考え込むような形で黙ってしまった。
そして数分の後、「おおっ!」と大きな声を上げた。
「神祖魔法のことじゃな!確かにそんな字を当てるわい。よくそんな言葉を知っておったのう。さては古い伝承でも読んだな?」
これはオリジンマジックと読むらしい。
古い伝承…今は使える人がいないということなのか?
「うん、そんなところ!それでおじいちゃん。その神祖魔法?っていうのはどんなものなの?」
おじいちゃんはまた数秒黙りこんで、ゆっくりと語り始めた。
「この世界が八つの国に分かれているのは知っておるな?
人族の『ミズガルダ』
エルフ族の『アルフヘイム』
ドワーフ族の『ニダヴェリール』
魔族の『ヘルヘイム』
巨人族の『ヨトゥンヘイム』
炎の民の『ムスペルヘイム』
氷の民の『ニブルヘイム』
神族の『アースガルダ』
しかし、昔は九つの国が存在したのじゃ。
その消えた国というのが、始まりの神の国『世界樹』。
どこにあって、いつなぜ消えたのかは分かっておらん。そもそもそんな国は存在しなかったとも言われておる。
アースガルダの別称だったという説もあったのう。
そして始まりの神はこの世界の創造主と言われておる。始まりの神の分身が我々八種族であるともな。
そんな始まりの神が用いたと言われている魔法の原点にして頂点が『神祖魔法』なのじゃ。
始まりの神は神祖魔法でこの世界を創造したと言われておる。
ただ当然ながらそんなぶっ飛んだ魔法を使える者は今までで一度も、どの国にも現れなかった。
じゃから実際どんな魔法かも分かっとらんし、今では昔の作り話として語り継がれているくらいじゃ。
一説によると生命や大地を創りだしたり、時間を操ったりしたらしいがのう。
どうじゃ、こんなもんで良いかのう?」
おじいちゃんはお茶を喉に通すと、おもむろに立ち上がり本棚へと向かった。
戻ってきたおじいちゃんは一冊の古い本を抱えていた。
「おおかたこの本でも盗み見たのじゃろう。ワシの部屋の本は好きに見てよいぞ。ちと難しい本も多いから読めるかわからんがのう。カッカッ」
そう言うと僕に抱えていた本を渡してくれた。
『Norse Cosmology』
「これは?」
「おお、さっきの伝承じゃよ。読めるか分からんが読んでみると良い。なかなか面白いぞ。カッカッ。あーでもこの部屋の本に書かれている魔法は絶対に試してはいかんぞ?魔力消費の大きい魔法も多数載っておる。じゃからワシがいいと言うまで試してはいかんぞ。そもそも使えるものなどまだ殆ど無いじゃろうが。よいな?」
「分かった!ありがとうおじいちゃん」
僕は本を抱えて自室に戻った。
それから夢中になってその本を読んだ。
大人向けの伝承集だった。
子供向けの本は両親が買ってくれたのを読んだが、概要しか書かれていなかった。
所々分からない言葉もあったが、僕は1日でその本を読み終えた。
とても心躍る本だった。
内容はおじいちゃんの話していたことが主だったが、他の国の詳しい状況なども記してあった。
「いつかこの世界を見て回りたい。出来れば二人を見つけて3人で──」
ステータスを一部変更(11/15)