転生
会話の一切ない説明回です。
「うまれ…よ。げんき…おと…のこだ!」
──どこか遠いところから声がする。知らない声。とても眠い。
結論から言おう。
僕は転生した。
まるでライトノベルの主人公のように。
ありきたりな英雄譚のはじまりのように。
自分が生まれ変わったということにはすぐ気がついた。
なにせ身体が小さく不自由になっていて、僕より若いであろう見知らぬ男女2人が、愛おしそうに僕をずっとみつめていたのだから。
そして少しして、どうやら僕が転生したこの場所は元いたところとは違う世界らしいということも分かった。
そう思った理由は3つ。
まず、文明が元の世界に比べて明らかに未発達なこと。
僕が産まれた家は、生活ぶりを見ても決して貧しいという感じはしないむしろ裕福な部類に入ると思われる家だったのだが、どこを探しても電気がないのだ。電化製品はもちろんのこと、照明も火を使ったランタンのようなものだけだった。
2つ目は身体能力。
女から老人まで異常に身体能力が高いのだ。僕が寝ているベッドを片手で持ち上げたり、外から2階までジャンプで入ってきたりしていた。そして驚くことに魔法も存在した。魔道具を用いたものではなく、魔法は完全に個人の能力であるようだった。
そして決定的だったのは最後、ステータスというものがあったことだ。
レベルや種族、HP、MPなどの基礎身体情報と、STRやINTなどの能力値、スキル、個性という項目が存在した。ステータスはいつも視界にぼんやりと写っていて、意識するとくっきりと見えるようになるらしい。他の人のステータスも確認できた。
この転生、秋人あたりなら喜びそうな話だが、正直僕は嬉しくなかった。
だってそうだろう。
大きな悔いもなく過ごしてきた21年間がリセットされたのだから。
そして得体の知れない世界だ、もしも転生者だとバレたら何をされるか分からない。
ノーマルな21歳が毎日赤ちゃんプレイをするのはとても辛いものだった。
……赤ん坊のアレは興奮しても勃たないということは分かったが。
そんなこんなで周りを観察したり人に教わったりしながらこの世界の知識を学び1年が経った。
僕は1歳になり、立ち歩いたり字を読んだりするくらいは出来るようになっていた。
この世界の言語は、恐らく元の世界には存在しない言語だったが、文法が日本語に類似していたのと、母親がとても教育熱心だったおかげで割と早く習得することができた。手こずったのは文字である。
ここの字は独特で扱えるようになるまでには少し時間がかかった。しかし赤子であるからだろうか、暗記などは苦手だったはずなのに、驚くほど早く覚えることができた。
お陰でもう本を読むこともできる。
さて、ここでわかったことを整理しておこう。
まずはこの世界の背景。
僕が転生したのはミズガルズという人族が暮らす国である。
この世界は八つの国に分かれていて、それぞれ違う種族が暮らしている。
基本的に異なる種族が同じ国に共存、干渉することはないのだが、魔族だけは例外である。
本来ヘルヘイムという国で暮らしている魔族は、人族を主食としており、僕たちを狩るためにここミズガルズに上がってくることがあるというのだ。
次は戦闘能力。
人族は8種族のなかで最弱である。
あの身体能力で最弱とは、他の種族はどれだけ強いのだろうか。
人族は工業に優れており、武具防具の質は全種族一である。
ごく稀に魔法を使える者もいるが、その殆どが大した威力を持たない。
僕の周りでは祖父のみが魔法を使えた。
指から火を出したときはとても驚いた。
最後にステータスについて。
驚くことに僕以外には見えていなかった。
恐らくスキル『慧眼』のおかげであろう。
周りで一番強いのはやはり祖父だった。
レベルは24、個性に火魔法があり、スキルも豊富のようだった。
魔法の素質が遺伝だとしたら、僕にも才能があるのかもしれない。
折角だから使ってみたいものだ。
この1年で分かったことはこのくらいだ。
もう少し調べられそうなものだが、活動できる時間がとても短いのだ。
少しするとすぐに眠気が来る。最近はまだマシになって来たのだが。
これからもっと情報を集めて、ゆくゆくは一緒に落ちた夏実と秋人を探しに行かなければ。
きっと同じように転生しているに違いない。
ハルキ Lv.1 人族 村人
HP:16
MP:25
ATK:1.00
MATK:1.00
SPD:1.00
STR(1) INT(1) DEX(1) AGI(1) MND(1) VIT(1)
スキル
慧眼:1.00
個性
神の加護
ステータスを下に載せてみました。
今後行き詰まったら修正いれるかもしれません。
慧眼Lv.1→1.00に変更(11/13)
ステータスを一部変更(11/15)