魔法-3
「よいかハルキ。魔法はとても危険なものじゃ。武器なしで攻撃出来るということは、便利であると同時に様々な危険性があるのじゃ」
そんな言葉でおじいちゃんの魔法講座は開講した。
「まずは、魔法は体を流れるエネルギー、魔力を消費して発動するわけじゃが、これが枯渇すると先のハルキみたいに気を失ってしまう。『魔力欠乏』じゃ。これが魔族との交戦中に起こるとどうなるか、容易に想像がつくじゃろう?だから己の魔力量を感覚的に把握しておかねばならぬのじゃ。ワシの経験からすると、限界まで魔力を消費し続けておれば自然とその最大量は増えていく。じゃが魔力欠乏を起こしてしまうと身体に少なからぬ悪影響を及ぼすであろう。じゃから、ハルキにはまず魔力消費の少ない魔法を教えて己の最大量を知ってもらうことから始めようと思う」
僕は自分のステータスを見る。
MP 30/30 HP 15/15
前までのMPは25でHPは16だったはずだ。
なるほど魔力欠乏を起こしたおかげでMPが5上がり、HPが1下ったのか。
おじいちゃんの言っていた魔力欠乏の悪影響は最大HPの低下らしい。
これはまずいだろう。
僕はもう二度と魔力欠乏は起こさないようにしようと決めた。
そんなことを考えていると、おじいちゃんはいつの間にか右手に火の玉を出していた。
「これは着火。火属性魔法の基礎の基礎じゃ。魔力欠乏を起こしたということはもう魔法制御はできるのじゃろう?そうじゃのう、体中の魔力の5%くらいを右手に集め、右手の上に小さな火を想像してみるのじゃ」
僕は言われたとおりにやってみる。
5%ということは肘あたりから上の分くらいだろうか。
右手が熱くなるのを感じ、それを火に変えるイメージをしてみる。
黄リンで失敗したから今度はライターでも想像してみようか。
指を擦りあわせて、ライターの着火をイメージする。
ボォッ!
「おお、上手いぞハルキ!
まさか一発で成功させようとは、さすがワシの孫じゃ!
しかしもう少し小さくても良いかもな」
この間の失敗が嘘みたいに簡単に火がついた。
それも割と大きめの。
火が付いているのに右手は不思議と熱くない。
左手を恐る恐る近づけてみたが、熱さは全く感じなかった。
「ああ、気づいたか。
魔法とは不思議なものでのう、術者にはその効果は全く通らないのじゃよ。
どれ、この紙でも燃やしてみなさい」
そう言うとA4サイズくらいの雑紙を渡された。
僕は左手で持って右手の火に近づける。
するとすぐに火は燃え移り、紙は見事に燃えてしまった。
引火した火も熱くなかった。
「さぁハルキ、魔力がどのくらい減ったのか分かるか?」
おじいちゃんは僕がステータスが見えることは知らない。
僕はそっとステータスのMPを除いた。
MP 29/30
MPは1、つまり3~4%減っていた。
「んーよくわからないけど5%くらいかなぁ」
「ほう、その通りなら相当魔力制御が上手いのう。
着火は灯し続けても魔力は減るが、消しては着けを繰り返した方が魔力消費が早い。
無理をせず、1割くらい残るまでやってみなさい。
絶対に無理をしてはいかんぞ!」
何度か繰り返し、着火でのMP消費は1であることが分かった。
MP消費に火の大きさは関係ないようだ。
などという事はなく、2倍になるとMPも2倍。1/2倍にするとMPは2倍。
ん!?
さっきのはたまたまきっかりMP1の大きさだったようで、大きくする分には比例、小さくするには反比例するようだった。
あまり大きいとおじいちゃんに怒られそうなので、僕は1/2倍の大きさで続けることにした。
10回目くらいからは、特に魔力量を意識しなくても安定して発動できるようになった。
というより消費MPを意識して発動したほうがずっと簡単だった。
18回着火を発動したところで、残りMPが1になった。
「おじいちゃん、そろそろ限界みたい」
そうおじいちゃんに告げると、とたんに笑顔になって
「よしそうか!18回か!なかなか筋があるぞ!
流石ワシの孫じゃな!カッカッカッ!
今日はもう休むのじゃ。
一晩寝れば魔力も回復するじゃろう。
しばらくはこれを続けるからそのつもりでな」
と上機嫌で言った。
なかなか良い記録だったのだろうか。
僕は自室に戻るとベッドに横になった。
1歳の体力ではなかなか辛い。
MPが減ったせいなのか、それともステータス外の疲れのせいなのか。
僕は晩御飯も食べずに気づけばそのまま爆睡してしまっていた。
その日僕は、自分がRPGの主人公になってモンスターと魔法で戦う夢を見た。