魔法-1
改行工夫してみました。
魔法…常人には不可能なことを実現させる手法。
類義語
魔術、妖術、呪術、魔道。
この世界には魔法が存在した。
ただ、魔法を得意とするのはエルフ族・ダークエルフ族であり、魔法を使える人族はごく稀である。
祖父曰く
『──魔法とは己の体の中のエネルギーをいかにコントロールし、引き起こしたい現象を正確にイメージできるかじゃ。それを出来るのがごく一部の者だけというだけで、特別な才能なんて必要ないんじゃよ。うむ、ハルトにはちと難しすぎたかのう。』
だそうだ。
つまり魔法を使うにはまずは魔力制御の練習からはじめなければならない。
なぜ突然魔法の話になったのか。あんなもの見せられれば誰でも憧れてしまうだろう。
奴の襲来は突然だった。そう、驚くほどに突然だった。
昼下がり、家族で昼食をとっていると1匹の魔族が現れた。
わざわざご丁寧に玄関から。扉を空けて。
凄まじい砂埃と共に禍々しいものが僕の目に飛び込んだ。
瘴気を纏ったオオカミのようななりだった。
「あー扉を壊しおってからに。直すの誰だと思っとるんじゃ全く。」
そう言うと祖父は、皆が驚き固まる中おもむろにそして少し気だるそうに椅子から立ち上がった。
「お父さん、一人じゃ危ないですよ!俺も一緒に戦いますよ」
「ロイ君、今君は剣を持ってないじゃろう。それに、危ないなんて誰に向かって言っておるのじゃ?こんな獣1匹くらいワシで十分じゃわい。」
「そうそう、そのくらいじいさんにやらせておけば良いんですよ。それになにかあったときのために、あなた達はハルトのすぐ側にいてあげたほうがいいんじゃないの?じいさんも魔族はしばらくぶりだしねぇ、孫にいい所でも見せたいのでしょう。ただ家は燃やさないで下さいよ」
「ふん、よう分かっておるではないか。わしももう若造ではない。加減くらいできるわ」
そうして祖父はニタリを笑うと、低い声で唸りながら威嚇しているオオカミに近づいていった。
ゆっくり、はっきりとした足取りで。
「さて、覚悟は良いな。」
パチンッ
『火焔球っ!』
指を鳴らした瞬間、バレーボールくらいの赤橙色の火の玉が手の平に現れ、オオカミめがけて凄いスピードで飛んでいった。
魔族にあたった瞬間、その火の玉は弾け、当たりは黒い煙で覆われた。
黒煙が引くと、魔物は跡形もなく消え去っていた。
その跡には焦げた臭いと小さな宝石の様なものが残るだけだった。
「どうだハルト、じいちゃんすごいじゃろ」
呆気にとられていた僕に、祖父は子供のような笑みで語りかけ、そっと僕の頭の上に手を乗せた。
「魔法ならいつでも教えてやるからな!覚えたくなったらいうと良いぞ。カッカッカッ!」
「はぁ、またすぐ調子に乗って。ハルトちゃんはまだ1歳なんですからねぇ。」
「ふん、魔法に歳など関係無いわい。ハルトもそう思うじゃろ?」
「うん!」
この時の僕は、生まれてから今までで1番子供らしい表情をしていただろう。
このとき僕は初めて『転生も悪くないかも』と思ったのだった。
だがその時、両親が苦い顔をしながら後ろで黙りこんでいたことなど、僕には知る由もなかった。