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不気味なぬいぐるみ
「あたし、今年の誕生日プレゼントはこれがいいな」
少女は自分の腕の中にすっぽりと収まるサイズのぬいぐるみを抱き締め、呟いた。
彼女の名前は吉田紗理奈。
俗に言う“お嬢様”で、小学4年生の女の子だ。
紗理奈の両親は多忙な人だったが、紗理奈に寂しくないようにと5歳の紗理奈の誕生日にぬいぐるみをプレゼントしたのだ。
それ以来、紗理奈は人形やぬいぐるみが大好きになった。
「本当に、それでいいの?」
紗理奈の母が問う。
それもそのはずだ。
紗理奈の腕の中にいる熊のぬいぐるみは、紗理奈が持っている可愛らしいぬいぐるみとは違って、黒に近い灰色の体をしており、そんなに可愛くもないし、もっと言えば少し不気味だった。
「たまにはこういうのもいいでしょう?
ほら、すごくかわいいじゃない♪」
「…まぁ、紗理奈が気に入ったのならいいわ」
「やったー!ママ、ありがとう♪」
このぬいぐるみが、紗理奈と紗理奈の周りの人間を恐怖のどん底に陥れることなど、この時の紗理奈はまだ知らない。